2023年5月28日、インドのレスリング選手であるビネシュ・フォガト氏ら数人が未成年を含む少なくとも7人の女子レスリング選手へのセクハラ疑惑に抗議し、警察に拘束されました。SNSでは連行されるフォガト氏らが笑顔で映っている写真が拡散されていますが、これは笑顔に加工したフェイク画像であることを、複数のメディアが指摘しています。

Wrestlers detained in Delhi: AI image of 'smiling' Vinesh & Sangeeta Phogat viral - Alt News

https://www.altnews.in/wrestlers-detained-in-delhi-ai-image-of-smiling-vinesh-sangeeta-phogat-viral/

Fact-Check | This Photo of Wrestlers Vinesh and Sangeeta Phogat Smiling During Detention Is Fake

https://www.thequint.com/news/webqoof/vinesh-phogat-sakshi-phogat-smiling-wrestlers-protest-fact-check#read-more

インドの英字日刊紙のHindustan Timesは28日、「女子レスリング選手のビネシュ・フォガト氏やサクシ・マリク氏、男子レスリング選手のバジュラン・プニア氏などインドのトップレスラー数人が、同日に落成式が行われていたインドの新国会議事堂に向かうデモ行進の途中で拘束された」と報じました。

伝えられるところによると、レスリング選手らはインド・レスリング連盟(WFI)会長で与党議員でもあるブリジ・ブシャン・シャラン・シン氏やコーチらによる女子レスリング選手へのセクシュアルハラスメントに抗議していたとのこと。



その後、SNS上には警察のバスで連行されるレスリング選手の様子を収めた写真がアップロードされました。ビネシュ・フォガト氏(左下)による自撮りと思われる写真には、同氏の姉妹で同じくレスリング選手のサンギータ・フォガト氏(右)を含む数人のレスリング選手が笑顔で写っています。



この写真は、複数のジャーナリストや著名人によって拡散されました。例えば、インド人民党の西ベンガル州書記長であるアミタヴ・チャクラヴォルティ氏は「ドラマは終わりました。さあ、みんな笑顔で帰りましょう。彼らは今日の落成式を台無しにするために写真を撮りに来ただけです」とのコメントを付けて写真を投稿しています。



しかし、この笑顔の写真は加工されたものであることが、後に判明しました。オリジナルである未加工の写真が以下。笑顔の写真が出回る数時間前にジャーナリストのマンディープ・プニア氏が投稿した写真には、笑顔ではないフォガト氏らが収められています。



また、レスリング選手のバジュラン・プニア氏も、Twitterで笑顔の写真が偽物であると訴えています。



ファクトチェックサイト・Alt Newsは、問題の写真に映っているビネシュ・フォガト氏やサンギータ・フォガト氏の笑顔にはえくぼがある一方で、別の写真に写っている両氏の笑顔にはえくぼがないことを指摘しました。





笑顔の写真は、加工アプリを用いて作られたものだと考えられています。TwitterユーザーのUzair Rizvi氏が実際に加工アプリのFaceAppを使ってみたところ、問題の写真とほぼ同じ笑顔が合成されました。



また、Twitter上では笑顔のビネシュ・フォガト氏が手を振っている映像もありますが、これは同氏が「新しいインドにおめでとう!」と皮肉を言っているシーンだとのこと。この映像は本物ですが、文脈を無視して印象操作に利用されていると、Alt Newsは述べています。



この一件を扱ったソーシャルニュースサイト・Hacker Newsのスレッドには、「本当にすさまじいディストピアが到来しました。以前にも写真の加工はできたでしょうし、実際にソ連は大量の写真編集をしていました。しかし、今回の加工はとても簡単だったに違いありません」といったコメントや、「これは、私たちの多くがAIの本当の脅威であると考えているものです」とのコメントなどが投稿されていました。