「モテ」と「非モテ」を分けるものはいったい何か。「そこには“核心的”な5原則がある」とするのが、全世界100万人に影響を与えた“進化心理学的”モテ・ノウハウ本『モテるために必要なことはすべてダーウィンが教えてくれた』だ。今日から非モテ人生を変える5原則の正体とは──。(第2回/全5回)

※本稿は、ジェフリー・ミラー、タッカー・マックス著、橘玲監訳『モテるために必要なことはすべてダーウィンが教えてくれた』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

■モテの“核心的な”5つの原則

モテるために、性についてのあれこれの知識やデート戦略のチェックリストをつくっても意味はない。

どんな場面でも使える、それだけを理解し暗記して、1つひとつこなせばオーケーという便利なマニュアルがあるわけではない。飲み屋を巡るスタンプラリーのように、とんとん拍子で進むものなんか人生には存在しない。

人生のほとんどがそうであるように、パートナーと出会うまでには複雑な要素が絡まり合っているが、その中心には、進化論的な深い論理といくつかの核心的な5つの原則がある。これからの人生のさまざまな場面で、正しい選択と行動のためにそれを活用しなくてはならない。

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■【第1原則】科学にもとづいて決める(先入観には頼らない)

巷(ちまた)にあふれるモテのアドバイスの大半は時代遅れで、的外れで、しかも性的なことに否定的だ。なぜこんなことになってしまったのかには、明快な理由がある。どれひとつとして、ヒトがどのようにパートナーを探しているのかの実証的な理解にもとづいていないのだ。

デートについての知恵は、政治的・宗教的なイデオロギーや、家族の伝統、文化的な規範によって決められてきた。「世界はどうあるべきか」についての独りよがりな固定観念によって、ひとびとの(そして君の)考え方がねじ曲げられてきた。

進化心理学、行動遺伝学、サイコメトリクス(計量心理学)、人類学者による狩猟採集社会の調査、チンパンジーなどの動物コミュニケーション学といった学問分野が、近年、驚くべき知見や理論を生み出してきた。それを背景に、モテ(パートナー選択)の科学はこの30年間でいっきに花開いた。

その結果、深い洞察や豊富なエビデンスと体系的な視角を、過去のどの時代よりも優れたレベルで提供できるようになったのだ。

■「科学」と「エビデンス」は実用的で倫理的

科学とエビデンスをモテに使うのは、たんに実用的なだけではなく、倫理的でもある。

科学は事実を尊重し、何を信じるかについて責任をもてるようにしてくれる。独断や迷信、自信過剰に打ち勝てるようにもしてくれる。

批判的に考えること、仮説を検証すること、エビデンスを評価すること、フィードバックを測定することは、ラボで働く研究者の専売特許ではない。

まずは第1の原則を頭に叩き込んでほしい。何を信じるかは、科学的・実証的なエビデンスに従って決めなければいけない。

■【第2原則】女性の視点を理解する

モテについて、君は自分なりの見解をもっているだろう。しかし多くの男性は、女性もまた彼女の視点でものごとを見ていることを見落としている。そのうえ、女性の視点は男性の視点とは違う。モテるためにはそのことを理解し、説明できるようにならなければいけない。

女性の気持ちがわからないとしても、何もおかしくはない。女性は男性の理解を超えるほど複雑に進化した。誘惑され、操作され、搾取されることから自分を守るためだ。

このいちばん大事なことを理解せずに、つまり、女性とはいったい何者なのか、何を望んでいるのか、何に魅力を感じるのかを理解せずに、女性を魅了しようと試みるのは、地図やコンパスなしに荒れ地を進むのと同じだ。路頭に迷うに決まっている。

■怒りと恥と後悔の念に苦しむ40代にならない方法

頑迷な愚か者のまま、バカげた性的幻想という北極星の導きに従って、あてもなくさまようのは自由だ。そんなクソ野郎と一緒にいることに喜んで耐えてくれる女性と出会うのを待ってもいい。

