60代、これからは小さく暮らす。キッチンで捨てたもの・残したもの
暮らしも年齢に合わせてアップデートしていきたいもの。ここでは、キッチン道具や器、生活雑貨など、デザイン・機能ともに優れた商品を見つけ出す名人・石黒智子さんの著書『60歳からのほどよい暮らし 毎日を小さく豊かにすごす34の工夫と発見』(PHP研究所)より、年齢を重ねても使いやすいキッチンの工夫をご紹介します。
60代、夫婦二人の暮らしを楽しむキッチンの工夫
39年前に、現在の家を建てたという石黒さん。
「当時のシステムキッチンは[主婦の城][女の城]と位置づけられていて、男子厨房に入らず、と今では考えられないことを男はおろか、女も当たり前だと発言していました。夫婦が同時に立つということは想定外でした」
そのため、家族はもちろん来客や子どもの友達、だれもが料理を楽しめるキッチンは自分でつくるしかなかったそう。スケッチを自分で描いてシステムキッチンをオーダーし、コンロやシンクの位置など、快適さにこだわりました。
●キッチンアイテムは、とにかく見えるように
そんな石黒さんが65歳を過ぎてから心がけているのは、「つるせるものはつるす。磁石にくっつくものはくっつける」こと。とにかく、見えるようにすることが大切だといいます。
たとえば、古くて固くなったステンレスピンチはキッチン収納にピッタリのデザイン。しっかりつかんで落ちません。
ビーラーやマッシュルームブラシなど、磁石にくっつくものはくっつけるのが基本です。
「重いと感じた台所道具は、迷うことなくすぐに捨てます。新しく買い替えてからなどと言っていたら、ぐずぐず使い続けることになりますからね。キッチンは使うみんなで育てるもの。プロの言う原則や常識よりみんなにとっての快適さと遊び心も兼ね備えたいと思っています」
●道具を小さくすると、キッチンがゆったり広く感じる
息子が独立し、夫婦二人暮らしになったことで使う道具も小さくなったという石黒さん。
今は、鍋は14cmと18cm、アルミフライパンは20cmと25cm。鉄フライパンは22cmのものを使っています。
「道具が小さくなったことでキッチンがゆったり広く感じるようになり、リビングとしても楽しむように進化させました。調理台として使っていたテーブルを庭が見えるように窓辺に寄せ、イスを一脚置きました。ひとりの朝食にも丁度いいサイズです」
庭で摘んだ花を飾り、秋には増えた多肉植物、冬にはスイセンやムスカリなど球根の水栽培を並べて楽しんでいます。
「読み終えた新聞や雑誌は片づけるけれど書籍はしばらく置いたままに、整理整頓はそこそこになりましたが二人暮らし、目障りになるほどには散らかりません。これから70代、80代になっても工夫いっぱいの楽しいキッチンをつくり続けたいです」
●食器はどんどん軽く、小さく
食器も、石黒さんが年齢を重ねて見直したもののひとつです。持ったときの“重さ”に、歳をとったことを実感させられたそう。
「取り皿として出番の多かったおでん皿が重いと感じて量ってみたら224g。ほかに取り皿として使えそうな15cm以下を全部出して量ってみたら、5客セットでも重さが随分違う。若いころには気にならなかったことが、今では150gと160gではぜんぜん違うと感じます」
5客の中から軽い2客を上に置くことで、出し入れがぐっとラクに。丼はひと回り小さな煮物椀176gに、陶器の呑水は漆椀113gに替えました。
「洋食器も1枚1枚重さが違うけれど、食事で手に持つことがないから気にならないと思っていたら、洗うとき、水切りカゴに移すとき、軽いほうがラクだと実感します」
●食器は名称にこだわらずに使う
食事の量が減って、選ぶ器も小さくなってきたと話す石黒さん。それまで洋食器と和食器に分けて収納していた小皿を引き出しのいちばん上に2枚ずつ重ねて置くようにしました。
「ディナー用スプーンはもう持てません。カレーもハッシュドビーフもデザートスプーンを用います。結婚で買った飯茶碗194gをずっと使っているけれど、炊き込みご飯を盛ると重いので漆器椀113gに。食器は名称にこだわらずに使うようになりました」
●欠けた小皿は、箸置きとカトラリーレストにリメイク
欠けて使えないけれど、どうしても捨てられない小皿は、箸置きとカトラリーレストに。
「紙に包んでビニール袋に入れ、1mの高さから煉瓦の上に落とし、使えそうな欠片を選びます。ボウルに入れた水の中で擦り合わせてから、ステンレス鍋やヤカン磨きに常備してあるスポンジ研磨材(サンドペーパー)で磨くこと1個につき3時間。久しぶりに夏休みの工作の楽しさを味わえました」
『60歳からのほどよい暮らし 毎日を小さく豊かにすごす34の工夫と発見』(PHP研究所)では、石黒さんの暮らしを豊かにするアイデアをたっぷりと紹介しています。ぜひチェックしてみてくださいね。