初のインターハイ出場を果たした修猷館の姥琳子【写真:宮内宏哉】

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インターハイ柔道、修猷館から出場した姥琳子の3年間

 柔道の全国高校総体(インターハイ)が6日に開幕し、5日間にわたって熱戦が繰り広げられている。「THE ANSWER」は文武両道に励み、全国の大舞台に出場した選手たちをピックアップ。9日の個人戦・女子57キロ級には、福岡有数の進学校として知られる修猷館(しゅうゆうかん)の姥琳子(うば・りんこ、3年)が出場。中学3年で全国制覇し、今年3月の全国高校選手権でも優勝した実力者だ。修猷館だからこそ成長できた理由、文武両道を貫く秘訣などを教えてくれた。(取材・文=THE ANSWER編集部・宮内 宏哉)

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 初のインターハイは、3回戦で優勢負け。目指していた優勝に届かず、畳を去った後は溢れる涙を堪えきれなかった。それでも、姥に悔いはない。

「修猷館でなければ、私は全国にも行けなかったと思います」

 父が指導者の柔道一家に生まれた。4歳から競技を始めると、福岡・篠栗小5年の時に全国大会40キロ級で3位に。篠栗中3年では57キロ級で全国制覇を成し遂げた。県内外の強豪校からも誘いの声がかかったが、姥が選んだのは福岡の公立校としてはNo.1の進学校とされる修猷館だった。

 1784年に福岡藩の藩校として開館された、創立238年の歴史を誇る伝統校。偏差値は70を超えるともされており、元内閣総理大臣の廣田弘毅を始め、多くの卒業生が政界、経済界など様々な分野で活躍してきた。

 姥は元々勉強も好きで、中学の通知表では美術以外全て「5」と評価されていた。「勉強もできて、柔道もできる」高校を求めていたが、修猷館を見学して一目惚れした。

「勉強と両立できるし、部活の雰囲気や練習方法が自分に合っていると感じました。長くダラダラ練習するのではなく短く終わるところや、初心者でも頑張っている人もいて、いろんな人から刺激を受けられる。そういうのが好きだったんです」

 今年30人以上いた部員のうち、約7割は初心者として柔道部に入っている。練習時間は2時間半ほど。強豪校とは環境が違うが、ここだからこそ成長できたと確信している。

 もし柔道強豪校に入学すれば、埋もれてしまって自分らしさを失ってしまうような気がしていた。かといって、全員の実力が低ければ成長できない。その点、修猷館は初心者も多いが実力者もおり、絶妙なバランスを保っていた。さらに初心者に教えることで、姥自身にもメリットがあったという。

「自分自身の技をもう一度見直したり、考えたりできるなって。自分が今、どれだけ分かっているかを知ることができます」

朝は5時45分に起床、電車通学を復習の時間に

 姥の1日は朝5時45分の早起きから始まる。1時間弱の電車通学で英単語や歴史科目を復習し、登校後は柔道の自主練習か勉強を約30分間行う。放課後、部活動の後は30分ほど自主練習をこなして、20時頃に帰宅する日々を送った。

 修猷館には推薦で「高望みして」入学。直後は一般入試組のレベルの高さに戸惑い、「やらなければ置いて行かれる」と落ち込んだ。それでも周囲の友達に勉強を教わり、引き上げてもらった。

 なかなか継続できない文武両道の道。姥にとっては、一点集中するよりもやりやすかった。「柔道のことを嫌いになったり、逆に勉強のことを嫌いになったりする時期もあるので、そういう面では片方が息抜きのような感じになる」。継続の秘訣は、双方のバランスを上手く保つことだ。

 今年3月の全国高校選手権57キロ級で優勝し、中学に続いて高校日本一も経験した。ただ、昨年のインターハイ予選では初戦敗退。悔しさを引きずったが、思い切ってルーティンを変えたことが吉と出た。

「修猷館の練習は短いから、他校に勝てるように自主練を頑張っていましたが、そうじゃなくて、畳の上での練習をもっと大事にしようと考えました」。試合前は走り込みや筋トレの量を決めていたが、コンディションに合わせてメニューを変更。初のインターハイ出場につなげた。

 高校卒業後も柔道は継続。「将来はスポーツ関係の仕事に就きたい。柔道は、大学でも日本一を目指します」。目標をことごとく達成してきた姥なら、十分可能だと感じさせられた。

(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)