Ado

20歳の歌い手Adoが2月20日、新曲「アタシは問題作」を配信リリース。 昨年10月に配信した「行方知らず」以来、4カ月ぶりの新曲リリースだ。 今作はボカロPのピノキオピーが詞曲・編曲を担当。昨年5月に行ったTwitter企画「Adoに歌ってほしい曲」のボカロ曲として、1万件を超える応募から選ばれたピノキオピー「神っぽいな」の歌ってみたをYouTubeに投稿し、いま現在は2000万再生を超える反響を生んだ強力タッグ。 同曲のジャケットのイラストは「えいりな刃物」が担当。新曲リリースに伴い、合同取材は開催され、集まった多くの媒体からの質問に回答。新曲「アタシは問題作」についてや、ライブで大事にしていること、いま一番欲しいもの、新たに始めたいことなど、話を聞いた。

私の本音みたいなものを歌えた

――2022年を振り返るとどんな1年でしたか。本当に毎年毎年、濃密な一年を更新しているなと実感しています。2022年は自分の人生に とっても一番すごかった年になったと感じていて、歌い手としてアルバムをずっと出したかった思いがあったうえに、こうやってたくさんの方に聴いていただけこと 、色んな思いがたくさん集まってすごく嬉しかったです。映画『ONE PIECE FILM RED』で、ウタの歌唱パートを担当させていただいたことは、また人生が変わるきっかけのひとつにもなったのかなと思います。新時代の歌姫・ウタの歌をすごくたくさんの人が愛してくださったので、心から嬉しかったです。

――昨年のライブはいかがでした?

4月に初めてのワンマンライブ<喜劇>、8月に私の夢だったさいたまスーパーアリーナで2ndライブ「カムパネルラ」、12月に全国ライブツアー【蜃気楼】がスタートして、ライブの1年でもあったのかなと思います。どのライブも公演前は不安な思いがたくさんありましたが、ファンの方が足を運んでくださったおかげで、「ライブって楽しいな」と思わせてくれたので、もっとライブをやって行きたいと思いました。

――新曲「アタシは問題作」がリリースされます。どんな楽曲になりましたか。

楽曲はピノキオピーさんに書き下ろしていただきました。私はボカロを追いかけていた中のお一人だったので、いまこうしてピノキオピーさんに曲を書き下ろしていただけたことが心から嬉しいです。小学生の頃の自分に伝えてあげたいくらい、光栄に思います。

――初めて聴いたときの印象は?

初めて聴いたとき、ピノキオピーさんはやっぱり天才だな!

と思いました。私から「こういう曲にしてください」といったリクエストは一切していないのですが、伝えずともAdoをわかってくださっていて、すごいなと感激しました。

――歌に込めた想いは?

「アタシは問題作」は、けっこう皮肉的な楽曲だと思っています。Adoのイメージは「うっせぇわ」のイメージがまだまだ根強いと思います。ファンの皆さんは「こういうところもあるよ」と仰ってくださると思いますが、多くのイメージは「うっせぇわ」からのものがあると思っています。そのイメージと実際の私のイメージは真逆と言いますか、「全然そんなことはないのにな…」と思うのですが、ピノキオピーさんは私が思っていること全てを書いてくださっています。一人歩きしてしまった印象に「そんなことないんだけど…」とつぶやいている自分、私の本音みたいなものを込められたのかなと思っています。

――「アタシは問題作」MVはどんな感じに仕上がっていますか。

MVはジャケットも担当してくださった「えいりな刃物」さんにお願いしました。えいりな刃物さんの作品は1ファンとして見させていただいて、けっこうユニークな表現だったりアニメーションがすごく表情豊かだったり、「このクオリティをMVで!?」みたいなものを作り上げられる方だと思っています。「アタシは問題作」のMVも楽曲に合わせてしっかり丁寧に表現してくださいました。ストーリーとしては何事もうまくいってないだろう、社会人の不憫な主人公という、可哀想な描写もあるんですけど、でもかわいらしいMVになっていると思います。

