デパート、車の中で投票できる時代 期日前投票の利用増へ各地の選管があの手この手 - BLOGOS編集部
※この記事は2019年07月12日にBLOGOSで公開されたものです
第25回参院選の投開票が21日に迫っている。参院選に限ってみると、投票率は1980年(第12回)に74.54%とピークに達したものの、15年後の95年(第17回)には44.52%と過去最低を記録。以後、7回の選挙でも50%台を推移するなど、「選挙離れ」が叫ばれて久しい。
そんな中にあって、国民に広く定着したといえる制度が「期日前投票」だ。投票日に仕事やプライベートの用事がある人が、事前に投票できる制度で、国政選挙に初めて導入された前回の第20回参院選(04年)の利用者は約717万人だった。ところが、スーパーへの投票所設置など利便性を高める施策が全国各地で行われた結果、前回の16年参院選(第24回)の利用者は約1597万人と2倍以上に増加した。
今回の参院選でも、ターミナル駅のデパートやショッピングモールなどに期日前投票所を設ける自治体もあるほか、移動型投票所など地域の実情に応じた投票スタイルも生まれている。選挙になじみがない人も、コンビニ感覚で気軽に投票に訪れてみてはいかがだろうか。
柔軟に投票可能 都内では利用者3倍超に
期日前投票は、国政選挙では2004年の参院選から導入された。投開票日に仕事や旅行、冠婚葬祭などで投票に行けない人が対象で、公示の翌日から選挙前日まで投票できる。実際に期日前投票の会場に行ってみても、投開票日の予定について問い詰められることはない。
こうした気軽さが受け、期日前投票の利用者数は全国的に増加傾向にある。東京都の国政選挙だけをみても、その普及ぶりは顕著だ。
都選管によると、導入直後の第20回参院選(04年)の利用者数は選挙区と比例代表を合わせて延べ139万4917人。以後、増加を続け、17年に衆院選では450万7684人(小選挙区と比例代表の延べ人数)と3倍超まで増加した。
都選管の担当者は「前回の衆院選は投開票日に台風の接近が見込まれたため、期日前の利用を呼び掛けたイレギュラーな面はある。それでも、期日前投票の利用は増加傾向であり、有権者の間で認知度が高まったのが最大の要因だ」と話す。
豊島区は池袋駅のデパートに投票所設置
選挙の投票所と言えば、公民館や小学校の体育館などがメーンで、「選挙に行く」という明確な理由がない限り、普段はあまり行く機会がない人も多いのではないか。そのため、全国各地の選挙管理委員会は、有権者が集まる場所に投票所を設けたり、過疎地域向けに車内で投票できるバスの巡回などを打ち出し、投票率アップに向けたあの手この手の対策を打ち出している。
東京都の豊島区選管は今回の参院選でも、ターミナル駅・池袋駅にある東武百貨店池袋本店と西武池袋本店を期日前投票の会場に指定した。14~20日の午前10時~午後8時に投票でき、豊島区選管の担当者は「池袋駅は買い物がてらや通勤の帰りなどに利用する区民も多い。気軽に立ち寄って投票していただき、投票率アップにつながれば」と期待を込める。
他に都内では、「アトレ大井町」(品川区)、「イトーヨーカドー四つ木店」(葛飾区)などの商業施設も期日前投票を受け付ける。
過疎地域を巡回して車内で投票できるサービスも
全国では、過疎や高齢化など、地域ごとの特性に応じたユニークな投票制度を用意する自治体もある。
岩手県一関市は、立会人や市職員が15~17日にワゴン車2台に乗り込んで、投票所まで遠い地域を回って投票を受け付ける。さらに、高齢者や障害のある人向けに、自宅と投票所を結ぶデマンド型移動サービスも行うという。こうした投票所への移動支援を行う自治体は他に、岩手県宮古市、兵庫県香美町など人口減が進む多くの地域でみられる。
18歳選挙権受けて高校校舎内にも投票所
国政選挙では前回参院選から初めて導入された18歳選挙権を踏まえた動きも目立つ。今回の参院選では、福島大学(福島市)や関西学院大神戸三田キャンパス(兵庫県三田市)、名古屋市立大学滝子キャンパス(名古屋市瑞穂区)など全国各地の大学キャンパスが、主に学生向けの投票所となる。
選挙権が初めて与えられる18歳を迎えた高校3年生のために、校舎の一部で期日前投票を受け付ける高校も目立つ。岡山県矢掛町の矢掛高校、福井県越前町の丹生高校は、今回の参院選では、校内に投票所を初めて設置する。福島県三春町の田村高校は17日、校舎内の同窓会館に投票所を設置する。生徒が政治について考えるきっかけとして前回の参院選から校内に投票所を設けてきた。
13日からの3連休は、今回の参院選の最大の山場となりそうだ。都内では今回の参院選で、5日に一部の会場で期日前投票が始まったが、設置予定の投票所計301か所がこの3連休中に出そろう予定だ。