ジェフリー・ミラー、タッカー・マックス著、橘玲監訳『モテるために必要なことはすべてダーウィンが教えてくれた』(SBクリエイティブ)

しかしそんなことをしていたら、非モテのまま、怒りと恥と後悔の念に苦しむ40代へまっしぐらだ。

だとしたら、ほかの選択肢を考えよう。

それは自分の妄想から離れ、女性の立場に身を置いてみることだ──好奇心と敬意をもって、互恵的な関係へのコミットメントを欠かさずに。

進化論的に女性は何を求めているのか、なぜそれを求めるのか、女性が求めているものを倫理的な仕方で与えるにはどうすればよいか──を理解しようと試みるなら、君はずっと魅力的になれるし、モテるための努力も報われることになる。

■【第3原則】自分の魅力を装備する

もっとも伝えたいことのひとつは、どうすれば女性から魅力的に思われるか──より具体的には、女性が魅力的だと感じる特性をどのように身につけるかだ。

そして、実際に行動して役立てないと、何も始まらない。

君は、どんな遺伝子を受け継ぐか、どんな家族で生まれ育つかを自分で選ぶことができなかった。だが、自分の人生、選択、習慣、特徴、恋人としての価値、女性に対する魅力については、自分で責任をもたなくてはいけない。誰も君の代わりにやってあげることはできない。

古代のストア派からニーチェまで、実存主義から現代の心理療法に至るまで、自己の成長や社会的魅力の獲得に責任をもつことは、人生の基本的な原則であり続けてきた。それは、自分に対して負っている倫理的な責務や、自分がもつ未来の可能性、自由意志、人格的自律を正しく認識することでもある。

■女性が魅了されるかどうかは「君」次第…

このことを強調するのは、女性は君に惹(ひ)かれるか惹かれないかを、本当の意味では「選ばない」からだ。

女性はある特性を(あとで詳しく説明するが、生物学的に)魅力的に感じ、別の特性には魅力を感じない。つまりは、ある女性が君に魅了されるかどうかは、おおむね君次第なのだ。その女性に魅力をアピールする機会を自分でつかみ取らなければいけない。

自分の魅力に責任をもつことのデメリットは、「いい男」になるためにかなりの労力を割かなければならないことだ。それに対して、自分の魅力に責任をもつことのメリットは、健康、経済的成功、幸福、自己実現といった、人生のあらゆる領域で共に利益を生み出すような素敵な女性と出会い、素晴らしい人生を一緒に送れることだ。

女性に対して魅力的になれれば、素晴らしい人生が自然な副産物としてついてくる。少なくとも男性にとっては、性的な面で自己を向上させることが、あらゆる面でよい人生へとつながる道なのだ。

■【第4原則】正直であること(自分自身にも相手にも)

正直さは、自己を向上させ、モテるための基盤になる。

自分が何を本当に望んでいるかを、自分自身にもごまかそうとしてしまえば、望んでいる人生を送ることはできないし、そのために必要な行動を取ることもできない。

正直さは社会的成功に役立つだけではなく、長い目で見ればモテにも寄与する要素だ。多くの女性は、男性の大半が嘘をついていると思っているし、彼女たちは嘘が嫌いだ。

■女性はウソつきが嫌い

ウソつきと女たらしとほら吹きばかりのこの世界では、自分自身について、自分が何を望んでいるかについての真実を語ることができる男性はとても貴重で、とても魅力的だ。

ぼくたちが「正直になれ」とわざわざ説教するのは、ただひとつの理由からだ。すなわち、パートナーとの出会い(と人生)には、正直で倫理的なアプローチが長期的に見ていちばん効果があるからだ。

