「そろそろ娘が初経を迎えそう」――。年頃の女の子を育てている親にとって、わが子の初めての生理との向き合い方には気を使うもの。大切なことをしっかり伝えたいけど、かしこまりすぎたくない……そんなふうに悩む人も少なくないのではないでしょうか。

子どもと大人の中間にいる女の子たちに、生理用品に親しみをもってもらいたい

アイデア文具で知られるメーカー・サンスター文具が、初経準備セット「First Luna Gift」を企画。「これが生理グッズ?」と思わず驚いてしまうかわいいデザインと、実用性が両立していると、SNSなどで話題になっています。

初経準備セットの中身<写真>

社内部署の垣根を越えて集まった担当チームに、プロジェクト始動の経緯や、開発までのお話を聞きました。

●立ち上げのきっかけは社内のアイデアコンテスト

――現在、発売企画中の初経をサポートする「First Luna Gift」は、一箱で、初めての生理に必要なものがすべてそろう画期的な商品です。中にどういうものが入っているのかを教えてください。

企画担当の今鉾円さん(以下・今鉾) 「サニタリーショーツ、ハンカチ型ケース、昼用と夜用のナプキン、お子さんと保護者の方、それぞれの生理についてのガイドブック、これらを入れてお子さんに渡せる専用のギフトボックスが入ったセットです」

――「文具メーカーからフェムケア製品の企画」というのが、とても画期的ですね。

今鉾「ありがとうございます。きっかけは、社内で募集していたアイデアコンテストです。私自身がPMSに悩まされがちだったこともあり、生理にまつわるグッズを、いつかつくりたいと思っていました。でも『文具メーカーで生理用品の企画は難しいかな』と思っていたところ、『うちはポーチやペンケースをつくっている会社なのだから、その延長線で生理用ポーチをつくれるよね』という意見があって。それならと企画を出したところ、コンテストで受賞&プロジェクト発足の流れになりました」

●企画してみてわかった「文具と生理用品の親和性の高さ」

――従来の生理用品とは一味違う、ファンシーなデザインも魅力的です。

今鉾「そのあたりの塩梅は、文具メーカーの強みかもしれません。セットを使ってくださるのは、小学校5年生〜中学2年生ぐらいの女の子で、文具に親しみがあります。そこで、いつも使っているグッズの延長線上にある初経準備セット、そしてその世代に訴求効果がある、かわいいテイストを意識しました」

デザイン担当の兼あかねさん(以下・兼)「自分の思春期を振り返ると、家族で出かける日に生理が始まって、父や弟など男性の家族には言いだしづらかったり、母からせっかく買ってもらった生理用ポーチを上手に使いこなせなかったりと、私も悩みはありました。そこで『First Luna Gift』では、とにかくかわいらしく、そして子どもと大人の中間にいる女の子たちに、親しみを持っていただけるデザインを心がけました。今日、インタビューに同席している『るなむー』のイラストも、パッケージや、セットの説明動画の中に散りばめたりしています」

今鉾「文具の流行はファッションから少し遅れてやってくるのですが、ここ何年かは韓流テイストやくすみ色なども取り入れたポップなものが人気となっていて。今はパステルカラーが人気。そんな時代のテイストも盛り込んだディレクションをしています」

兼「“平成レトロ”というような、ややノスタルジー感のある雰囲気も意識しましたね」

――興味深いのが、4種類の色とデザインから選べる、オリジナルデザインのハンカチ型ケースです。

兼「同じ小5〜中2の女の子といっても、皆さん、好みはバラバラだと思うんです。まだ子どもっぽいものを持ちたいという子向けのピンク系・ブルー系から、少し大人っぽいデザインが気になる子のためのアイボリー系・パープル系まで、変化をつけました。ハンカチ型のケースは、従来の生理用ポーチみたいな仰々しさがなく、10代の女の子たちのポケットにさっと入れて取り出せるということで好評です。肌触りのよさや収納力の高さにもこだわりました」

――セットの中に一緒に入っている、ショーツや生理用品についても教えてください。

 

今鉾「どちらも安全や衛生面が大切なグッズになるので、ショーツはオリジナルデザインを考えたうえで、専門の下着メーカーさんにつくっていただきました。黒やネイビーといった汚れが目立たない色も考えたのですが、これも“憂鬱な日もかわいらしく”をモットーにパステル系を採用しました。生理用品はユニ・チャームさんにご協力をいただいています。大量に送ってくださったサンプルの中から、『ハンカチ型のケースに入る薄くて軽い生理用品は?』と、選び抜いた結果、センターイン コンパクトシリーズがかさ張らず、使用時の音も気にならないね、という話になりました。小中学生が持ち歩くのにぴったりの生理用ナプキンだと思います」

――まさに初経を迎える小中学生の不安や憂鬱をケアし、気持ちを明るくしてくれるセットです。プレゼントをする親世代からは、どんな感想が挙がっているのでしょうか?

今鉾「社内でもお子さんの初経を控えている者から、すでに経験済みの者まで、広く意見を求めたんです。そこで浮かび上がってきたのが、娘の初経に関しては親も戸惑っている現実でした。生理用品、ショーツ、収納グッズ、初経と性教育にまつわる本……。どれもドラッグストアやスーパー、書店などでバラバラに売られていて、なにをどうそろえたらいいのかわからない、という悩みを抱える方が多かったんですね。ママ友同士でも、娘の初経やフェムケアに関する情報交換までは、なかなか至らないみたいで。そういう意味では、親世代からも『かわいいデザインと、必要なものがそろったセットがあるとうれしい』という意見をもらいました」

●サンスタールナは、生理のお悩み解決的なグッズをつくるブランドにしたい

――現在はクラウドファンディングでの発売段階で、店頭での発売はこれからになります。

今鉾「弊社は文具メーカーなので、生理用品の販売はすぐにスタートをきるのが難しい状況にありまして。ひとまずMakuakeというクラウドファンディングで市場の反応を確認しながら、ベストな発売方法を模索しています。クラウドファンディングに参加したことで、デザインはもちろん、プロジェクトのコンセプトに賛同した大人の女性が購入してくださったり、男親からも応援コメントを頂戴できたのが嬉しかったですね」

――今回の企画は、女性の心と体のための新しい試みだと思いますが、今後はどのような展開を考えていますか?

兼「もしシリーズ化されるブランドになれば、サンスタールナの持つファンシー性を活かしつつ、少しシンプルなものをつくったりと、幅のあるデザインにも挑戦したいです」

今鉾「アイデア文具メーカーの強みを活かし、実用性の高い、生理のお悩みグッズを展開していければいいなと。これはティーンの子に限ったことではありませんが、人の家へ行った時や、出先などでナプキンを捨てづらい場面も多いですよね。そんなときに、使用済みの生理用品を一時的に収納できる、防臭対策のあるポーチなどもあれば便利なのではと思っています」

昨今、大人向けの生理用品やフェムケアグッズはバリエーションが増えつつありますが、繊細な年齢にあたる女の子たちに寄り添える商品は、まだ少ないのがリアルなところ。母娘で満足できる初経や生理、性教育への取り組みのひとつとして、ぜひ今後の展開を期待したいところです。