ソニーは10月26日、フルサイズミラーレスカメラの新製品「α7R V」(ILCE-7R5)を発表した。ディープラーニングなど、AIまわりの処理を司る新開発の「AIプロセッシングユニット」をαシリーズで初めて搭載したのが特徴。人物の骨格や姿勢を認識できるようになり、瞳の認識精度が高まった。認識できる被写体も増え、これまで対応していた動物や鳥に加え、新たに昆虫や自動車、列車、飛行機の認識にも対応した。

AIまわりの処理を司る「AIプロセッシングユニット」を初搭載してAF性能を底上げした「α7R V」(ILCE-7R5)

画像処理エンジンは、最新の「BIONZ XR」を2基搭載した。α7R IV比で処理性能を約8倍に引き上げ、解像感やダイナミックレンジを高めたほか、露出制御やオートホワイトバランス(AWB)も改善した。動画は、新たに8K/24pや4K/60pの撮影に対応したほか、手持ち撮影時のぶれを補正して安定した動画にする高性能手ぶれ補正アクティブモードを新たに追加した。ボディ内手ぶれ補正は、補正効果を従来の5.5段から8段に引き上げた。

背面の液晶モニターは、チルト式とバリアングル式の両方のメリットを兼ね備えた新開発の4軸マルチアングル液晶モニターを採用。電子ビューファインダー(EVF)は、944万ドットの高精細&高倍率タイプにした。

価格はオープンで、実売価格は56万円前後。発売は11月25日。

基本デザインはα7R IVを継承する。前面のマウント左上には、新たにオートホワイトバランス用の可視光+IRセンサーを搭載した

背面液晶は、ヒンジの位置からバリアングル式のように見えるが、同時にチルトも可能なよう工夫している

動画撮影ボタンが上部に来たことと、露出補正ダイヤルが電子式になったこと、撮影モードの切り替えがモードダイヤルと同軸のレバーになったことが従来モデルからの変更点だ

α初の「AIプロセッシングユニット」で被写体認識を改良

高画素センサーで解像感の高い写真や動画を撮影できる「α7R」シリーズの最新モデル。最大のポイントとなるのが、ソニーが「被写体認識性能の著しい革新をもたらす」「カメラの未来に向けた重要なターニングポイント」と位置づけるAIプロセッシングユニットだ。

新搭載のAIプロセッシングユニット。ユーザーの撮影による学習やディープラーニングには対応しないが、ファームウエアの更新でAIまわりの機能が追加される可能性はあるとする

AIプロセッシングユニットは、ディープラーニングを含むAI機能で被写体認識性能を大幅に向上させる役目を持つ。人物の場合、耳や首、肩、手首、膝などの部位を認識して人物の姿勢を認識できるようになる。被写体が小さかったり、逆光で顔が暗くなったり、後ろ姿でも、人物の顔や瞳の位置を認識できるようになる。人物が向こうを向いたり、手前に木などの障害物がかぶさっても、顔や瞳にあたる部分を推定してピントを合わせ続ける。

α7R Vで撮影した写真。人物が向こうを向いたり、手前に障害物がかぶさっても、人物の目にあたる部分にピントが合い続けた

α7R Vで撮影した写真。AIのおかげで瞳の認識精度が高まり、左奥にいる犬のぬいぐるみも手前の障害物にピントを取られることなくしっかり目にピントが合い続けた

認識可能な被写体も拡充した。これまでは人物や動物(猫、犬、鳥)に対応していたが、新たに「昆虫」「車/列車」「飛行機」を追加した。動物も、目が小さい小動物(ネズミやリスなど)や馬のような草食動物も認識しやすくなった。認識させたい被写体は、これまでと同様に設定画面で切り替える仕組みで、すべての種類の被写体を同時に検出することはできない。

