ダメな政治家を選んだのはダメな有権者 投票した議員の活動をチェックせよ - 毒蝮三太夫
※この記事は2019年07月03日にBLOGOSで公開されたものです
政治家の質が落ちてるなんてよく言われるけど、票を投じてその議員を選んでるのは国民だからな。おのずと有権者の質も落ちてるってことになるわけだ。せめて、自分が投票した政党や議員がどんな活動をしてどんな発言をしているかは、選んだ側にも責任があると思ってチェックしていかないとな。「安倍首相に感謝」の違和感
最近の国会で声高に聞こえてきたのが自民党の三原じゅん子さんか。代表質問に立って野党に対し朗々と発したのが以下の発言だった。三原じゅん子「政権交代から6年あまり、民主党政権の負の遺産の尻拭いをしてきた安倍総理に感謝こそすれ、問責決議案を提出するなどまったくの常識外れ、愚か者の所業との誹(そし)りを免れません。野党の皆さん、もう一度改めて申し上げます。恥を知りなさい!」・第198回国会における安倍総理問責決議案への反対討論 三原じゅん子参議院議員
三原さんはタレント出身で神奈川の比例区出身、参議院議員だ。介護やがん対策など福祉や健康への問題に取り組んでいて、それに関しては俺も大きな意味で高齢者の介護や健康についての危惧は同じだから、国会議員としての取り組みには期待してるよ。
それはそれとしてね、彼女の発言がちょっと気になっちゃったよ。三原さんがとくに強調してたのが「安倍総理に感謝こそすれ」ってフレーズだった。要するに、民主党の失政を挽回して立て直したのが安倍さんなのだから、安倍さんに感謝しなさい、ってことだ。
安倍政権がこの6年にどんな功績を残したか、自民党と民主党でどっちの政権がどうだったかって話はいったん横に置いとこう。俺が気になったのは、三原さんはこれを野党に向かって言ってるんだけど、野党議員も国民から選ばれた国民の代表だろ。つまり野党の向こう側には多くの国民がいるのだから、ある意味、その国民に向かって言ってる発言でもあるってことだ。安倍政権に文句ばかり言ってる皆さん、安倍総理に感謝しましょうって。これが三原さんの政治家としての了見なんだな。
なんだかそこに違和感があるんだ。国会議員は国民から信託を受けた代表であって、総理大臣もまた然り。基本的に国民が崇める存在でも、感謝する存在でもないよ。税金から報酬はきちんと出しますから、公職の長に立つ国家のトップとして、国と国民の為にきちんと仕事をしてくださいよ、っていう存在だよ。
それにさ三原さんから声高に言われなくても、本当に安倍さんに世話になった人は個々に感謝すると思うよ。例えば、安倍さんの友達で色々あって規制があったところに認可が下りて補助金が何億円か助成されて学園が出来たとかさ・・・。そういう人は安倍さんに感謝すればいい。でも、そうでない人は、とくに感謝のしようがねえもんな。困っちゃうな。
この三原さんと安倍さんの関係だけど、組織で配下の人間が上司への敬意を他者に強要するって、昔の東映映画によくあったぜ。「こらワレ、誰のおかげや思てんねん、親分に頭下げんかい!」って三下のチンピラが言う常套句だよ。
それに三原さん見てると「極道の妻たち」の岩下志麻さんみたいにドスの効いた姐さんが思い浮かんじゃうよ。「おいコラ野党、腹くくってもの言いや。何が問責決議案じゃ、ウチの親分を撃てるもんなら撃ってみぃ! ナメたらあかんぜよ!」とか言いそうだな(苦笑)。
あとほら、森友学園が問題になったとき、幼稚園児に運動会の選手宣誓で「安倍首相がんばれ!安倍首相がんばれ!」って言わせてたシーンがあったろ。なんだか三原さんの言葉と、あの時の幼稚園児の言葉が重なっちゃうんだよ。こうまで三原さんが安倍さんを持ち上げるとさ、「次期組閣で大臣の椅子を・・・」ってきっと腹にイチモツあるんだろうなって思っちゃうよね。
でね、改めてこの三原さん、神奈川の選挙区から選ばれた参議院議員であり、国民の代表で神奈川県民の代表とも言える。その人が安倍総理に感謝せよと声高に言ってる。神奈川の皆さんはこの発言、そこから見えてくる彼女の了見、どう感じられたかな?
