APブログ: 50年前の選挙が米国をベトナム戦争に導く結果に＝ベテラン記者の回想録
ケネディの後を引き継いだリンドン・ジョンソン大統領は強硬路線を取った。米海軍の駆逐艦マドックスがトンキン湾で北ベトナムの魚雷艇に攻撃されたのは1964年8月2日。この事件をきっかけに、ジョンソン大統領はハノイ政権に対する大規模で本格的な軍事行動に踏み込んでいく。
ベトナム戦争が終結する1975年までにベトナム人150万人以上、米国人約5万8000人の生命が奪われた。名目上であれ中立国だったはずの隣国、ラオスとカンボジアもベトナム戦争がもたらした死と破壊からは免れていない。
ベトナムが被った災いの種がまかれたのは第2次対戦中とその直後の時期だ。米国が第2次大戦に本格的に参加する数カ月前の1941年8月、フランクリン・ルーズベルト大統領はイギリスのウィンストン・チャーチル首相と戦後の平和構想について協議し、大西洋憲章に調印している（大西洋会議）。
ニューファンドランド島沖の戦艦で開かれた大西洋会議から戻るルーズベルト大統領を取材するため、メイン州のロックランドでAP通信も待ち構えていた。取材班に加わっていた筆者がまだ駆け出しのころだ。大西洋憲章は列強によるアジアでの植民地主義の終えんを見越しており、ここでは暗黙のうちにフランスの植民地、インドシナ（ベトナム、ラオス、カンボジア）も含まれていた。
ルーズベルト大統領は第2次大戦の終結を見ることなく1945年4月12日に脳卒中で急死。次のハリー・トルーマン大統領は大西洋憲章を無視し、フランスにインドシナ領の奪回を認めた。トルーマン大統領の判断は歴史的な過ちとなった。アメリカ合衆国とフランス国民は後に高い代償を払わされることになる。軍の召集を受けた筆者は当時、OSS（米戦略諜報局）に転じ、勤務地の中国西部でトルーマン大統領のこの決定を聞き、同僚とともに衝撃を受けた。
米CIA（中央情報局）の前身であるOSSは当時、数カ月前から秘密裏にホー・チ・ミン大統領と接触を重ねている。米国は抗日戦争を援助していたことから、ホー大統領はベトナム独立の支持も受けられるものと信じていた。
ホー大統領が1945年にベトナム民主共和国の独立を宣言した時には、OSSも立ち会っている。宣言書の冒頭には、万人は生まれながら平等であり、自由で独立しているとする一節があった。1776年のアメリカ独立宣言の精神を受け継ぐ部分である。しかし、フランスが再びベトナムを支配下に置こうとしたことで、独立を求める闘士は、ホー大統領を先頭に西側との対決する道を選び、決して引き返すことはなかったのだ。（2006年7月27日午前11時55分）【了】
■ジョン・ロデリック記者
AP通信特派員として、39年間、主にベトナムなどアジア地域の特派員を経験してきた大ベテラン記者で、1948-1949年には中東戦争を取材していた。
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