■【第5原則】ウィンウィンの関係を築く

現代社会には、異性関係を、片方が得したら片方が損をするゼロサムゲームだとするシニカルな見方がある。この立場では、ワンナイトラブは男性が誘惑する側、女性が誘惑される側で、男性が「勝ち」、女性が「負け」になる。

写真=iStock.com/AntonioGuillem
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交際中に男性と女性が議論になれば、片方が勝って片方が負ける。性をめぐる政治的議論では、フェミニズムが勝てば、その分、家父長制が負ける。このゼロサムの考え方は、永遠に続く「セックス戦争」に帰結してしまう。残念なことに、フェミニズム陣営も、マノスフィア(*)陣営も、この見方を共有しているようだ。

*「男が女に虐げられている」と考える男性たち

「セックス戦争」という見方は、完全に間違っている。非生産的で直感に反するだけでなく、人類の何千世代にもわたる進化にも反している。

ぼくたちは逆の原則を支持している。それは、パートナー探しのゴールは、君と相手の女性の両方が報われる「ウィンウィン」の関係を見つけだし、つくりだすことである、というものだ。

■パートナー探しは「互恵関係」

そもそも、なぜ他人と関わろうとするのか。それは、何か対価を得ることを期待するからだろう。

コーヒーを飲むために店員にお金を払うのは、その払っている金額以上の価値がコーヒーにあると思うからだ(これが市場取引で、資本主義の背後にある基本的な考え方だ)。もし市場取引がプラスサムのゲームでなかったら、売り手か買い手のどちらかが交換に同意しないだろう。

この基本原則は友情にも当てはまる。仲間同士で楽しくおしゃべりできるのは、みんながそれぞれに利益を得ているからだ──そうでなければ仲間から離れるだろう。この関係も「ウィンウィン」だ。

パートナー探しが正直かつ倫理的に行なわれる場合も、同じことになる。相互利益は「期待(expectation)」に値するもので、「例外(exception)」ではない。なぜなら、ひとびとは利益にならない関係を避けるから。恋愛の大半が「ウィンウィン」の経験と関係を生み出すプラスサムのゲームでなかったら、男性も女性もそもそもこのゲームに参加しなかっただろう。

■ただ「女性を理解する」だけ

モテるための努力を、勝利を目指して女性と戦うことだと考えてはいけない。女性は君の敵ではない。パートナーとの出会いは、君と同じものを求めている女性を見つけることだと心得よう──そうすればふたりとも欲しいものを手に入れることができる。

重要なのは、男性と女性の双方がこの視点からアプローチすることによって、ふたりともが勝者になれることだ。これが、誰にとっても望ましい選択肢であることは間違いない。

詳しくは『モテるために必要なことはすべてダーウィンが教えてくれた』にあたっていただくとして、これら5つの原則は、あなたが意思決定し行動するための指針になることをまずは知ってほしい。

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ジェフリー・ミラー進化心理学
ニューメキシコ大学で心理学の准教授として終身在職権を得て、進化心理学、人間のセクシュアリティ、知性と創造性、人間の感情について教えている。コロンビア大学で学士号、スタンフォード大学で博士号を取得。著書の『The Mating Mind』(『恋人選びの心 性淘汰と人間性の進化』岩波書店)と『Spent』(『消費資本主義! 見せびらかしの進化心理学』勁草書房)は12カ国語以上に翻訳されている。2008年には、排卵期のラップダンサーはより多くのチップを稼ぐという研究でイグノーベル賞の経済学部門を受賞した。
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タッカー・マックス作家
著書『I Hope They Serve Beer in Hell(地獄でビールを出してくれればいいのに)』は『ニューヨークタイムズ』のナンバーワン・ベストセラーリストに掲載され、世界じゅうで200万部を売り上げた。『Assholes Finish First(クソ野郎が一番になる)』と『Hilarity Ensues(これからお楽しみ)』もそれぞれ100万部以上の売り上げを誇る。
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(進化心理学者 ジェフリー・ミラー、作家 タッカー・マックス)