狭い日本でも各都道府県で文化の違いがあるように、道路事情や地域住民の気質などが影響することで運転の習慣にも違いが生まれます。

それは道路交通法違反というかたちで現れ、とくに違反が著しい地域では特別な名前が付けられて危険視されています。

夏休みに遠方に出かけるなら、よけいな交通トラブルに巻き込まれないように各地域のローカル交通マナーを予習してきましょう。

愛知県:名古屋走り

悪質なローカル交通マナーとしてもっとも有名な「名古屋走り」は、「信号無視」「ノーウインカー」「速度超過」「車線をまたいだ走行」などの行為を指すようです。

さらに、「黄色まだまだ、赤勝負」とは名古屋走りの信号無視を言い表した言葉。とくに名古屋では、ウインカーを出さずに行う車線変更が目立ちます。

長野県:松本走り

「松本走り」の特徴は強引な右折です。対向直進車が来ているのにも関わらず右折、対向左折車の減速の隙をついて右折、信号が青に変わる前に右折、黄色から赤信号に変わっても右折…と、あらゆる状況下で右折する車も。

対向車線に右折待ちの車がいたら要注意です。場合によってはウインカーを出さずに交差点に進入してくることもあります。

北海道:なまら車間泥棒

「なまら」は「すごく」「とても」を意味する北海道の方言であり、「なまら車間泥棒」は交差点で右折待ちの車が、直進車のわずかな車間距離を盗んで非常に強引な右折をする行為です。

また、ウインカーの使用頻度が少ないことでも有名な北海道では、右左折時や車線変更時にはウィンカーが使用されないと思った方がよいでしょう。これには「蝦夷(えぞ)ノーウィンカー」の名称が付けられており、なまら車間泥棒と蝦夷ノーウィンカーの組み合わせは非常に危険です。

茨城県:茨城ダッシュ

茨城ダッシュとは、右折待ちの車が青信号になった瞬間に、鋭い加速で対向直進車よりも早く右折をする行為です。他の地域では「早曲がり」とも呼ばれます。

右折待ち時は、後からクラクションで急かされることも珍しくなく、場合によってはなかなか右折しない車を追い越して強引に右折する車や、2台同時の茨城ダッシュが行われるケースもあります。

直進車は発進タイミングを遅らせて強引な右折車を回避するとともに、右折車線の2台目の動きにも注意しましょう。歩行者も青信号に従って横断歩道をすぐに渡りはじめると跳ねられてしまう危険があります。

山梨県:山梨ルール

「山梨ルール」は「減速なしでの右折」「追越し禁止片側1車線道路でも追い越し」「赤信号に変わっても右折」「常時20~30kmの速度超過」などの違反行為の総称であり、あらゆるシーンで気をつける必要があります。

愛媛県:伊予の早曲がり

愛媛県での青信号になった瞬間の右折ダッシュは、愛媛県の旧名を使った「伊予の早曲がり」の名前が付けられています。赤信号のうちに少しづつ交差点に侵入しダッシュのリードを稼ぐ車もいるため、前方の状況把握とともに、対向右折車の予備動作を見逃さないことも大切です。

大阪府:「青は進め、黄色は進め、赤は気をつけて進め」

「青は進め、黄色は進め、赤は気をつけて進め」とは、大阪をはじめとする関西人に広く浸透する信号機に対する認識です。信号が黄色から赤に変わっても車が交差点に進入してくるうえ、横断歩道を渡る歩行者も同様の行動をします。

大阪では、信号待ち後の直進時は右折対向車への注意に加え、左折時には歩行者にも十分な注意を払う必要があります。

兵庫県:播磨道交法

播磨地方とは姫路市を中心とした兵庫県南西部の一帯を指す地名であり、「播磨道交法」とは播磨地方の運転マナーの悪さを地元新聞社の神戸新聞が皮肉を込めて法令風の文体にまとめて綴ったものです。その内容はおおむね以下のようになっています。

第一章・交差点

 交差点に先に進入した車が優先。右折時に対向車が直進して来ても待つべからず  右折待ちでは後続車に警笛を鳴らされるため、対向車が左折なら一緒に曲がるべし  自転車および歩行者は、車が通らない限り赤信号を青信号とみなしてよし  右左折時、横断歩道に人がいてもスペースがあれば通ってよし  右折は、右折信号が消えて赤になる瀬戸際に行うべし

第二章・歩道・車線変更

 信号のない横断歩道は車が優先  車線変更は、スペースさえあれば割り込みを認める  方向指示器は曲がると同時に出す

第三章・附則

 バスが停留所から車線に戻るときは、車が通過するのを待たなくてはならない  前に人がいたら、警笛鳴らせ

岡山県:岡山ノーウィンカー

岡山はウインカーを出さないことでもっとも有名な県であり、出したとしても右左折および車線変更の直前。それも1回点灯させる程度に留めるケースがほとんどです。

そのため近年はウィンカーの使用を促すために、道路上に緑色のペイントで大きく「合図」と書かれた道が増えています。

沖縄県:二輪車は原則第一通行帯を走行

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沖縄では、二輪車は排気量に関わらず左車線を走行します。これは単なる習慣ではなく、公安委員会によって義務付けられた公の交通ルールです。

しかし二輪車は、交差点が近づくと道路左端から右折車線まで一気に車線変更をすることがあるうえ、ウインカーを出さないドライバーも多いため、観光客が驚くケースが多発しています。

もちろん二輪車で走行する場合は、標識がある道路では第一通行帯走行を厳守しなければなりません。これに違反した場合は、通行区分違反として違反点1点に加え、二輪車6,000円・原付5,000円の反則金が科せられます。

知らない地域を走るなら防衛運転とドライブレコーダーが必須!

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もちろん、紹介した地域のすべてのドライバーがこのような運転をしているわけではありません。またこれらの行為は他の都道府県でもみられます。ただし、運転習慣に名前が付けられる各地域は実際に危険運転が多く見られ、事故の発生割合も多くなっています。

見知らぬ土地を走行する場合は、地域によって運転の癖や傾向があることを覚えておきましょう。

ローカル交通マナー違反のほとんどは急いでいることに起因し、いずれの地域でも共通するのは「信号無視ともいえる早曲がりと遅曲がり」「ウインカーの合図不履行」「右折・車線変更時の強引な割り込み」「速度超過」の4つの行為です。

これらは違反行為ではあるものの、それなりの秩序があるため一部の行為は事前に発生の予測が可能です。

安全速度や車間距離維持などの基本的な安全運転に加え「青信号での発進前には、灯火だけでなく対向車の動きを確認する」「隣の車線を走る車とは極力並ばない」「並走する車の死角に入らないようにする」などの防衛運転に努めて交通トラブルを回避しましょう。

また、事故に備えてドライブレコーダーを装備しておくことも大切です。