「オシャカラー」もあるのに? なぜ新車の人気色は「白」「黒」に集中する!? その理由とは

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国内の新車は人気色が「白」「黒」に集中している

 2022年も自動車業界では数多くのニューモデルがセンセーショナルに発表されましたが、その鮮烈な印象を強める効果を与えていたのが、個性を主張するカラフルなボディカラーでした。
 
 しかし実際に新車で数多く買われるのは、定番の「白」「黒」が中心。こうしたギャップが生じる理由について探ります。

2022年11月16日に世界初公開されたトヨタの新型「プリウス」(5代目)はシャープに生まれ変わったデザインを引き立てるイエローの新色「マスタード」(上)のインパクトもセンセーショナルでした[ボディカラーは上:マスタード/下:プラチナホワイトパールマイカ]

 クルマを購入する際、「何色を選ぶか」ということは、車種やグレード・オプション選びなどと並んで、とても重要な選択です。

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 特に新車の場合、カタログに掲載されているカラフルなボディカラーの一覧を見ながら、あれやこれやと楽しく悩んだことがある人は多いと思います。

 でも実際に街で見かける新車の多くは、白や黒、銀など無彩色が選択されていることも事実です。ではなぜ新車の人気色は、「白」や「黒」など地味めな色なのでしょうか。

 新車を買うとき、自分の好きな色、お気に入りの色をあらかじめ指定する人もいれば、カタログを穴があくほど眺めながら、大いに悩む人もいます。

「イメージカラーである派手めの色を買いたいけれど、長年乗ったら飽きてしまいそう」「自分に似合うかな」「いろいろ逡巡(しゅんじゅん)し、結局無難な色を選んでしまった」

 このようにボディカラー選びにはいろいろなエピソードがあると思います。

 実際に、アメリカの塗料メーカー・アクサルタが毎年調査・発表している、各国のボディカラー人気ランキング「世界自動車人気色調査報告書」によると、日本では1位が白(37%)、2位が黒(19%)というデータが出ています(第69回・2021年版)。

 この2色だけでも50%を超えてしまうのですから、確かに新車は「白と黒が多いなあ」という印象になるはずです。

 なお3位以下は、3位:シルバー(11%)、4位:ブルー(9%)、同率5位:グレー/レッド(6%)と続いています。

 イエロー・ゴールド系は9位(2%)に止まっており、鮮やかな色は全般的に売れていないこともわかります。

 国内の組織である自動車検査登録情報協会が発表した、2021年3月末時点でのデータを見てみても、軽自動車を除く乗用車(対象: 3918万1501台)のカラー別保有台数は、白が48%、灰色(シルバーを含む)が18%、黒が16%という割合でした。

2022年デビューの最新モデルでもやはり販売上位は「白」「黒」が占めていた

 ではどうして、このような無彩色のボディカラーが好まれるのでしょうか。

マツダの新型SUV「CX-60」は、同社を象徴する特別色「ソウルレッドクリスタルメタリック」(手前左)に加え、ホワイト系の特別色「ロジウムホワイトプレミアムメタリック」(右奥)も新設定し、立ち上がりから好評です

 まず白から見てみると、白いクルマには清潔感もあり、春夏秋冬、海・山、冠婚葬祭などすべての季節・場所・イベントになじむことができます。

 また、特に色にこだわりがない場合や、周囲が皆白いクルマだから白にした、という理由もあるでしょう。つまり白は「無難な色」であるということです。

 ところで一律に白いクルマといっても、先の「世界自動車人気色調査報告書」によれば、追加料金が必要なパールホワイトは白の中でも27%を占めているといいます。しかし基本的にはソリッドの白を選べば、パールやメタリックを含んだカラーを選ぶよりも安く購入できます。

 さらに白は人気色だけあって、下取り時のリセールバリューが高いことも大きなポイントです。買い取る側とすれば、不人気な色よりは人気色のクルマのほうが、在庫したり売れなかったりするリスクが少ないのです。

 2位の黒も、「場を選ばす、無難かつリセールが良い」という理由はほぼ同様なのですが、クルマがスタイリッシュに見え、映り込みによって造形もわかりやすくなり、高級感や重厚感もアップする印象があるため、白よりは積極的な意思で選択されていると思われます。

 参考までに、2022年7月から発売を開始した日産の新型「エクストレイル」では、発売後2週間の時点で白(ブリリアントホワイトパール):29%、黒(ダイヤモンドブラック):21%、白黒2トーン(ブリリアントホワイトパール/スーパーブラック2トーン):14%というデータが出ています。

 また「ソウルレッド」のイメージが強いマツダでも、最新モデル「CX-60」の一番人気は白(ロジウムホワイトプレミアムメタリック)で、その比率はなんと45%。しかし2位は黒や銀ではなくグレー(マシーングレープレミアムメタリック)で、15%を占めています。

 販売台数トップ10の常連である定番人気モデルでも見てみましょう。

 2019年11月の発売後、わずか1か月で月販目標台数の約8倍にあたる3.2万台を受注したトヨタのコンパクトSUV「ライズ」は、白(シャイニングホワイトパール)が3割、黒(ブラックマイカメタリック)が2割、シルバー(ブライトシルバーメタリック)が1割と発表されています。

 上位人気3色が「世界自動車人気色調査報告書」のデータに近い比率で販売されていることに注目です。

白や黒を選ぶ心理の裏には「長く大切にしたい」気持ちが表れていた!?

 白や黒といったカラーが好まれる傾向について、各メーカーのカーデザイナーはどのように受け止めているのでしょうか。

新型「プリウス」にも早速トレンドのグレー系ニューカラー「アッシュ」が新設定されました。トヨタによると「ニュートラルなソリッドグレーに色味のあるマイカを加えニュアンスのある表情を実現しました」と説明。売れ行きも注目されます!

 筆者(遠藤イヅル)がとある国産メーカーのデザイナーにたずねたところ、このように語りました。

「一般的に消費者は、安くて小さくて期間限定的に使う製品に関しては、“色で遊ぶこと”をします。

 他方、クルマのように購入価格が高く、長く使いたい製品に対しては、飽きのこない普遍的な価値のあるもの、伝統的な形状、無難な色などを選ぶ傾向が強いです」

 最近は以前にも増して、新車の保有年数が年々伸びる傾向にあります。

 クルマを「長く大切に使いたい」と願う気持ちが、ユーザーに白や黒といったカラーを選ばせるのかもしれません。

 また、違う国産メーカーのデザイナーにも、同じ質問をしました。

「お国柄による違いもあり、例えばドイツでは白いクルマは少ないのですが、それ以外では目立った国の違いはあまり感じません。

 以前は人気があったシルバーも、今や世界的に不人気色になってしまいました。

 最近は、弊社製品ではベージュ系の売れ行きが世界中で伸びています。

 実は、個人的にはそんなに売れないのではないかと考えていました。長年取り組んでいても、ボディカラーの売れ行き動向はやはりとても興味深いですね」

 カラーデザインのプロにとっても、その動向には読めない部分もあるようです。

 また上記の回答にもある通り、白いクルマが好まれるのは日本だけではありません。

 前述の「世界自動車人気色調査報告書」のデータを見ると、2021年版では全世界で35%の割合を白いカラーが占めており、世界共通の傾向であることが伺えます。

 一方トレンドとしては、近年は特にグレーの躍進が著しいとのこと。確かに最近の新型車では、日本車・輸入車問わず、グレー系の新採用が多くみられます。

 白と黒、そして銀という人気色ランキングに一石を投じることができるでしょうか。