ママ友からお茶会の誘い。キラキラママたちと集合写真を撮ったら、正体は…
カルト宗教の問題が話題になっています。しかし宗教以外にも、「不労収入」などとうたった怪しい勧誘の魔の手も。今回は、主婦層を狙ったネットワークビジネスの勧誘を受けた読者に詳しく取材をしました。キラキラした笑顔の集合写真の裏側と、そのビジネスの実態とは?
「月商7ケタ」「不労収入」キラキラした起業家主婦たちと集合写真を撮ったら…
1歳児の子育て中のワーママ・亜里沙さん(仮名・32歳)のお話です。
近所の児童館で知り合ったママ友から「育児法について近所のママたちと気軽に語り合うお茶会を開催するんだけれど、よかったらいらっしゃいませんか?」とお誘いを受けたときの体験談です。
ご自宅にお邪魔するし、手土産はなにがいいかな? なんて考えていたら、そのあとすぐに費用の連絡が。
●お茶会の参加費3000円!?
価格は、大人1人3000円程度。夫婦や友達と2人で参加するとペア割で少し安くなったり、SNSにタグづけして感想を書いたりするとさらに割引もあるとのこと。
ママたちとのお茶会なのに、ずいぶんビジネスライクな集まりだなとは思ったのですが、近所のママ友がほしいという気持ちもあったし、ご自宅とはいえ子連れで参加できるなら…と思って快諾し、出かけることにしました。
当日、ご自宅へ行くと、乳幼児から小学生まで幅広い年代のママたちが6人ほど集まっていて、さっそくみんなで記念の集合写真を撮ることに。「SNSにアップしてもいいですか?」と聞かれました。「顔にスタンプして隠してくれれば…」と一応OKしたものの、ほとんどが初対面のママ。それほど親しくもないのに、少し違和感を覚えました。
妊娠や出産のときのエピソードや3時間おきの授乳に追われた新生児のときの話などを振り返りながら、みんなで育児の話に花を咲かせていたのですが、だんだん会話の流れが子どもの早期教育のことに…。
●子育てと仕事の両立。そんな悩みを解決できる理想のビジネス
お茶会に参加していた人のうち一人、小学生の男の子のママもきていたのですが、その男の子がテーブルに置いてあったカードを使いながら、日本史の偉人の名前を次々と言い当てていったのです。正直、まだ低学年なのにすごいなと思いました。
すると、ほかのママたちがその教育商材を次々と絶賛。そんなに高いものではないし、一つ買ってみようかなと思ったときです。
「せっかくならインストラクターにならない?」とお茶会主催者のママから誘われました。聞くと、その教育商材を販売している団体のセミナーを受講すると、インストラクターの資格がもらえて、自分で教室を開けるようになるのだそう。子育てにも生かせるし、自分のキャリアにもプラスになるという説明を受けました。
参加していた人のなかには、すでにインストラクターからさらに上の資格に挑戦している人もいて、みんな育児と仕事の両立にいきいきと働けているようにみえました。なにより、「自分の好きな人と仕事をする」という言葉が刺さりました。育児中は、子どもの風邪などで急な休みが増えがちで、正社員でもパートでもなかなか自分では調整がきかないことが多いと感じていたからです。
●教育論はすばらしいけれど、実態はネットワークビジネスでは?
しかし、気になったのはそのビジネスの構造。「友達のママたちに広めたくなったでしょ」と、言われても、私は友人からお金を取る気にはなれません。
しかもインストラクターになるための費用も、初級の講座こそ私のお小遣いから捻出できそうな金額ではありましたが、ステップアップしていくと30万円を超えるような高額なものまであるのです。インストラクターの資格を取れば、お茶会の費用はすべて自分の売り上げになるものの、それ以外の講座を自分で開催する場合には、4割を胴元の団体へ納めなければならないという仕組み。
お茶会に参加していたママの中には月商7ケタを実現させたという人や積極的にセミナーをしなくても不労収入が入ってくるようになったという人まで。それぞれの成功体験を次々に披露されました。
話を聞きながら「これって、ネットワークビジネスではないのかな」と感じたのですが、その団体の教育論がすばらしいと絶賛するママたちに、本音を言えず…。
「子どもの才能を伸ばせるのはママしかいない」とか「自己肯定感を高めてあげられるのは今」と言われてしまうと、すぐに決断したほうがいいのではないかという気持ちにさせられてしまいました。
とはいえ、「私はそういうビジネスはちょっと…」とやんわりお断りして帰ろうとしたときです。「一度お財布を開いた人は、そのあとも2回支払いをするの。お茶会さえ開いてママ友を呼べれば、月10万は稼げるようになるわ」などと具体的な売り上げを言われました。
それって、私が今回、少額とはいえお茶会代を支払ったから、あと2回はセミナーを受けるお客さんとしてカウントされてしまっているんだなと確信し、怖くなって子どもを連れて大急ぎで帰宅しました。
●SNSでは自分がコンサルを受けたことになっていた
あとでお茶会を開催していたママのSNSを見てみると、私が子育てに関するコンサルを受けたお客さんのように紹介されていました。
ただお茶会をすると言われたからおしゃべりをするつもりで出かけただけなのに。あの集合写真のときのみんなの笑顔がビジネススマイルだったのかと思うと、けっこう怖い体験でした。
●どうしてすぐにネットワークビジネスだと気がつけたのか?
じつは学生時代、大学の夏休み前に、マルチ商法やねずみ講のような団体の勧誘に生徒が引っかからないようにするため、学校側が注意喚起するために開催したセミナーに参加したことがありました。
お茶会の目的が教育商材を売ったりインストラクターの資格を取らせたりするためのビジネスだと気がついたとき、あのときのセミナーで紹介されていた怪しいビジネスの構造と似ているなと思い出せたのがよかったです。絶対に関わってはいけないと熱弁していた先生の顔が思い浮かびました。
あれ以降、例のママがSNSにアップしているお茶会やセミナーでのきらびやかな集合写真を見ると、このときの集まりを思い出し、ドキっとしてしまいます。
●本当の目的と違うと感じたら…
特定商取引法では、事業者に対して、勧誘開始前に事業者名や勧誘目的であることなどを消費者に告げるように義務づけられています。本来の目的を隠して勧誘されていると感じたら、この「特商法」の話をチラっと出してみたらすぐに帰れたという人もいました。
疑ってばかりはよくありませんが、家事や育児、介護に忙殺される主婦の悩みにつけこんで、さまざまな形で声をかけてくる怪しい人たちがいるのも事実。
お茶会や習い事と思い込んで出かけて行ってしまった先で、その集まりの目的が本来の趣旨と違うなと感じたら、すぐに逃げるのがいちばんです。