東京湾アクアラインで時間帯による変動料金制が導入。土休日の混雑する時間帯は料金を高く、空いている夜間は安くするものですが、適用はなぜか上り線だけ。下り線でも渋滞が起こり、首都高湾岸線にも大きな影響を及ぼしています。

土休日の混雑緩和を目的に「ロードプライシング」

 東京湾アクアラインで2023年7月22日(土)から、時間帯により料金を変動させる「ロードプライシング」が始まります。混雑する時間帯を高く、空いている時間帯は逆に安くするなどして混雑を緩和するのが目。同様の施策は2021年の東京オリンピック・パラリンピック期間中に首都高で実施されましたが、NEXCOの高速道路では初めてです。
 
 ただ、ロードプライシングが実施されるのは上り線(木更津→川崎方面)のみ。下り線も激しい渋滞が多方面に影響を及ぼしているのに、なぜでしょうか。


首都高湾岸線西行き、川崎浮島JCT手前。アクアライン下り線からの車列が左車線へ伸びている。この渋滞はロードプライシングでは解消されない見込み(ドラレコ画像)。

 アクアラインのロードプライシングは、ETC車を対象に土休日限定で実施。平日は全日・全時間帯で普通車800円ですが、土休日13〜20時は1200円になります。逆に20〜24時は600円に割引されます。対象は軽自動車等から特大車までの5車種です。

 土休日午後のアクアライン上り線は、千葉から東京・横浜方面へ帰るクルマが集中するため、かねて時差利用が呼びかけられており、千葉側の商業施設で使える時間限定のクーポンを配布するなど、様々な施策がなされてきました。「料金が高くなる時間帯は利用を避けよう」「20時以降に安くなるならそれまで待とう」といった行動変容を促し、混雑緩和に有効な対策となる可能性があります。

「まずは激しい渋滞が発生している上り線からロードプライシングを実施し、その結果を受けて下り線も検討していきます。いきなり上下線で実施するのは影響が大きい」(国土交通省 高速道路課)

 そもそも、ETC普通車で800円というアクアラインの料金も、国と千葉県の補助による割引が適用されており、通常料金ならば普通車で3140円かかります。その割引額の調整で実施するロードプライシングであり、非ETC車は時間帯に関わらず通常料金が徴収されます。

高速バス値上げ?

 このようなロードプライシングは国がかねて構想していました。渋滞状況に応じて、混んでいればそのルートの料金を高くするなどして迂回を促すような取り組みを、もっと機動的に実施したい意向を示しています。その意味でも、今回のアクアラインはひとつの試金石になるでしょう。

 国土交通省高速道路課によると、今回は特に千葉県が実施に積極的なのだそう。「値上げの時間帯もあるので、混んだり混まなかったりでは実施を決めづらい側面がありますが、アクアラインの上り線は、混雑する曜日と時間帯がほぼ固定されているうえ、地元が協力的なのも大きいです」と、実施の背景を明かしました。


土休日の午後に混雑するアクアライン上り線(画像:NEXCO東日本)。

 なお、今回のロードプライシングは前出の通り、軽自動車等から特大車まで5車種が対象です。そこで気になるのは高速バスです。大型車は値上げの時間帯、1320円から1980円になります。

 アクアラインは多数の高速バスが運行されており、房総半島と東京都心などを結ぶメインの移動手段になっています。木更津側のアウトレットモールなども、公共交通利用を促す観点から高速バスを積極的に誘致してきました。ロードプライシングによる値上げは運賃に影響するのでしょうか。

 国土交通省高速道路課はロードプライシングについて「特例なく、全車種ひとしく取り扱います」と話します。一方、アクアラインの高速バスを多数運行する京成バスは、6月22日時点で、値上げ時間帯の運賃転嫁は今のところ考えていない、と回答しました。