「本格的な規制があればOpenAIはEUを離脱する」とサム・アルトマンCEOが発言
by La Moncloa - Gobierno de España
OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏が、欧州連合が準備している新しいAI法の規定をOpenAIが技術的に順守できない場合、EUでのサービス運用を停止する可能性があると述べました。
OpenAI Could Quit Europe Over New AI Rules, CEO Altman Warns | Time
Sam Altman Says OpenAI Will Leave the EU if There's Any Real AI Regulation
https://gizmodo.com/sam-altman-openai-gpt-chatbot-chatgpt-gpt4-1850471865
2023年5月23日より、アルトマン氏はトロントやリオ、リスボン、ワルシャワ、パリ、ロンドンなど各国で開催されるOpenAIワールドツアーへ出席しており、講演を行ったり、フランスのエマニュエル・マクロン大統領など各国の政府高官と会談したりと多忙な日々を過ごしています。
この一環として、アルトマン氏はユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで開催されたパネルディスカッションに登壇。ディスカッションの中でアルトマン氏は、EUが制定を進めているAI法について規制当局の担当者と話し合ったことを明らかにし、現行の法案について「多くの批判がある」との見方を示しました。
法案の特に懐疑的な部分として、法案に含まれている「高リスク」のシステムの定義が問題だとアルトマン氏は指摘。現行の文言では、OpenAIのChatGPTやGPT-4のような大規模なAIモデルが「高リスク」に指定されており、こうしたモデルを管理する企業に追加の安全要件への準拠が強いられる可能性があるそうです。
こうした法案について、アルトマン氏は「これらの要件を解決できるか、できないかのどちらかです。対応できる場合は対応し、対応できない場合は運用を停止します。努力はしますが、可能なことには技術的な限界があります」と主張。規制をできる限り順守したいという姿勢を見せつつ、要件次第ではEUでのサービス停止を余儀なくされるとの見解を示しています。
アルトマン氏はどちらかというと法によるAIの規制に賛成する立場を取っており、アメリカで開かれた公聴会においては「利点を伸ばす一方で、AIの害を最小限に抑えるための政府による規制介入が重要になる」との考えを表明しています。しかし、個人情報管理等の規制がアメリカ以上に厳しいEUで、OpenAIの技術では対応できない規制が敷かれた場合、もはや提供をやめるほかなくなってしまうと訴えたわけです。
こうしたAIへの規制について、アルトマン氏は「公共の利益を反映した多様な視点によって形成されるべき」との考えを主張。具体的な策として、AIが従うべきルールについての疑問に答えることができる「民主的プロセス」を確立するための実験を行うチームを募集し、10万ドル(約1400万円)の助成金を10チームに授与するというプログラムをOpenAIを通じて立ち上げています。
Democratic Inputs to AI
https://openai.com/blog/democratic-inputs-to-ai
「民主的プロセス」について、OpenAIは「代表的な人々が意見を交換し、熟慮に基づく議論を行い、透明性のある意思決定を経て最終的な結果を打ち出すプロセス」と説明しています。OpenAIは、こうしたプロセスの概念実証を開発するチームを世界中から募集しています。
アルトマン氏は、EUの法案について「本質的な欠陥はないものの、微妙なディテールが重要になります」と指摘。同時にアルトマン氏は「ユーザーの技術へのアクセスを制限するような規制は望んでいません」と述べ、中小企業やオープンソースAI運動に害を及ぼすようなことはしたくないとの考えを明らかにしました。