――「アタシは問題作」、歌詞の最後にある<あんたはどうだい?>にドキッとしました。どんな狙いがありますか。

私も最初に聴いたとき、ピノキオピーさんの狙いを感じました。印象的に第三者の目や意見があって、こういう印象、人間と決め付けられていると言ったら強い言い方ですけれど、その印象が一人歩きして。それを決定づけているのは第三者、視聴者の皆さんが主だと思っていまして、「あなたたちはどうなの?」と、聴いている皆さんに刺すような表現ができたらいいなと思いました。私もニュアンスを考えたり、表現を練って、ウッとなるような印象を生めるような歌い方をしました。この言い方というのは最初から決まっていて、低音で「どうなんですか」と問いかけるような歌い方が一番がいいのかなと思いました。

――本作でもっとも共感できる、もしくは感情的になる歌詞は?

全て共感できるのですが、ピノキオピーさんが私の独り言や本音を勝手に覗いた?

エスパー?

みたいな風に思いました。その本音を言っている気持ちに近かったフレーズは、1番のAメロ<ちょ

待ってよ

なんで?

過大評価です 本音言えず

胸焼けしてる>です。私はこういうことを思っています、とか何もお伝えしていないのに、この歌詞を書いてきてくださったのは、私の気持ちと完全にリンクしていると思いました。

――レコーディングで意識されたところは?

自虐的で主人公もけっこう不憫な感じもあって、その情報だけ聞くとネガティブな歌い方になりかねないと思うんです。でも、楽曲自体はポップなので、歌い方は明るい感じに歌ったのですが、ただ明るくしたのではなく、空元気、頑張っている歌い方みたいなものを心がけました。

――その中で新たな試みやアプローチはありましたか。

元気に歌う、パワフルに歌うというのは楽曲によってはあったと思います。「阿修羅ちゃん」、「リベリオン」、ウタの「私は最強」は明るくて力強い表現ですが、「アタシは問題作」の明るく歌うということにおいては、今までとは全然違うと思っています。無理に元気を出して歌う、無い力を振り絞りながら頑張って明るく歌うというのは、新境地でもあるのかなと思っています。

――あくまで創作として<アタシ>に気持ちを入れたのか、共感できる部分も多く<アタシ>の歌として気持ちを入れられたのか教えてください。

後者です。「うっせぇわ」も共感できる部分もありました。レコーディングしていた時期も怒りの感情を奮い立たせられるきっかけのものがあったり、自分の中の勢いみたいなものは「うっせぇわ」みたいな感情も兼ね備えられていますが、それが実際の性格とリンクしているかと言ったらそれも違うんです。

「夜のピエロ」のような都会的ですごく輝いているはずなのに、孤独を感じるというような共感できた部分はたくさんあります。そういった部分で私の人格とリンクしているところはあったのですが、私が思っていることをそのまま表現してくださったのは、ピノキオピーさんが初めてでした。”全然そんなことないのに”って日々思っていたことを表してくれたというのは、すごいなと思いましたし、歌いやすかったです。

――「アタシは問題作」ライブでのイメージは?

ライブで歌ったら盛り上がるんじゃないかなと思いつつ、けっこう大袈裟な動きだったりが多くなるじゃないかなと思います。

――ライブで大事にしていることはなんですか?

たくさんありますが、足を運んでくださった皆様に衝撃的で、最高に素晴らしい時間を届ける、絶対にそういう時間をつくるということを大事にしています。

――その気持ちが届いた実感は?

YouTubeに投稿されている映像は2ndライブのもので、さいたまスーパーアリーナということもあり、たくさんの人が盛り上がってくださったなというのが、ステージにも伝わってきました。3rdライブ『蜃気楼』では声出し解禁ということもあり、ちゃんと皆様の声を聴くのはそこが初めてだったので、声援をいただけたときは、楽しんでくれて良かったと思いました。

――6月に開催されるライブ『Ado全国ツアー2023「マーズ」』についてはいかがでしょうか。

『蜃気楼』とはまた規模が広がったツアーになり、開催期間が夏ということで足を運んでくださる皆さんにとって、燃え上がる夏の思い出の一つにできたらいいな、と気合を入れて頑張りたいと思っています。行く場所も増えたので、すごく楽しみです。

Adoが新たに始めたいこととは?

――いま思うボカロ音楽の魅力とは?

