「無気力症候群」の原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?医師が監修!

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希望の大学に合格できたが勉強に力が入らない、やる気が出ないといったいわゆる「五月病」です。

仕事に打ち込んできたが、思うようにいかずやる気が出ず、無気力な状態です。

誰にでもよくあることですが、それが長い間続いているなら無気力症候群の可能性があります。

放っておくと良くならないどころか、うつ病に発展する危険性をはらんでいます。

無気力症候群の原因

無気力症候群とはどんな病気ですか。

無気力症候群とは、その人の一番の本業に対してだけ無気力になっている状態を指します。社会人であれば仕事が、学生であれば勉強が、専業主婦であれば家事が、という具合にその人にとっての本業にやる気が出ない状態のことを指します。
一方、趣味や遊び、社会活動、学生であればアルバイトなど本業以外のことはこれまでどおり積極的に活動するのが特徴です。うつ病と違いすべてのことに無気力になるわけではありません。無気力症候群はアパシーシンドロームともいわれます。
すべてのことに無気力になるわけではないので、無気力症候群であることに本人が気づかないことが多いのです。そのまま放置しておくと無気力症候群からうつ病になってしまうこともあります。

無気力症候群の原因を教えてください。

人生における大きな目標を達成したとき無気力症候群になりやすいといわれています。
例えば、一生懸命勉強して希望の大学に入れた・就活に全力を注いで第一志望の会社に入社できた・懸命に子育てをして子供たちが自立したなどの場合です。目標を達成して新たな目標を見いだせないとき無気力症候群になる傾向があるようです。
また親の期待に応えようといい大学に入ったり、世間体がいいのでいい会社に入ったなど、自分の希望よりも周りのことを気にして目標を立てたケースもあります。このような場合、次に何をしていいかわからなくなり無気力症候群になるケースが多いようです。

うつ病との違いはなんですか。

無気力症候群の無気力は勉強や仕事など本業に関することだけです。無気力の範囲が限定されています。それに対してうつ病の無気力は生活全般に対する無気力です。「自分はダメな人間だ」という自責の念も伴います。
無気力症候群の症状は本業に関する無気力だけで、その他の症状は現れません。うつ病の無気力は、無気力だけでなく不眠・頭痛といった体の症状、不安・抑圧感などの精神症状を伴います。無気力はうつ病の症状の一つにすぎません。
無気力症候群の場合、趣味などで気晴らしができるので辛さを感じることが少なく、自分が病んでいることの自覚がありません。うつ病は病んでいることの辛さが大変大きく、自殺に至る最悪のケースもあります。うつ病の人は病気の辛さを和らげようと通院や入院して治療を求めます。
無気力症候群の人は無気力以外の症状がなく辛さも少ないし、趣味で気晴らしもできているので、自分から治療を受けようという人は少ないのです。

どんな人がなりやすいですか。

次のような人が無気力症候群になりやすいといわれています。

真面目な人

真面目な人ほど周りの期待に応えようと頑張りすぎる傾向があります。目標を達成したときも、出来なかった時も、自分で新たな目標を決めることができなくなり無気力症候群になりやすいといえます。

一生懸命な人

一生懸命な人ほど頑張りすぎて、目標を達成したときエネルギーが切れて無気力になる傾向があるようです。

完璧主義の人

ものごとが100%うまくいくまで膨大なエネルギーを使います。こんな人もエネルギー切れで無気力症候群になる可能性が大きいでしょう。

勝ち負けにこだわる人

勝っているときはいいのですが、負けた時それを受け入れることができず気力を失ってしまいます。

白か黒かはっきりしないと気が済まない人

こんな人もどっちかはっきりしないとき大きなストレスをため込むことになり、ストレスに耐えきれず無気力になることがあります。

自分一人で物事を決められない人

親の言われるままに勉強をしてきた人は、社会人なっても自立できないことの挫折感から無気力状態に陥ってしまいます。

無気力症候群の治し方

無気力症候群はどのような治療を行いますか?

