恒星から適切な距離を保って生物が生存可能な温度を確保できる宇宙領域は「ハビタブルゾーン」と呼ばれており、地球に近い環境の惑星「スーパーアース」がハビタブルゾーンで複数発見されています。新たに、東京大学やベルギーのリエージュ大学などが参加する国際的な研究チームが、太陽系から100光年離れた2つのスーパーアースを発見しました。

【研究成果】ハビタブルゾーンにあるスーパーアースを発見 - 東京大学大学院総合文化研究科

https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/news/topics/20220907160000.html

SPECULOOS discovers a potentially habitable super-Earth

https://www.news.uliege.be/cms/c_16795199/en/speculoos-discovers-a-potentially-habitable-super-earth

研究チームが発見したスーパーアースは、太陽系から100光年離れた距離にある赤色矮星「LP 890-9」の周囲を公転する2つの惑星です。NASAは太陽系外の惑星を探索するために、惑星が主星の手前を通過(トランジット)する際の主星の減光を検出する衛星「トランジット惑星探索衛星(TESS)」を運用しており、2021年7月にはTESSによって赤色矮星「LP 890-9」が約2.73日の周期で減光していることが観察され、「LP 890-9」の周囲をトランジット惑星候補「TOI-4306.01」が公転していることが公開されました。この「TOI-4306.01」が本当に惑星であるか否かを検証するために、TESSの追観測プログラム「TESS Follow-up Observing Program(TFOP)」に参加している日本の天体観測チーム「MuSCAT」とベルギーの天体観測チーム「SPECULOOS」が2021年8月から追観測を実施しました。

MuSCATチームは、マウイ島のハレアカラ観測所に設置した3色同時撮像カメラ「MuSCAT3」や、すばる望遠鏡に搭載された近赤外視線速度測定装置「IRD」を用いた観測で2021年までに「TOI-4306.01」が惑星であることを確認しました。観測に用いられた「MuSCAT3」の写真が以下。



また、以下の写真は近赤外視線速度測定装置「IRD」を写したものです。



SPECULOOSチームはTESSが最初に報告した「TOI-4306.01」のトランジット時刻とは異なる時刻も含めて「LP 890-9」を継続的に観測しました。その結果、2021年10月と11月に「TOI-4306.01」とは異なる周期の減光を観測。MuSCATチームとSPECULOOSチームが連携して新たな減光を分析した結果、「TOI-4306.01」とは異なる公転周期8.46日の惑星が存在することが判明しました。

発見された2つのスーパーアースのうち、一方の半径は地球の半径の1.32倍で、もう一方は1.37倍とのこと。東京大学は、これらのスーパーアースがガス惑星ではなく岩石惑星であると推測しています。また、2.73日や8.46日という短い公転周期の惑星がハビタブルゾーンに位置している理由について、東京大学は「LP 890-9」の表面温度が約2600度(太陽は約5500度)しかないことや、太陽の15%ほどの半径というサイズの小ささが影響していると述べています。

東京大学によると、現時点では発見されたスーパーアースの詳細な環境は不明とのこと。今後の観測によって大気組成や雲の有無などが明らかになることが期待されています。