by NASA's James Webb Space Telescope

2021年12月に打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、各種の調整を終えて、2022年7月に初のカラー写真を撮影してから約2週間。送られてくる膨大な量のデータと格闘する科学者たちが、数々の新発見に出会っていることが報じられています。

Two Weeks In, the Webb Space Telescope Is Reshaping Astronomy | Quanta Magazine

https://www.quantamagazine.org/two-weeks-in-the-webb-space-telescope-is-reshaping-astronomy-20220725/

Two weeks in, the Webb Space Telescope is reshaping astronomy | Hacker News

https://news.ycombinator.com/item?id=32224725

・最古級の銀河の新発見

これまでの観測から、宇宙は138億年前に誕生したと考えられています。その中で、我々が知る最古の銀河は2022年4月に発見された、ビッグバンから3億3000万年後に誕生した「HD1」でした。今回、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのローハン・ナイドゥ氏率いる研究チームと、マルコ・カステラーノ氏率いるローマ天文台の研究チームはそれぞれ別々にジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測データを調査し、特に遠方にある2つの銀河を特定しました。

1つは、以前ハッブル宇宙望遠鏡で観測した最古級の銀河と関連する、ビッグバンから4億年後の銀河。もう1つは、ビッグバンから3億年後に誕生したとみられる「GLASS-Z13」です。

以下は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡に搭載された近赤外線カメラによる写真を拡大したものだとのこと。



GLASS-Z13の発見により「既知で最古の銀河」の記録はわずか3カ月で塗り替えられたことになりますが、科学ニュースサイト・Quanta MagazineはGLASS-Z13の記録についても「長く続くとは思えません」とコメントしています。なお、宇宙が膨張しているため、地球とGLASS-Z13の間の距離は330億光年に離れています。



このほかに、テキサス大学オースティン校の天文学者で宇宙進化早期リリース科学調査(CEERS)のメンバーであるレベッカ・ラーソン氏は、ビッグバンから5億年後に誕生した銀河を発見したとのこと。ただし、ラーソン氏らはまだ正式な発表は行っていません。

・銀河の構造

2400万光年離れたところにある銀河「NGC7496」は、ハッブル宇宙望遠鏡ではちりやガスでうっすらとかすんだ姿として観測されていました。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡での観測では新たに、そのガスの内側の姿が明らかになったことを、アメリカ国立科学財団・NOIRLabのジャニス・リー氏が報告しています。

公開された画像を並べて比較するとこんな感じ。左がジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、右がハッブル宇宙望遠鏡。



「夜空の保護」をテーマに照明配置計画の策定などを行っているコンサルティング会社・Dark SkyConsultingの天文学者であるジョン・バレンティン氏は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影したこと座の環状星雲(NGC6720)の写真において、銀河中央部の膨らみの構造を研究できる、真横から見た円盤銀河が映っていることを発見しました。この銀河は、以前は環状星雲の一部だと誤認されていたもので、バレンティン氏は「ウェッブが撮影するほとんどすべての画像は、背景までいじくり回す価値があります」と述べたとのことです。