ゲームやマンガ三昧でも東大に合格する子の共通点。「最小コスト」の勉強法とは?
東大生と聞くと、勉強にとことん時間を費やしているのだろう…多くの人はそんなイメージかもしれません。「じつはそんなことないんです」と教えてくれたのは、『東大式節約勉強法』(扶桑社刊)の布施川天馬さん。ご自身が世帯年収300万円台の家庭に生まれ、最短ルート、最小コストの勉強法で東大合格を果たしました。布施川さんが知る、本当の東大生の実態を教えてもらいました。
東大に行く人の共通点。大事なのは地頭ではなく思考の習慣だった
みなさんは、東大生ってどれくらい遊んでいると思いますか? 東大に行くくらいだから、きっとゲームなんて触れずに過ごしているんだろう…と思われた方も、もしかするといらっしゃるのではないでしょうか。
じつはそんなことはありません! むしろ、東大生も普通の大学生と同じくゲームは大好きですし、オタク仲間だってたくさんいます。中には、稼いだお金のほぼすべてを“オタ活”(オタク活動、推しのイベントに参加したりグッズを買ったりする)ことにつぎ込んでしまうような子も…。
もちろん、地頭がよかった可能性もあります。しかし、それ以上に、オタク東大生にはある共通する特徴があるのではないかと考えています。だからこそ僕も、ゲームやマンガ三昧の日々を過ごしながら、東大に合格するほどの力を身につけることができたのでした。
●東大に合格をする人たちの共通点
その特徴とは、「考えること」です。
「考えること」は非常に重要です。どれだけの知識があろうとも、その知識を自由に操ることができなくては宝の持ち腐れ。特に、インターネットを自由に扱える現代では、知識をどれほど持っているかよりも、様々な道具を使って得られる知識をどれほどうまく活用することができるか、のほうが重要なのかもしれません。
「思考する力」は以前から大学入試界のトレンドでした。例えば、それこそ東大入試では「円周率が3.05より大きいことを証明しなさい」という問題が出題されましたが、僕はこの問題に「円周率=3.14って覚えてる人も多いけど、なんでか本当にわかってる?」というメッセージが込められていたのだと思っています。単純に知識として覚えているだけではだめで、なぜそうなるのか、どうやって成り立っているのかまで理解していないと解けない、そんな問題がどんどん増えてきているのです。
それから、最近の学校教育でも思考力重視の動きを見ることができます。「アクティブ・ラーニング」といって、授業でありながら生徒同士や、時には先生までを巻き込みながら相互に発言し、学びあうことを目的とした試みが行われています。要するに、情報を教えるだけ、受け取るだけになりがちだった従来の方法を改めて、もっと自分の力で考える習慣をつけるようにしよう、というわけです。
このように、「思考力」というテーマは近年の大きなトレンドです。もはや、情報の詰め込みではなく、詰め込んだ情報をどのように扱うのか、というステージにまで来てしまっているのです。
●ゲームで「思考力」が身につく?
だからこそ、親御さんがいま考えるべきことは「どんなにいい塾に入れるのか」「どれくらい勉強時間を確保するか」ではありません。「どうやって考える習慣をわが子につけてもらうのか」ということが最優先でしょう。
考える力さえあれば、知らないことでも知っていることから導ける可能性がある。最初は少しだけ不安に思えるかもしれませんが、思考力がついた子どもは、あっという間に伸びていきます。
そして、その考える習慣づけにぴったりなツールが「ゲーム」だと僕は考えています。なぜならば、現実では体験できないような様々な状況や情景を、実際の当事者としてその身に感じることができるからです。
どんなゲームでも考えるためのとっかかりは存在します。なぜならば、ゲームとはきらびやかな外見を取り払ってしまえば、「どのようにしてタスクを完了してしまうか」というを試すもの。要するに、仕事や勉強と同じことをやっているからです。その外見やプロセスが楽しみに満ちているから「ゲームはあくまでも遊びだ」と思いがちですが、「目標に向かって目の前の課題をこなし、成長していく」という流れは、大人も日々やっていることと何ら変わりがありません。
