60代、入院セットと仏事セットは日ごろから準備。高級品はあえて選ばない
年齢を重ねるにつれ、病気やケガでの入院、仏事への出席といったことも増えてくるかと思います。いざというときのために、普段から備えておきたいもの。ここでは、キッチン道具や器、生活雑貨など、デザイン・機能ともに優れた商品を見つけ出す名人・石黒智子さんの著書『60歳からのほどよい暮らし 毎日を小さく豊かにすごす34の工夫と発見』(PHP研究所)より、石黒さんがいざというときに備えているものをご紹介します。
60代、いざというときに備える。入院セットと仏事セット、エンディングノート…
40代の終わりに入院セットと仏事セットを用意したという石黒さん。周りに教えてもらいながらあれこれそろえ、衣類を減らしてあけた引き出しにしまっているそう。年に一度はテーブルに出して点検をしています。
●入院セットは周りの人のアドバイスを参考に
お産以外に入院の経験がないという石黒さんが、健康のお守りとして用意している入院セット。周りのこんなアドバイスをもとに、用意したといいます。
「病院は、集団生活の場なのだから、あなたの好きなモノトーンはダメよ。お互いの気持ちが明るくなるような気遣いをしなくてはね。寝間着はシックな中間色がいいわ」
「歳をとるとバスタオルの重さでさえ辛くなるから小さく軽いものにして、麻は乾きやすいけれど重いから綿がいいわよ」
「置き忘れや、取り違えが多いから、ハンドタオルは名前が書けるといいし、白無地は目立たないから探せないわよ。歯ブラシは少し高くても個性的な色」
ほかには、こんな意見も参考に。
・エコバッグは小さく畳めて、水や汚れを簡単にふけてきれいになる素材
・高級品はトラブルになるからダメ。だれでも買える普通の値段のもの
・病院は公共施設。自宅ではないのだから、寂しいからといって病室の壁を飾ってはいけない。たとえ孫の写真でも貼ってはいけない
・花は色や匂いを含めて好き嫌いがあるから控えめに1輪
80代の方からは「家族以外の見舞いは迷惑なものです」と教えられたそうです。
●仏事用のバッグと靴は、普段から使っている黒の牛革のもの
仏事セットも、結婚したときに実家の母が持たせてくれた水晶の数珠、シルクのスカーフとカシミアの手袋、ワイルドフラワー柄ブラックとグレーのバンダナ、喪中扇とシンプルに。
バッグと靴は、普段から使っている黒の牛革のもの。石黒さんが結婚した40年前には、革製品はマナー違反だと年配者からアドバイスをもらうこともあったといいます。
「昔はバッグも靴も手袋も布製でしたが、時代が変わって今はそんなことを言う人はいません。また、これ見よがしの大粒真珠ネックレスや高級腕時計を見せびらかす人は皆無となりました。女性の社会進出による発言が、仏事においても周りに気配りのできる時代をつくってきたと感じています。仏事においてはみんなが同じであるように控えめに、そして高齢者が手本になるような心配りをしたいものです」
●そろそろエンディングノートを用意する
石黒さんは、遺言は紙に自筆で残したいという気持ちから、仕事の打ち合わせに持っていた牛革表紙のノートをエンディングノートにしています。
「まずはわが家のレシピを残したいと思いました。でも、時代で道具が違うのだからつくり方が違う。食材も調味料も違ってくる。料理は持っている道具でつくれるものを自分のやり方でつくればいいと思うようになって止めました。私自身が実家の味を懐かしんでつくる料理のレシピを受け継いでいません。こんな味だった、こんな盛りつけだったという記憶を頼りにつくります」
また、庭の草木を季節ごとに書いて残そうとしたことも。
「書き始めたら200種以上にもなって、枯れる木もあれば、根元から伐採する木もあり、ご近所から分けていただくことも、風に飛んでやってくる種で芽が出る花もあるのだからきりがないと止めました」
●エンディングノートに書き残すのはひとつだけ
「形見分けは身内のほか、機会あるごとに息子の友人達が遠慮なく貰ってくれるので、そんなには残らないはず」と話す石黒さん。保険のことなどは、ファイルにしてあるので問題ありません。
結局、用意したエンディングノートに書き残すことはひとつだけに。
「遺言
私が死んだら
通夜も葬儀もせず棺にはなにも入れないでください。
花も本もいらない。
骨は火葬場で廃棄して持ち帰らないでください。
遺言ですと言えば処分してくれます。
だれにも知らせないでください。
留守電・パソコンのメールにも返信不要です。
少しは迷惑をかけることになるけれど
死んだのだから許してください。
さようなら」
『60歳からのほどよい暮らし 毎日を小さく豊かにすごす34の工夫と発見』(PHP研究所)では、石黒さんの暮らしを豊かにするアイデアをたっぷりと紹介しています。ぜひチェックしてみてくださいね。