8日に夏の高校野球栃木大会が開幕します。今年は、新型コロナの影響で行われなかった入場行進、そして観客を入れての開催が3年ぶりに行われ、球児の思いは感慨深いものがあると思います。予期せぬ出来事を乗り越えた球児の思いを特集で取り上げます。栃木工業高校です。コロナに加えて3年前の自然災害から立ち上がり晴れの舞台を迎えました。

野球ができる幸せ。選手の誰もが持つ思いですが、栃木工業高校はこの2年間のコロナに加えて3年前のあの被害を乗り越えて今年の舞台に立ちます。

2019年10月、東日本台風。栃木市を流れる永野川が氾濫し、川の近くにあった校舎はおよそ2メートル浸水。実習棟にも大量の土砂が流れ込んで旋盤などの機械が使えなくなる大きな被害が出ました。授業は2週間後に再開されましたが、実習棟は使えず県内のほかの県立高校に出向いて実習を行っていました。

あれから3年。機械をすべて入れ替え、基礎を2メートルほどかさ上げした総合実習棟が完成し、将来の「ものづくり」を支える人材を目指して生徒たちが実習に励んでいます。

台風被害の次の年に入学したのが今の3年生。入学当初はグラウンドの整備も完全ではなく、市内のグラウンドで練習を行っていました。

早乙女亮生主将:「日向野先生に野球を教わりたかったから当時はできる限りのことをした」

3年生はさらに入学当初からコロナにほんろうされました。活動はたびたびストップ。新チームが発足して迎えた今年始めもまん延防止措置の影響で1月から3月にかけてチーム練習ができませんでした。

日向野久男監督:「試合で出た課題を練習する。異例のチームづくり」

それでも、春の大会。強豪の私立を撃破してベスト4に進出。3位決定戦、延長戦で力尽き、関東大会出場はならなかったものの最後の夏、ひたすら前を向いて練習に取り組んでいました。

早乙女主将:「春はつめの甘さが出たので勝ち切るチームになろうと練習してきた」

チームはエースの赤羽根投手を中心に守りから攻撃へつなぎます。

赤羽根投手は去年10月にサイドスローに転向。多彩な変化球でストライクを取りストレートでインコースをつく投球に自信を見せます。

赤羽根陽向投手:「時間がないけれど一生懸命だった。夏は勝利に導く投球をする」

打線は2年生から4番を任されている佐藤選手を中心に、安定したバッティングを見せる内田選手、勝負強い柴選手というクリーンナップが得点力の鍵を握ります。

佐藤憧英選手:「春は準決から結果出せなくて悔しい。バッティング練習を行っている。夏は大会ナンバー1目指す」

部員は51人。シートノックには全員が参加します。さまざまな困難を乗り越えて観客のいる球場で全力プレーができる。監督と選手の思いはひとつです。

早乙女主将:「粘り強いチームになった。1点でも多くとって勝つ。やってやるぞという気持ち」

佐藤選手:「去年の悔しさも知っている。日向野監督を甲子園に連れていく」

日向野監督:「今年監督生活30年。まずは一戦一戦大切に戦ってその結果が甲子園に結び付けばいいと思っているので生徒たちにはしっかりやってくれとお願いしている」