だからこそ、ゲームを通して思考力を磨くことができるのです。「そんな屁理屈を言って、ゲームはゲームじゃないか!」と思われるかもしれません。確かに、何も考えずにプレイしていると、ただのゲームにすぎなくなってしまいます。ですが、その遊び方を工夫するだけで大きく変わってくるのです。
●すべてのゲームには思考力を鍛える「タスク」がある
例えば、僕は有名なRPGゲームの『ドラゴンクエスト』シリーズをプレイするときには常に「次に○○をして、そうしたら××の町へ行けるようになって…」と、そのあとの動きや筋書きを想定しながら動くようにしています。
また、戦闘になるようなゲームでは、常に次の一手で何を打つべきか、最適解は何かを模索するようにしています。例えば、「いま自分の体力は残り少ないが、敵の体力も相当少なくなっているはず…。とはいえ、ここで自分がやられるとまずいから、いったんここは防御に回って、次の隙ができたところで一気に畳みかけてしまおう」というような具合です。
パズルゲームにしても、音楽ゲームにしても、どんなゲームでもタスクが存在しないゲームはありません。「魔王を倒す」「町を発展させる」「このステージをクリアする」などなど、すべてのゲームには完了すべきタスクがあります。
もちろん、これらのタスクを漠然とこなすだけでは、全く能力は上がりません。これはきっと仕事でも同じだとは思いますが、言われたことを何も考えずにハイハイとやっているだけでは成長しないように、「何も考えずにただ出た指示に従うだけ」というようなプレイの方法では「たかがゲーム」といわれてしまっても仕方ないでしょう。
しかし、そこに少しでも思考するプロセスが挟まった瞬間、そのゲームは、ゲームであると同時に「思考力トレーニング装置」に早変わりします。
「この町に寄るのは二度手間になっちゃうから後回しにしよう」「この順番だと相手のターンが先に来るから、それならとりあえず後攻で有利そうな選択をしよう」というように、考えるポイントを見逃しさえしなければ、ゲーム三昧でも東京大学に合格するような、優れた思考力を育てることができるようになるわけです。
思考力さえ育てることができれば、あとは簡単です。知識量で負けていても、それらを総動員して工夫すれば、東大程度なら合格できるようになります。
●思考力を上げることに全力投球し、本当に東大に合格
例えば、僕は高校三年生までずっとゲーム三昧な毎日で、ロクに勉強していませんでした。さらに、家に資金的な余裕もなく、お金も時間もない状況から節約しながら東大を受験することになってしまいました。
普通なら、僕のような受験生はあれこれと参考書を買い込んで、一つでも多く知識を身につけようとしたでしょう。しかし、僕は真逆の発想で勉強をコントロールしました。
たくさんの知識を身につけるのではなく、少ない知識であらゆる盤面に対応できるように、とにかく思考力を上げることに全力投球するようにしたのです。たとえ知識が少なかったとしても、ひとつの知識や記述から10の情報を引き出すことができれば、トータルではプラスになるからです。
そして、このような勉強法を重ねた結果、僕はなんとか東京大学に入学することができました。個人的に、僕の東大合格は、ゲームによる思考力アップなくしては語れないとすら思っています。
親御さんからできる働きかけとしては、一緒にプレイしてみるとか、プレイの様子を見てみるなどが有効かもしれません。わが子がどうやってゲームと向き合っているのかを知るには、まずは親御さんから歩み寄ってあげるしかありません。場合によっては「どうして今のターンで攻撃しなかったの?」「なんでさっきの町で買い物しなかったの?」などなど、素朴な疑問をぶつけてあげるのもいいかもしれないですね。
なぜなら、子どもたちの脳内にある考えを聞き出すことができるからです。何か操作をするときにはもちろん何らかの思惑があってのことなのですが、「なぜその操作をしたのか」を具体的に言葉で表すのは、意外なほど思考力と国語力を使います。こうすることで、親御さんの方から能動的に子どもの思考力を伸ばす手伝いをすることができるのです。
もちろん、大人の目から見れば「ゲームなんて…」と思えてしまうかもしれません。ですが、それは子どもたちの目線から見た勉強も同じこと。「将来役に立つから」と言われても、わけのわからない、興味も持てないようなものを押しつけられるなんて、正直迷惑なだけですよね。ですから、ここはまだまだ人生経験の浅い後輩くんたちのためにも、一度先輩の方から歩み寄ってあげるのも手だと思います。