船体は真っ二つ… アメリカ軍駆逐艦みつかる 特攻専用機「桜花」が撃沈 時は沖縄戦
「桜花」が撃沈した唯一の艦艇です。
桜花は「人間爆弾」とも
1944年8月1日、ボストン海軍工廠沖を航行するアメリカ軍駆逐艦「マナート・L・エベール」(画像:アメリカ海軍歴史遺産司令部)。
アメリカ海軍歴史遺産司令部の水中考古学部門は2023年5月末、沖縄本島北方沖の水深1300mにて、アメリカ軍駆逐艦「マナート・L・エベール」を発見したと発表しました。「マナート・L・エベール」は太平洋戦争末期の1945(昭和20)年4月12日、旧日本海軍の特攻専用機「桜花」の突入によって撃沈された唯一の艦艇です。沖縄戦の最中でした。
当時、海上における日本側の攻撃は、戦闘機などに爆弾を搭載し、機体もろとも体当たりする「特攻」が主流となっていました。そのような中、旧海軍は特攻専用機を開発。「桜花」と名付けられたそれは、航空母艦を撃沈できる仕様として1トンの徹甲爆弾を搭載し、乗員が火薬ロケットを点火して推進、800km/hを超える速度で滑空するというものでした。
ただし「桜花」は自ら離陸はできず、母機に運搬のうえ射出してもらう必要がありました。母機となったのは旧海軍の双発機である一式陸上攻撃機。しかし時は戦争末期、制空権を喪失していた日本側が敵艦に接近するのは至難の業でした。事実、「桜花」を搭載し重量が増した母機は鈍足となり、「桜花」を射出する前にほとんどが撃墜されたとされています。
「マナート・L・エベール」は「桜花」の攻撃を受ける直前、零式艦上戦闘機(ゼロ戦)による特攻を受けていました。ゼロ戦は命中し、機関を損傷した「マナート・L・エベール」は航行不能に陥っていました。そこへ「桜花」を搭載した一式陸上攻撃機が防空網を突破して接近。射出された「桜花」が超高速で「マナート・L・エベール」の喫水線に突入したのです。衝撃と爆発により、船尾は一瞬で吹き飛んだといいます。
海底で発見された船体は、その中央が2つに折れていたことなどから「マナート・L・エベール」と断定。アメリカ海軍歴史遺産司令部のサミュエル・コックスディレクターは、「ここは祖国を守ろうと、84人の海軍兵士が壮絶な最期を迎えた場所です。発見してくれたチームに深く感謝します。発見により、遺族は区切りを付けられると思うし、また我々には兵士らを思い出し、称える機会を与えてくれました」とコメントしています。