世界には、役目を終えた「飛行機の墓場」とされる空港がいくつか存在。この一つとして話題になる「ビクタービル空港」に行ったところ、違う側面も見ることができました。

近隣に墓場で有名なモハーベ空港が

 世界には、航空会社での役目を終えた旅客機が敷地内に数百機安置されている空港が存在します。「飛行機の墓場」として知られるこれらの空港の一つとして、近年航空ファンのあいだで話題になるのが、通称「ビクタービル空港」です。JAL(日本航空)ら協力のもと、その現地に行くことができました。


ビクタービル空港(2023年5月、乗りものニュース編集部撮影)。

 ビクタービル空港はアメリカ・カリフォルニア州の砂漠地帯に位置します。近辺にはこちらも「飛行機の墓場」として広く知られているモハーベ空港があり、この近辺は世界でも屈指の規模をもつ旅客機の安置場所と言えるかもしれません。

 当初この空港はアメリカ空軍の基地として作られましたが、その後、政府主導で貿易空港へと変貌。ビクタービル空港は地名にちなんだ愛称で、正式名称は「南カリフォルニア物流空港」とされています。

 そのため、その名のとおり、ひとつの経済拠点としての顔ももっています。

墓場だけじゃないビクタービル空港の内部

 そのひとつが、「MRO」と呼ばれる、航空会社を問わない航空機整備事業の拠点としての顔です。たとえばComAv社などはここに拠点を構え、中古機の解体のほかにも、航空機整備の場としてビクタービル空港を使用しています。

 JALの担当者によると、この空港は完全に今後どこへも飛ばない飛行機だけを扱うだけではなく、飛行機を”回復”させて次の活躍の場へ送り出す――この役割を担っているのも特徴だそう。つまり、俗にいう「飛行機の墓場」とは正反対の側面も持ち合わせているということもできるでしょう。


ビクタービル空港(2023年5月、乗りものニュース編集部撮影)。

 そんなビクタービル空港は経済活動に特化しているだけあって、定期旅客便の乗り入れもなく、したがって一般的な空港のようなターミナルビルなどはありません。周囲は商店もない砂漠地帯に、いきなり空港を活用する企業のビルや倉庫が立ち並んでいるようなイメージです。

 なお、今回のビクタービル空港の内覧は、国内航空会社として初となる「退役機の売却にともなう回送便(フェリー便)に乗客を乗せ、日本を離れる」というチャーター(貸切便)企画で実現しました。チャーター便ではフライト終盤、ビクタービル空港上で低空飛行(ローパス)するなどの革新的な取り組みを実施。このフライトを担当したJALのボーイング777-200ER初号機「JA701J」は、チャーター企画を経て、ビクタービル空港に現地時間5月18日に到着。ここでJAL機としての役割を終え、眠りについています。