手前に向かって走ってくる列車。運転台の場所にAFフレームが合っているのが分かる

馬の目にAFフレームがあったところ。猫や犬とは異なり、鼻が長く目が離れている馬は、これまでの動物認識AFではピントが合いにくかった

疾走する自動車。遠くにいる状態でもピントがしっかり合うので、モータースポーツの撮影に活躍しそう

新たに、フルタイムDMF機能も搭載した。オートフォーカスを用いた静止画撮影中、フォーカスリングを操作すると一時的にマニュアルフォーカスに切り替えてピントが調整できる。AF撮影時、別の被写体にピントが持って行かれた場合でも、フォーカスリングを調整して目的の被写体近くにピントを寄せれば、オートフォーカスを戻しやすくなる。

背面液晶はチルト+バリアングルのハイブリッド式に

背面の液晶パネルは、新開発の4軸マルチアングル液晶モニターを採用。これまでのチルト機構に加え、バリアングル式のような横開きもサポートした。ファインダーは、クラス最高解像度となる944万ドットの高精細OLEDで、ファインダー倍率も世界最大となる0.90倍とした。

背面液晶を上方向にチルトしたところ。液晶パネルの左端にヒンジが見える

上の状態からパネルを左に開けば、バリアングル式のように撮影できる。パネルをレンズと同じ方向に向ければ、自撮りもできる

本体サイズや重量は、α7R IVよりも若干増した。本体サイズは約131.3×96.9×82.4mm(α7R IVは約128.9×96.4×77.5mm)、メモリーカードとバッテリーを含む重さは約723g(α7R IVは約665g)。

動画の画質も引き上げ、アクティブモードの手ぶれ補正も追加

有効約6100万画素の高画素センサーを搭載するα7Rシリーズは、高精細な写真が撮影できるカメラと位置づけられているが、α7R Vは動画撮影の画質向上も図った。

動画は、新たに8K(7680×4320ドット)/24pや4K/60pの高品位でなめらかな撮影に対応した。Super 35mm領域では、6.2K情報をオーバーサンプリングした4K/30pや4K/24p記録も可能。

さらに、手持ち撮影時のぶれを補正して安定した動画にする「高性能手ぶれ補正アクティブモード」も追加した。対応レンズは「SEL24105G」「SEL70200GM2」「SEL100400GM」「SEL200600G」で、超望遠ズームレンズを中心とした4本のレンズに限られる。

最大2万円還元、発売記念キャッシュバックも実施

α7R Vの購入者を対象とした「レンズキャッシュバックキャンペーン」を実施する。α7R Vと指定の交換レンズを購入した場合、交換レンズ1本につき最大2万円をキャッシュバックする。キャッシュバックの対象購入期間は2022年11月25日〜2023年3月27日。α7R Vと交換レンズの購入は同時でなくても構わない。α7R Vを予約した場合、交換レンズの購入は2022年11月1日から対象となる。

α7R Vのおもなスペック

撮像素子:フルサイズExmor R CMOSセンサー(有効約6100万画素)

メモリーカードスロット:デュアルスロット(SD/SDHC/SDXCメモリーカード、CFexpress Type Aカード対応)

位相差AF:35mmフルサイズ時: 693点、フルサイズレンズ装着かつAPS-C読み出し時: 693点、APS-Cレンズ装着時: 567点

瞳AF:人物(左右瞳選択可)、動物(左右瞳選択可)、鳥、昆虫、車・列車、飛行機

ISO感度:ISO100-32000(拡張時: 下限ISO50、上限ISO102400)

ファインダー:0.64型電子式ビューファインダー (Quad-XGA OLED)、約943万ドット、倍率約0.90倍

背面液晶:3.2型液晶(チルト+バリアングル両対応、約209万ドット)

ボディ内手ぶれ補正機構:補正効果8段分

バッテリー撮影枚数(静止画):約440枚(ファインダー使用時)、約530枚(液晶モニター使用時)

バッテリー撮影枚数(動画):約90分(ファインダー使用時)、約100分(液晶モニター使用時)

本体サイズ、重さ:約131.3×96.9×82.4mm、約723g(メモリーカード、バッテリー含む)