数年前は違いという部分で言いやすかったのですが、いい意味でJ-POPにボカロ音楽が進出してきて、それまではJ-POPにはない独特な感じが魅力的でなど言いやすかったけれど、今はいい意味でそれがない。多種多様なところ、色んな色を見せてくれるのがボカロ音楽に感じる魅力かなと思います。私が本格的に聴き始めた小学生くらいの頃、初音ミクという言葉を同級生で知っている人は知っていましたが、「ボカロ何それ?」と言われていて…。もしかしたらずっとこうなのかなと思っていたけど、今はそんなことはなくて、この変化は嬉しいことですね。昔の自分が今の現状を聞いたら「いいね!」と言ってくれると思います。

――アメリカのレーベルとパートナーシップを結びましたが、準備などされていますか?

最近ですと海外のメディアさんから取材していただいて、通訳さんを通して私のことをお話しする機会があったり、いずれ海外のステージにも立てたらいいなというお話しもしていて、そんな未来が来たら楽しみだなと思っています。英語が得意なわけではないので、中学英語をやり直して、シャドーイングなどを頑張っています。

――Adoさんが思うカッコいい大人とは?

カッコつけていない大人ですかね。何でも知っている、スマートとか美しいとか、頭がいいとか、お金を持っているとか、カッコいい=完璧みたいなイメージが強いと思います。私も完璧がカッコいいと思うときがありますが、カッコ悪いとは違くて、例えば子どもと一緒に笑いあったり、人生においても失敗してしまったことがあったとしても悪とはしない。それを隠しもしない大人が私にとってはカッコいいと思っています。私はそういった大人になれたらいいなと思います。

――10代の子たちにはどんなアドバイスをしますか。

正直私も大人にはなりきれていないんですが…、背伸びをする必要はなくて。悩んでいる人の人生を覗くことはできないので、難しいのですけれど、自分の選択を誰かに否定されたとしても揺らがないで自分を貫いてほしいです。人生に間違いなんてないと思うので、自分を信じて人生を歩んでほしいなと思います…。と、私自身にも言えるような大人になれたらいいですね(笑)。

――新たに始めたいことは?

スケートに通うか、ローラースケートのマイシューズを買って、定期的に行こうかなと思っていました。私、スポーツが苦手なのですが、唯一できる運動がスケートまたはローラースケートなので、レジャー施設とかへ行ったときに「私ちょっと滑れるんだよね」みたいなものを極めようかなと。人に自慢するためというわけではないのですが、もうちょっと滑れるようになれたら気持ちいいかなと思っています。

――いま一番欲しいものは?

ちょっと大きめの冷蔵庫でしょうか。一人暮らし専用の冷蔵庫を、一人暮らしを始めた頃に購入したのですが、もうちょっと大きくてもいいかなと思ったので。

――最近感じた身近なハッピーは?

昔は川沿いの草むらで四葉のクローバーを見つけてハッピー、というのはありましたけど、二度と手に入らないと思っていた傘が再販されていて、「またこの傘をさせる!」と購入して、雨の日によく持っていっていることです。

――今、テンションが一番上がることは?

自分のやりたかったお仕事が決まったときや、どの曲もそうですれけど、新曲がボカロPさんから上がってきて初めて聴いたときは興奮します。それこそ「アタシは問題作」のMVも、1人で「最高だね」と言いながら、なぜか洗面所でスマホで観て、盛り上がってました。

――タイムマシンで中学生の自分に会えるとしたら、なんて声をかけますか?

「これがあんたの未来の姿だよ。あーあ」です。いきなり現れてこれを言って帰って、ちょっと可哀想な思いをさせたいですね(笑)。「えぇ…何今の」ぐらいの対面がちょうど良いのかなって思いました。

――2023年の目標は?

去年は新しいことをたくさんしようという年でした。ライブパフォーマンスに力を入れたり、色んなジャンルの楽曲を歌うことや、ディレクションみたいなことをしたり、初音ミクを家に招き入れて、ソフトをいじって一緒に歌ってみたりした2022年でした。今年は新しいことに挑戦しつつ、自分自身がもっと成長する年になったらいいなと思っています。(おわり)