森喜朗会長の進退は桑田佳祐か嵐のメンバーの一言で動く！ - 渡邉裕二
※この記事は2021年02月06日にBLOGOSで公開されたものです
「東京オリンピック・パラリンピック組織委員会」の会長を務める森喜朗元総理の「女性蔑視発言」が大騒動を巻き起こしている。一応、発言の撤回・謝罪はしたものの、謝罪会見が余りにも醜悪だったことから、さらに批判の声が高まっている。
「森会長は早稲田大学の雄弁会に所属していました。会の出身者には、それぞれスタイルがありますが、森会長はアドリブを重んじるタイプ。話術に長けていたから政治家になれたし、総理にまで上り詰めたのだと思いますが、サービス精神が旺盛で、その部分で舌禍騒動を起こすことも多かった。
それが笑って済ませられるうちは良かったのですが、森会長の場合は、ついつい本音というか本心が出てしまう。つまり言葉に人間性が見えちゃうんですよ。これまででしたら『悪かった』『撤回します』『反省しています』で何となく誤魔化すことができましたが、今はそういう時代ではありません。
ところが森会長はそういった肝心なことが全く分かっていないのです。今回の場合は…、83歳とはいえ頭はしっかりしているので、おそらく〝失言〟だとは思っていないでしょうね。
とりあえず謝罪はしましたが、内心では『マスコミが面白おかしく書き立てているだけだろう』くらいにしか感じていないはずです。一部には「老害」という声もありますが、老害と言うより時代錯誤の権化なんですよ。
しかも周りがイエスマンばかりですから、世の中の感覚とズレていることにも全く気づいていないのです。タチが悪いのは、歳を取って頑固になったことなのかもしれませんね」
と、話すのは雄弁会出身の放送関係者だ。
女性蔑視発言は世界からも問題視
総理経験者でありながら自分の発言に責任を持たないのは何も森会長に限ったことではないのだが、今回の森発言は日本国内だけの問題では済まず、国際的な問題に発展しようとしている。総理時代には、
「日本の国、まさに天皇を中心としている神の国」
などと発言して物議を醸したことがあったものだが、今回は東京オリ・パラ組織委員会の会長としての言動である。
森会長自身は「臨時評議員会で挨拶したに過ぎず、公での発言ではなかった」くらいにしか考えていないのだろうが、それこそが時代錯誤と言うもの。国際社会の捉え方は実にシビアである。
東京オリ・パラ開催の是非が議論され、国民の意見も二分する中で、
「こんな偏見を持った人物が国際的イベントである東京オリ・パラの会長職を継続するのは不適切」
などという声もあり、もはや〝国益〟の問題にまで発展してしまっている。
「やはり、元総理の立場以上に自民党の重鎮だと言うこともあるのでしょう。だいたい、失言をあれだけ繰り返しても反省も辞任もしない麻生太郎財務相もいるじゃないですか。似たり寄ったりですよ。
ただ、東京オリ・パラ開催に向けての資金調達も含め、森会長の力は圧倒的に大きかったことは確かですからね。曖昧な状態で森会長の〝独裁〟を許し続けてきてしまったツケが今になって一気に噴出してきたと言ってもいいかもしれません。
振り返ってみると、東京オリ・パラは開催が決まって以来、新国立競技場の建設をはじめ、競技施設の問題やエンブレム盗作騒動と、とにかくトラブル続き。そして今度は森会長の発言ですからね。こうなったら、開催するも、中止するも、あるいは延期するも最後の最後まで何らかのトラブルに見舞われるでしょう」（週刊誌の編集記者）
世論を動かすには芸能人の声が必要
では、今回の事態を変えるために何が足りないのか？ 一言で言って、小泉今日子のような芸能人の声がないのである。
ちょうど1年前になる。安倍晋三前総理が成立に執念を燃やしていた検察官の定年を引き上げる「検察庁法改正案」を断念したことがあった。
当時、同改正案に対しての世論の反発が強く、内閣の支持率も30％台に低下、不支持が一気に上回ったことが断念の大きな要因とされているが、実は「芸能界から（法案に対しての）抗議や反発の声が上がったことが決定打となったのではないか」と私は見ている。
もちろん、今回の森会長の発言に対しても芸能界から批判の声が上がってはいるが、イマイチ盛り上がりに欠けている。それはなぜかというと、小泉のようなインパクトのある芸能人からの叫びがないのだ。
「検察庁法改正案」では、小泉（アカウントは所属事務所の「明後日」）の他、いきものがかりの水野良樹、氣志團の綾小路翔をはじめ、AAAの日高光啓、末吉秀太、歌手のきゃりーぱみゅぱみゅ、俳優の浅野忠信、井浦新、城田優、元AKB48の秋元才加の他、演出家・宮本亞門もツイッターで「このコロナ禍の混乱の中、集中すべきは人の命。どう見ても民主主義とはかけ離れた法案を強引に決めることは、日本にとって悲劇です」と訴えていた。
さらに委員会審議が始まると小泉は「国会中継見ています」と、ライブ中継をしていた動画サイトを紹介する投稿までしていたが、やはり、小泉の発言は衝撃的だったことは確かで、法案の流れに大きな影響を与えたことは間違いない。
小泉に限らず、きゃりーぱみゅぱみゅの発言にもインパクトがあったのも事実だ。当時、政治評論家の加藤清隆氏が、
「歌手やってて、知らないかもしれないけど、検察庁法改正案は国家公務員の定年を65歳で揃えるため。安倍政権の言いなりになるみたいな陰謀論が幅をきかせているけど、内閣が検察庁を直接指揮することなどできません、デタラメな噂に騙されないようにね。歌、頑張って下さい」
などと、言いがかりをつけていたことからも分かる。（ちなみに、きゃりーは「歌手やってて知らないかもしれないけどって相当失礼ですよ、、、」と反発していたが…）
この他にも、3年前にモデルでタレントのローラが自らのインスタグラムを通して沖縄・名護市の辺野古沿岸への米軍基地移設で反対の署名呼び掛けをしたことが批判を浴び、議論になったことがあったが、現実には、それまで辺野古に興味を持ってこなかった若者層にも関心を抱かせた。
芸能人の叫びは大きい。だからと言って、誰でも人を動かせると言うわけではない。
今回の森会長の発言をめぐっては、「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳が聖火リレーのランナーを辞退したことがニュースになってはいたが、どこかパフォーマンスじみた部分が透けて見えたのか、いわゆるムーブメントを起こすまでには至らず終わってしまった感じだ。森会長にしてみたら「あ。そう」程度だったに違いない。
では、どういった芸能人だったら、頑固一徹な森会長の心を動かすことができるのか？
「この人だったら」を挙げるとしたら、やはり東京オリ・パラで民放の公式テーマ曲を歌っているサザンオールスターズの桑田佳祐、あるいは、現在はグループとしての活動を休止しているが、嵐のメンバーだろう。彼らが、
「森会長の決断を望みます」
などと一言でも言ったなら、流れが大きく変わるに違いない。
米国ではテイラー・スウィフトをはじめレディー・ガガなどが政治に対して声を挙げ、国内世論に大きな影響を与えている。
日本ではアーティストやタレントが政治に関わる発言をすることを嫌う傾向がある。しかし、芸能界はすでに政治の世界にドップリ浸かり、東京オリ・パラにも深く関わっている。関わっている以上は、今回の森会長発言に知らん顔はできないと思うのだが…。