無気力症候群に有効な薬はありません。無気力症候群は大きな目標を失ったときにかかりやすい症状です。新しい環境で新たな目標を見つけることができれば、その目標にむかって頑張って進んでいくことができます。再び目標が定まれば無気力症候群が解消される場合が少なくありません。
新たな目標を立てるには精神療法が大変有効です。精神科・神経科・心療内科の専門医に相談してください。こうすれば治るという方法はありませんが、治らないものではありません。あきらめず治療を続けて下さい。
無気力症候群の人は生活習慣が乱れていることが多いようです。睡眠の質が下がり、栄養補給も充分でないので、疲れが取れず無気力な状態になりやすくなります。次のことに注意して生活のリズムを取り戻しましょう。

決まった時間に起きて日光を浴びる

三食規則正しく食事をとる

暴飲暴食をしない

早めに寝て睡眠をしっかりとる

当たり前のことですが毎日続けることで疲れも取れていき無気力の症状が緩和されていくことでしょう。

心の治療も必要でしょうか。

専門家による精神療法と並行して自分でできる心のケアが無気力症候群には有効です。

心の余裕を持つよう心掛ける

相談できる友人・同僚を持つ

完全に仕事や勉強のことを忘れられる時間を持つ

リラックスする時間を作る

心が静まれば無気力症候群の症状もやわらぐことでしょう。

薬は効かないって本当ですか。

無気力症候群にはこれといった特効薬はありません。精神療法生活習慣の改善で治療していきます。あまりに無気力がひどい場合には、意欲を出すタイプの抗うつ剤が投与されることはあります。
しかし充分は効果が得られることは少ないようです。そればかりか薬の副作用で無気力が悪化する可能性もあることも考えなくてはなりません。無気力症候群は基本的に薬を使わずに治していくものなのです。

無気力症候群の予防方法

無気力症候群は予防できるのでしょうか。

「どんな人がなりやすいですか。」の項で述べた次のようなタイプに当てはまる人がいるなら。その逆のことをするよう心がけましょう。

真面目な人

勉強や仕事の中に少しユーモアを取り入れるといいかもしれません。

一生懸命な人

時には肩の力を抜いて休むようにしましょう。時には人に助けてもらうことも必要でしょう。

完璧主義の人

失敗を気にしすぎないように、できていることに注目しましょう。

勝ち負けにこだわる人

常に勝ち続けることはできません、時には負けを受け入れる余裕を持ちましょう。

白か黒かはっきりしないと気が済まない人

几帳面すぎるのは禁物です、許容度を持ってものごとを受け入れましょう。

自分一人で物事を決められない人

周囲の期待に応えるより自分のやりたいことを考えるようにしましょう。

もちろん真面目さ、完璧主義といった性格はそう簡単に変えられるものではありません。しかし日頃から少しずつ意識を変えていくことで症状の改善が期待できるでしょう。

休日だけ発症することもあるのですか。

平日は問題なく仕事や勉強を頑張れているのに、休みの日になると無気力になるという人も増えているといわれています。休日無気力症候群という言葉もあります。原因として次のことが考えられるでしょう。

仕事や勉強の疲れが取れていない。

仕事や勉強に精神的に依存している。

生活習慣が乱れていて、栄養や睡眠が十分に取れていない

平日もしっかり心身を休めてください。仕事から離れられる趣味や友人を持つのもいいでしょう。そして規則正しい生活習慣を心がけ毎日を過ごしてください。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

無気力症候群は、特定のことだけが無気力になるだけなので、自覚を持ちにくい症状です。趣味や遊びを楽しめているので深刻な気持ちになることはありません。
しかし辛さを感じないといっても、無気力症候群のなかにはうつ病などの精神疾患になる危険性が含まれています。無気力な状態が続いているようであれば、医療機関に相談されることをお勧めします。

編集部まとめ


無気力症候群はうつ病に比べて辛さが少ないのですが、長い間放置しておくとうつ病などの精神疾患に発展していきます。

早く気づき、早く対策を始めることが重要です。

やる気が出ない、無気力になってしまっているなどと思ったら、周りの人に相談したり医療機関を受診して早めの対策を講じましょう。

参考文献

無気力症候群(e-ヘルスネット)

休養・こころの健康(厚生労働省)