小日向文世さん、星一さんが舞台で親子共演。やっぱり緊張する?と思いきや…
フランスの劇作家・モリエールの喜劇『スカパンの悪巧み』を脚色した、演出家・串田和美さんが主演・演出を手掛ける舞台『スカパン』が、2022年9月から長野、茨城、福岡、神奈川にて上演されます。今回出演するのが、串田さんが主宰の「オンシアター自由劇場」時代からの盟友であり、幅広いジャンルで活躍する名優・小日向文世さん。さらに、その長男であり俳優でもある小日向星一さんもの出演も発表され、初の親子共演が実現しました。
初の親子舞台共演!小日向文世さん・星一さんの親子対談
今回は、初の舞台親子共演となる、小日向文世さんと小日向星一さんに『スカパン』にかける想いや、舞台に関する思い出深い話を教えてもらいました!
●思い出深い舞台に、それぞれがかける意気込み
――今回、舞台『スカパン』に出演が決まった際の感想からお聞かせください。
小日向文世さん(以下、文世):自由劇場時代にご一緒した座長の串田和美さん、大森博史さんと、数十年ぶりに3人そろって共演できることが率直にうれしかったですね。また、串田さんにとって『スカパン』はライフワークとして何度も上演された作品。その作品にまた出させてもらえるのなら「絶対にいい作品にしなくちゃ!」という使命感を抱きながら、引き受けました。
小日向星一さん(以下、星一):父と母が所属していた劇団の演出家である串田さんの舞台に出させていただけると聞いて、うれしかったです! それと同時に、父とも初めての舞台共演となるうえに、大先輩の大森さんもいらっしゃって…大先輩たちに囲まれながら、身が引き締まる思いです。
――ご家族はなんとおっしゃってましたか?
星一:母は共演について、すごく楽しみだと言ってくれました。一方で、同じく俳優をやっている弟には「めちゃくちゃ羨ましい…!」と悔しがった感じで言われましたね(笑)。
――文世さんは自由劇場時代に『スカパン』を演じられていますね。
文世:かつて僕は、初演時はシルヴェストル、再演時はオクターヴという役柄を演じました。ただ、今回はジェロントという新しい役をやらせてもらうので、役をひねり出すまでが本当に大変だろうなと思っています。
串田さんは本当にすばらしい演出家である一方、役者としてもその演出を再現するための生みの苦しみを求める方ですから。串田さんの考える、毒のある部分、醜い部分、滑稽な部分などを含めた独自のおもしろさにどう応えるかが勝負だな、と思ってます。
●すごくぜいたくなひとときを再び感じたい!
――久しぶりの串田さんとの舞台で、楽しみにしていることはありますか?
文世:解散してから26年が経過していますが、劇団時代に一緒につくっていたあの頃を、パッと肌で感じられたら…と思っています。今、僕らは舞台だけじゃなくてドラマや映画などの映像の作品にも出演するし、複数の作品が同時進行することもあるし…。言ってみれば、いくつもの作品を同時並行しながら舞台をつくっているんですよね。
でも、当時は、演出家・串田和美の考えた世界をみんなで一生懸命再現するという、ある一つの目標について純粋に考える日々でした。1つの作品に絞って、ずっとその芝居のなかにいて、自分の役のことだけを何か月も考え続ける生活をしていた。
ひとつの作品だけに向かい続ける、そんな時間がずっと続いていたし、今思えばその瞬間はすごくぜいたくなものでした。今回の串田さんの『スカパン』を通じて、またその瞬間を肌で感じたいなと思っています。
●生まれたときに父が演じた役を今度は自分が演じる
――対する星一さんは、初めての『スカパン』の舞台になるわけですね。
星一:僕は、父が再演時に演じたオクターヴという役を演じます。このインタビューの段階ではまだ台本を読んだだけですが、稽古では格好つけず、うまくやろうとは思わず、素直に演じていきたいなと思います。
文世:じつは、すごくおもしろい話があって、1995年に僕がオクターヴ役を演じた再演のとき、妻が妊娠していたんです。僕は出産に立ち会おうと思って、朝からつき添っていたのですが、その日の午後からの通し稽古の時間になってしまい、劇場に戻らざるを得ませんでした。
結局、僕自身は立ち会えませんでしたが、『スカパン』の通し稽古の1幕と2幕の間に星一が生まれたんですよ。
星一:そうなんです。先日も家族で「僕が生まれたときにお父さんが演じてた役柄を、まさか僕が演じることになるとは不思議だね〜」という話をしましたね。
●経験者である父からのアドバイスって?
――すごい偶然ですね! かつて、オクターヴ役を演じた文世さんから星一さんに、すでになにかアドバイスはされたんでしょうか?
星一:まだ、父からはなにも聞いてないですね…(笑)。
文世:正直、当時のことは全然記憶がないんですよ。初演のときに、シルヴェストルという別の役柄を演じたときのことはよく覚えているんですけど…。
星一:どんなことを覚えてるの?
文世:まだ幼い中村七之助君も舞台に立っていたことかなぁ。彼はまだ小学5年生くらいだと思うんですが、全然緊張してなかったんだよね。そしたら、あるとき1度だけ幕が開いたらすごく緊張した顔をしていて。
「どうしたの?」と聞いたら、お父さんの中村勘九郎さん(当時)が観に来てるって。「大勢のお客さんより、お父さんが来ることの方が怖かったのかぁ…」とほほえましかったです(笑)。
●役者である父がどのように稽古場で振舞うのか興味がある
――役者さんにとって、お父さんというのは緊張する存在なのかもしれないですね。星一さんは、お父さまの文世さんとの共演にプレッシャーは感じますか?
星一:じつはその反対で、僕自身は父と一緒にお芝居できることに関しては、すごく楽しみです。もちろん父は芝居にはとてもシビアな人なので、僕の演技を見られるのは緊張しますけど。ただ、それ以上に稽古場での父を身近で見られることにワクワクしています。
文世:あれ? 昔、稽古場に来たことなかったっけ?
星一:小さい頃に映画のロケとかには連れて行ってもらったことがあるけど、セリフを言うシーンじゃなかったし。稽古を見るのは、今回が本当に初めてなんじゃないかなぁ…。
――文世さんは息子さんの前で演じることにプレッシャーはありますか?
文世:うーん、正直まだピンと来てないですね。ただ、「親子共演なんて照れくさいね」なんて言い合っている余裕がないほどに、役づくりに必死だと思いますよ。串田さんは、やっぱり演出にはすごく厳しい方だし、その串田さんに「やっぱり小日向とやってよかった」と思ってもらえるよう期待に応えたいので。
僕は初演と再演以外は出演していませんが、串田さんにとって『スカパン』はこれまでに何度も演じられて来たライフワークの様な作品です。きっと串田さんの身体に作品がしみ込んでいると思うので、僕らもそれについていけるようにがんばらないといけませんから。ただ、でき上がったものは、きっと素晴らしいものになっていると思います。
記事後編では小日向家のルールや、ほっこりするご家族のエピソードをお伺いしています! 9月25日に公開予定なので、ぜひお楽しみに。
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