両親が元気なうちに「介護」についての知識を深めておくことは大切なことです。いざというときに慌てないためにも、ファイナンシャルプランナーで終活アドバイザー・山田静江さんに、介護について知っておきたい情報を教えてもらいました。

知っておくだけで安心できる「親の介護」

「元気な親でも、65歳を超えると体は思いのほか弱ってきます。転んで骨折したり、入院で足腰が弱くなったり、認知機能が落ちて一気に要介護になったりするケースも少なくありません」と山田さん。

いざというとき頼りになるのが公的介護保険制度ですが、「利用には市町村からの要介護認定が必要。認定がどこで受けられるのか、介護サービスがあるのか、困ったとき相談できるかなど、基本的な情報を知っておくと安心です」

また、介護で家族がもめないためには、「親が元気なうちに家族で話し合っておくことも大事です」。

●要介護になりやすいのはこんなとき

・人との交流が減り、家にこもりがちになったとき
・元気だが高齢でひとり暮らし
・65歳以上で病気やケガをして入院したとき

●親の介護が必要になったらどうすればいい?

いざ、親に介護が必要となったとき、どのように対応していったらよいのでしょうか? 順番に見ていきましょう。

1.最初の相談の窓口は地域包括支援センター

各市町村の地域包括支援センターには介護や医療のプロが常駐し、専門的な立場からアドバイスしてくれます。親の状態に不安を感じたら、親が住む地域のセンターにまず相談を。

2.要介護認定では生活状況や居住環境をチェック

介護保険のサービスを受けるには、役所に要介護・要支援認定の申請が必要。市区町村の調査員が自宅や病院に来て、家族や本人から普段の様子などを聞き取って調査します。

3.介護区分は7段階。段階によって負担額が変わる

介護区分は、要支援1・2、要介護1〜5の7段階。認定された区分で、利用できるサービスやかかる費用も変わります。ケアマネジャーと相談しながら、適切なサービスを選んで。

4.介護サービスの専門家“ケアマネジャー”に頼ろう

ケアマネジャーは、介護区分や本人や家族の希望から、適切なケアプラン(介護サービス計画)を立ててくれる頼もしい味方。介護で困ったり不安なときに、気軽に相談できます。

●介護サービスにはこんな種類があります

一口に介護サービスといっても、その種類はさまざま。あらかじめ知識として知っておくだけでも、いざというときの助けになります。

<施設サービス>

・特別養護老人ホーム(特養)
・老人保健施設(老健)
・介護医療院 など

介護保険施設に入居して受けられるサービス。特養は要介護3以上で自宅生活が困難、老健は要介護1以上で自宅復帰を目指す人が対象。

<在宅サービス>

・訪問介護、通所介護(デイサービス)
・短期入所(ショートステイ)
・介護つき有料老人ホーム、介護型ケアハウス など

自宅や高齢者住宅などで受けられるサービス。訪問・通所のほか、福祉用具のレンタルも。

<地域密着型サービス>

・小規模多機能型居宅介護
・夜間対応型訪問介護
・グループホーム など

地域に住む人が受けられるサービス。認知症対象居住施設のグループホーム、自宅と通所介護を合わせた小規模多機能型居宅介護など。

なにもわからない人でもOK!介護のアレコレQ&A

介護の経験がない人にとって、悩みは多いもの。よくある質問についてまとめました。

●Q:どれくらいお金がかかるかまったくわからないです…

A:親のお金を使うのが基本! 軽減制度は必ず利用して

介護保険サービスの自己負担額は、実際にかかった額の1〜3割(所得によって異なる)。さらに自己負担が限度額を超えると、超えた分が戻ってきます。介護施設なら、収入や貯蓄額が少ない人は軽減制度も。自分の生活が困らないように、費用は親のお金から出しましょう。

<介護保険施設の費用例(1か月)>

要介護4、1年の年金受給額150万円、貯蓄額1000万円の場合

●Q:施設をイヤがる親。どうしたら納得してもらえる?

A:施設は慣れると快適。連れ出すなどの楽しみをつくって!

最初はイヤがっていても、施設に入ると家事から解放され、話し相手もでき楽しく過ごす人は多いもの。ときどき家族が外に連れ出してあげると楽しみもできます。体験入居も利用して説得を。

●Q:兄妹姉妹間でもめそうです。ケンカにならないコツはある?

A:親が元気なうちに決めておくこと。自分のできる・できないをはっきり伝えて。

親が元気なうちに、親の希望も含めて話し合いましょう。とくに女性は介護の担い手を期待されがちなので、できること・できないことをきちんと伝えることも大切。親が介護に出せる資金額も聞いておくと、いざというときに安心です。

●Q:介護まではいかないが離れて暮らす高齢の親が心配

A:民間の生活支援サービスを頼るのも手!

自宅訪問や電話で体調を確認するサービス(郵便局など)、トイレや電気ポットなどの使用状況で安全確認をするサービス(象印、セコムなど)など民間のサービスは多種多様。独自の見守りサービスを行う自治体もあるので、確認してみましょう。