土休日に1本のみ! 西武新宿線「快速急行」 特急並みで川越路のライバルに打ち勝つ!?
西武新宿線には、土休日に下り1本のみというレア列車「快速急行」が存在します。西武新宿〜本川越間を50分で結ぶ便利な列車ですが、どのような利用をされているのでしょうか。乗車して確かめました。
入線から出発までは3分!
東京都心と「小江戸」とも呼ばれる観光地・川越を結ぶ鉄道は複数あります。ひとつは、池袋駅発着もしくは東京メトロ有楽町線・副都心線と直通する東武東上線。もうひとつは、渋谷、新宿、池袋を通るJR埼京線。そして3つ目が、今回紹介する西武新宿駅発の西武新宿線です。
東武東上線の池袋〜川越市間が31.4km(川越特急で最速28分)、副都心線直通の最速列車「Fライナー」が経由する新宿三丁目〜川越市間が35.7km(最速40分)、JR埼京線の新宿〜川越間が45km(通勤快速で51分)に対し、西武新宿線の西武新宿〜本川越間は47.5kmと大回りします。そのため急行で1時間1分、有料特急「小江戸」でも、同区間で最速45分と、所要時間では苦戦しています。
土休日に1本のみ設定のある、西武新宿線の快速急行。乗車日は6000系電車が充当していた(2023年5月、安藤昌季撮影)。
さて、西武新宿線には土休日に1日1本下りのみ、料金不要の「快速急行」が設定されています。急行より11分も速い50分で、西武新宿〜本川越間を結ぶ便利な列車ですが、強敵揃いのライバル相手に、どのくらい健闘しているのでしょうか。超レア種別ともいえる快速急行に乗車してみました。
始発となる西武新宿駅は、他線の新宿駅から数百メートル離れた立地で、徒歩で乗り換えられはしますが、都営地下鉄大江戸線の新宿西口駅からのほうが近いです。始発駅らしく、2面3線のホームにはひっきりなしに列車が入ってきます。本川越行きの快速急行は午前9時ちょうど発ですが、入線は8時57分ごろでした。
車両は1992(平成4)年に東京メトロ有楽町線直通用として登場した6000系電車でした。新宿線所属の6000系は25編成中4編成しかなく(2023年5月現在)、“レア車両”といえなくもありません。加えて種別もレアなだけに、先頭車両では鉄道ファンと思しき人が運転席の後ろを陣取っていました。私もその後ろから、各ホームでの乗降具合を観察します。ちなみに1週間前に筆者(安藤昌季:乗りものライター)が同列車を眺めていたところ、充当車両は「スマイルトレイン」こと30000系電車でした。
14駅をすっ飛ばす
西武新宿駅出発時、車内はガラガラで、全体で50〜60人ほどしか乗っていないようでした。列車はJR線と並行して高田馬場駅に向かいます。ここは「私鉄は山手線内に乗り入れさせない」という国の方針に対して特例で認められた区間であり、JRの車両とすれ違う風景は見ごたえがあります。
途中、14駅を通過する区間も(2023年5月、安藤昌季撮影)。
9時3分到着の高田馬場駅では、300人ほどが乗り込んだでしょうか。ロングシートが6割ほど埋まる混み具合です。インターネット検索によると、同駅から川越まではほかの交通機関よりもおおむね速くかつ安価に行けるようなので、これは納得の乗車率です。車内放送では快速急行としての停車駅案内は行われますが、多数走っている急行と停車駅が異なることへの注意喚起は、特に行われないようです。
快速急行は田無駅(東京都西東京市)まで14駅連続で通過します。遠回りなだけにかなりの快速を見せるのかと思いきや、40〜70km/h程度での走行です。鷺ノ宮駅(同・中野区)で先行する普通列車を追い抜いてから速度は上がりますが、それでも80km/h程度でした。
ただし線形がよくなる上石神井駅(同・練馬区)付近から速度を上げ、路線の最高速度である105km/hに達しました。こうなると“快速急行”を実感します。
9時18分、田無駅到着。10人ほどが乗車し、70人ほどが下車しました。ちなみに急行だと途中、鷺ノ宮駅、上石神井駅に停車し、所要時間は6分長い24分です。
9時26分、東村山駅(東京都東村山市)到着。急行ならば途中 花小金井、小平、久米川に停車する区間です。同駅では30人ほどが乗車し、同数ほど下車していきました。
次の停車駅はお隣の所沢です。時刻は9時30分。特急「小江戸9号」が同区間を30分で走りますので、快速急行は特急並みの速度で走っているといえるでしょう。
線形良くなり再び最高速度
所沢駅では確認できただけで100人は乗車し、30人ほどが下車しました。高田馬場駅を出たときよりも乗車率が高くなっているのは興味深いです。とはいえ所沢〜本川越間は特急で15分、快速急行でも急行でも20分なので、快速急行だからではなく、来た電車に乗ったということなのでしょう。
列車は出発すると、最後の通過駅である航空公園を80〜90km/hで通過。9時34分、新所沢駅(埼玉県所沢市)に到着します。
西武6000系はロングシート(2023年5月、安藤昌季撮影)。
ここからは各駅停車になります。新所沢駅では40人ほどが下車していきましたが、座席はほぼ埋まったまま。次の入曽駅(埼玉県狭山市)までは駅間距離が3.9kmと長く線形も良いため、実質各停になったとはいえ最高速度は105km/hに達しました。
実際、所沢〜本川越間18.6kmを20分で走るということは、表定速度にすると55.8km/h。連続通過していた高田馬場〜田無間が15.6kmで15分なので、表定速度62.4km/hとそれほど変わりません。かなりの“快足ぶり”を実感します。
9時37分着の入曽駅では、それほど人の入れ替わりはありませんでしたが、9時41分着の狭山市駅(埼玉県狭山市)では10人ほどが下車しました。特急停車駅ですが、思ったほどの人数ではありませんでした。急ぐ人は特急を使うのでしょうか。終点手前にして立ち客が出始めます。
9時43分着の新狭山駅(同)では10人ほど乗車し、ほぼ同数が下車したので、乗車率には変化なさそうです。9時46分着の南大塚駅(同・川越市)でも入れ替わりは少なく、立ち客を出したまま終点へ向かいます。
9時50分、本川越駅に到着しました。列車からは300人以上が下車したように見えましたが、通しの乗客はそこまで多くない印象でした。
快速急行で全線を乗り通した所感としては、新宿線にはデュアルシートの40000系電車が配属されているのですから、ライバルである東武東上線の「川越特急」のように、料金不要ながらクロスシート車の限定運用として本数も増やせば、長距離客には便利で通し利用が増えるのでは、というものでした。
ちなみに、蔵造りの町並みなどに最も近いのは、ここ西武鉄道の本川越駅です。
※一部修正しました(6月10日16時10分)。