閉経前の前後5年間あるとされている「更年期」。女性特有の悩みについて、心と体をどう備えたらいいか、産婦人科医・高尾美穂先生に教えてもらいました。48歳で今まさに更年期である北陽・虻川美穂子さんと共に、対処法を学びましょう。

変わっていく女性の体のこと教えてください!

更年期に向けて、心と体をどう備えればいいのか。高尾先生にお話を伺いました。

●「更年期」は閉経前後10年のこと

虻川:月経にまつわる悩みをもった女性は多いと思いますが、48歳の私にとって身近なのが「更年期」。どう備えればいいのか不安です。

高尾:更年期というのは閉経の前後5年間、合わせて10年間の期間のこと。症状の有無にかかわらず、みんなが迎えるものなんです。

虻川:私は48歳だから…。今がまさに更年期なんですね! 確かに月経も不定期になってきたし、体も疲れやすくなってきました。

高尾:約6割の人は、その10年の間に「ホットフラッシュ」と呼ばれる発汗やほてり、不眠、イライラといった不調に悩まされるんですね。とくに症状が強く現れるのが、閉経の前2年と後ろ1年。

虻川:なぜその時期なんですか?

高尾:これは、卵巣から分泌される「エストロゲン」という女性ホルモンが乱高下するせい。このエストロゲンには妊娠に備えて体を変化させるほか、コラーゲンの産生を促して肌や血管の弾力性を保ったり、精神状態を安定させたり…と多くの役割があります。そのため、エストロゲンが減少することで、動脈硬化や骨折のリスクも高まるんです。

虻川:そんな大事なホルモンが、40代以降は減るんですね。

高尾:そうなんです。ただし、一直線に下がるのではなく、アップダウンを繰り返しながら減っていくんですね。私たち女性の体は、この“ゆらぎ”に弱いんです。生理前や産後の不調も、ホルモンの量の変化が原因です。

●PMSや産後が不調だった人は早めに対策を

虻川:私は40歳で子どもを産んだのですが、産後にものすごくメンタルが落ち込んで…。それまではなにごとも気合と根性でなんとかなる! と思ってやってきたけど、それが通じなくて。またあの状態になると思うと怖いです。

高尾:産後は女性ホルモンの分泌 がストップするうえ、睡眠不足も重なって不調になる人は多いですよね。虻川さんのように、産後や生理前が不調だった人は、更年期もそうなるだろうと予測して、対策をとっておくことが大切です。

虻川:具体的にはなにをすれば?

高尾:シンプルな考え方ですが、エストロゲンがたりなくなったなら、たせばいい。治療法としては、ホルモン補充療法といって、飲み薬や肌にはるパッチなどで減少したエストロゲンを補う方法があります。ほか、大豆製品に含まれる「大豆イソフラボン」をとることで、更年期の症状が軽くなることが証明されています。

虻川:豆腐や納豆をたくさん食べればいいんでしょうか。

高尾:でもね、これらを食べたとしても、大豆の恩恵を受けられる人と受けられない人がいるんです。

虻川:そんな!!

高尾:大豆イソフラボンは、腸内細菌によってエストロゲンに似た働きをする「エクオール」という成分になります。ただ、日本人女性の2人に1人はその腸内細菌をもっておらず、自力でエクオールをつくれないんですね。そういう人はエクオールを含有したサプリメントを取るのも手です。

虻川:対処法があると知って、少し安心できました。

高尾:大事なのは、不調を放置しないこと。今は昔より選択肢が増えて、主体的にケアできる時代です。更年期を恐れすぎず、できることを前向きに試してくださいね。