丸山穂高議員の支持者に話を聞いてみたい
政治家の了見ってことで言うと、今年上半期に大きな話題になったのは元・日本維新の会の丸山穂高議員だ。北方領土での「ビザなし交流」に同行して、酒に酔って「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」などと訪問団の団長に対して質問し、「戦争はすべきではない」と団長が答えると、「戦争しないとどうしようもなくないですか」と発言したことが広く問題視され、衆院で糾弾決議が可決されるに至った。それから一ヶ月ほど休んでたけど、世間のほとぼりが冷めたのを見計らったのか、先日国会に出てきたね。彼は35歳か。クチバシが黄色いな。国と国の問題解決の手段として戦争の可能性を口にできてしまうのは、やはり机上の論や資料でしか戦争を知らないからだろうな。だとしても残念だな。実際の戦争が何をもたらすか、それを学べてない人物が国会議員のバッヂをつけて数千万円という高額の歳費が税金から与えられてるんだから。
酔って理性のタガが緩んで言うことは、普段言わずにいる本音だよ。彼はさ、戦争云々と勇ましいことを言ってて、いざそれがバッシングされたら、そそくさと姿を消すわけだろ。人の上に立って、お国の為に戦争もあって然るべしという思想を持つ政治家が、いざ自分が責められると早々に姿をくらます。それがそのまま丸山議員の了見なんだな。
丸山議員は議員辞職することなく居座ってるけど、彼を衆議院議員に選出したのは大阪19区だ。選挙の時に彼を支援した後援会だってあるだろうよ。その方々は今、何を思っているんだろうな? 地盤となった地元の支持者の今の声も聴いてみたいな。
酒で議員の本性がわかるなら…
酒と政治家で思い出すのが田中角栄さんだな。角栄さんは酒が滅法強かったんだよ。周恩来さんと交渉して日本と中国の国交を回復した時に、中国で随分と飲まされたって話があるよ。中国はマオタイ(茅台酒)って蒸留酒があってね、これが国を代表する「国酒」なんだ。周恩来も酒好きでこれをいつも飲んでたらしい。アルコール度数が50~60度ぐらいあってキツイんだ。口に入れたらすぐに水飲まないとヒーヒーしちゃう。俺もTBSラジオで上海に遠征した時に飲んだよ。クセがあるんだ。飲み慣れてないから日本人には美味くないの。要するに国の地酒だからな。
中国は「乾杯(カンペイ)」って、酒注がれたらグイッと飲み干して杯を空にする=乾かすのが「乾杯」の流儀でね。角栄さんは歓迎の晩餐会が開かれた時、中国共産党のお偉いさんが行列をなして酒を注ぎに来たって。次から次と乾杯乾杯って。角栄さんはそのマオタイをことごとく飲み干し、酔わずに最後までしっかりしてたんだ。その姿を見て中国側は大いに感心して「田中角栄は傑物だ」と実感したって話だ。
今はどうか知らないけど、ひと昔前はさ、酒に強いってことも男の評価だったりしたろ。日中国交正常化は1972年だからもう半世紀前だ。当時はそういう価値観が中国にもあって、飲んでも乱れることなくきちんとしてる人が人品として上等であると。角栄さんは中国で酒の強さが広まって「田中先生」って大いに認められたって。
あのさ、年に1回ぐらい国会議員集めて、飲める人に酒飲まして、どういう酒癖でどういう発言をするか、みんなで見てみるのってどうかな?(笑)。「朝まで酒テレビ」ってどうだい? 政治家が酔うとどうなるか国民は知りたいよね。どんなに飲んでもきちんとしてる人もいれば、急に威勢のいいこと言い出す人もいれば、ネチネチとクダ巻く人もいるだろうよ。
酒がその人物の本質・・・了見をわかりやすく伝えるんじゃないかな。丸山議員の酒癖はもうわかったから彼は欠席でいいや。三原じゅん子さんはどうなるかな。どうやら酒好きらしいよ。酔ってもやっぱり「安倍総理に感謝しなさい」って野党にからむのかな?
まあこの三原さんだけど、議員を引退した暁には高級クラブのママになったらきっと大繁盛するぜ。美人だし脅しも効くしピッタリだよ。永田町から銀座に転身、そのほうが似合うと思うけどね・・・。
(取材構成:松田健次)