2023年2月4日、「さっぽろ雪まつり」が開幕した。21年と22年はオンライン開催だったが、今年は3年ぶりに会場が設けられている。

このイベントの1番の見どころといえば、やはり雪で作られた大きな「雪像」の数々だろう。

今年も、アニメのキャラクターや、北海道日本ハムファイターズ出身で米国MLBでスターとなった「オオタニサン」などが雪で形作られ、並んでいるという。多くの観光客が訪れ、冬の札幌市に活気が戻ってきているようだ。

そんな中、やたら異彩を放つ雪の像が堂々鎮座しているという。ツイッターで大きな注目を集めた、この作品だ。

なんと、巨大な肺の雪像だ。しかも向かって右側が、妙にリアルである。

「肺を大切に!」というタイトルが付けられている。「No Smoke For Smile! 健康であることが、私たちの願いです」というメッセージも添えられている。

この肺の雪像は、どこに展示されていたのだろう? いったいどんな制作意図があったのだろう?  Jタウンネット記者は、写真を投稿したツイッターユーザー「おけら@臆トレManager4545」さんと、雪像を制作した第一三共・札幌支店「雪像チーム」に話を聞いた。

ひときわ異彩を放っていた

投稿者「おけら@臆トレManager4545」さんは、「さっぽろ雪まつり」には毎年のように見学に行っていたという。今回は3年ぶりに会場が作られるということで、とても楽しみにしていたそうだ。「外国人の方も多く参加して賑わいが戻ってきた感じです」と、印象を語ってくれた。

「肺の雪像」を見つけたのは、3丁目会場の市民雪像展示だったという。

「どの雪像も力作揃いでしたが、ちいかわやアーニャ(編注=漫画「SPY×FAMILY」の登場人物)のようなキャラ物が大半である環境で見ての通りひときわ異彩を放っていたので、1番の推し作品として投稿しました」(「おけら@臆トレManager4545」さん)

「肺の雪像」の制作者については知らないということだが、「過去もリアルな心臓の雪像を完成させていたはず......」と、記憶を辿って話してくれた。

いったい、誰が作ったのか。「さっぽろ雪まつり」実行委員会に問い合わせたところ、作ったのは製薬会社「第一三共」札幌支店の従業員たちだという。

Jタウンネット記者は、同支店の「雪像チーム」を取材することができた。

想いは、「No Smoke」「肺を大切に!」

「肺を大切に」という雪像のアイデアは、いつ、どんなきっかけで生まれたのだろう? そして、なぜ肺だったのか? Jタウンネット記者の質問に、雪像チームの代表はこう答えた。

「私たち雪像チームは、札幌支店に勤務している有志社員から成り、メンバーは『皆さんの健康で豊かな生活に貢献したい。』という思いを持っています。これまでにもリアルな心臓や胃、脳などの臓器を作成してきました」(雪像チーム代表)

同社では、2010年から市民雪像制作に参加し、雪の臓器を作ってきた。

今回はどんな"雪臓"を作るか。参加が決まった12月の段階では、「脊椎」や「心臓断面図」などのアイデアもあったという。その中で「肺」に決まった理由の一つに、社内で取り組んでいる「2030年喫煙率ゼロ宣言」がある。

雪像制作の目的・意図は、ずばり「No Smoke For Smile!」。喫煙は肺がん、心筋梗塞、肺気腫等の多くの疾病のリスクを伴うと言われている。まず「No Smoke」を、そして「肺を大切に!」を呼びかけた、というわけだ。

そんな「肺を大切に」の制作にあたって、もっとも苦心した点を聞いた。

「左肺(向かって右側)のリアリティを出すところでした。札幌支店長が作製した粘土模型を見ながら、気管支を立体的に浮かび上がらせるところが一番大切でしたし、それを表現するのがとても難しかったです」(雪像チーム代表)

雪像チームもすごいが、支店長もすごかった。

「たくさんの海外の観光客の方も...」

「おけら@臆トレManager4545 」(@okera1127)さんが「雪の肺」を紹介したツイートには、1万8000件以上の「いいね」(7日夕時点)が付けられ、広く拡散。

ツイッター上ではこんな声も寄せられている。

「ハイ・クオリティな雪像ですね」
「ちゃんと右肺が3葉に分かれてるあたり芸が細かい」
「水平裂も斜裂もバッチリ輪状軟骨から気管支樹まで 魂がこもった造り込みが凄い」
「これはやばいw」
「これの斜向かいに喫煙ルームあるのめっちゃおもろい」
「これ、終わる頃に周辺の排気ガスやら何やらで黒く煤けていたらすごい企画」
「久々の雪祭りだけど、パンチのある雪像があるやん」

第一三共札幌支店の雪像チームの代表は、ツイッターなどSNSで話題になっていることについては、「職場でバズっていると教えてもらって、とても驚きました。かわいいキャラクター等の雪像が多い中で、異物感が否めなかったのだと思います(笑)」と語る。

現地でも、多くの人が興味をひかれているようだ。

「たくさんの海外の観光客の方も足を止めて見ていただいていたので、私たちの健康への願いが少しは通じたのかなと嬉しく思っています」(雪像チーム代表)

さっぽろ雪まつりは2月11日までの開催。雪像を見に行く人は、足元にお気をつけて。