老後2000万円問題に「見ざる、聞かざる、言わざる」の安倍政権、噛みつく野党が小犬で犬猿の仲成り立たずとキジを書く - 毒蝮三太夫
※この記事は2019年06月25日にBLOGOSで公開されたものです
令和最初の国政選挙が近づいてるな。おそらく参院選が7月21日投開票という見方が有力なんだろ。今のところ与野党の争点は、やはり「年金問題」「老後2千万円問題」だろうな。何しろ安倍さん、この問題に一切答えないって閣議決定したぐらいだもの。さらに「金融庁は大バカ者」って言ったんだって? 逆ギレだな。
真に人の上に立つ賢者はさ、下の者を守って、自分が火の粉をかぶるような存在であってほしいと思うけど、安倍政権はどんな問題も官僚の責任だもんな。安倍さんが真っ先に火の粉よけちゃうから官僚が火かぶって火だるまだよ(苦笑)。
「記憶にございません」がマシに見える安倍首相の答弁
「金融庁は大バカ者」と本当に言ったかどうかを、先日の党首討論で国民民主党の玉木さんに問われたら、安倍さんは「私は滅多に激怒しない人間として、自由民主党では理解されているわけでありまして。温和に円満に生きているつもりであります。大切なことは、国民に誤解を与えない、そういう資料をつくることではないかと」って答えたんだよね。「金融庁は大バカ者」って言ったかどうかを聞いてるんだから、まずひと言「言ってません」って答えれば済むんだよね。だけどそれは答えないんだよな。
答えてほしいことを答えないってことで話を戻すけど、金融庁が発表した年金に関する報告書について政府は質問に回答しないと閣議決定した。そう考えるとさ、過去にこれまで国会では何度も「記憶にございません」っていう返答があったよ。あれはまだマシだったのかな。少なくとも衆目に姿をさらしてそう答えてたもんな。
答えるっていうのはさ、言葉で「はい」とか「いいえ」とか言うだけでなく、立ち振る舞いや表情や目つきも含まれるんだ。周りはそれを見て、あいつシレっとしてるなとか、やっぱりウソついてそうだなとか思うわけだ。「顔に書いてある」とか「目は口ほどに物を言う」って言葉があるようにね。
それがさ、「老後2千万円問題」には一切答えない閣議決定って、冗談みたいな話だよな。年金ってごく身近な国民の問題だし、国民の問題を何とかするために国会があって国会議員が働いてるわけだ。それが、その仕事は一切致しませんって、何だろう、安倍内閣の働き方改革か?
まあ、見方を変えれば、それぐらいこの年金問題が安倍さんにとってはナーバスで触れられたくないアキレス腱ってことなんだろうな…。
見ざる、聞かざる、言わざる政権
日光の東照宮に行くとさ有名な三猿ってあるだろ、「見ざる、聞かざる、言わざる」。まさにあれだな。安倍さんはこの問題に関して一切「見ざる」、麻生さんは記者に質問されても何にも「聞かざる」、金融庁は公式に発表した報告だったのにそれに関してはもう何も「言わざる」。年金問題、老後2千万円問題での安倍内閣は「見ざる、聞かざる、言わざる政権」だ。
与党が猿なら野党は犬になって、犬猿の仲でやりあってほしいんだけど野党がどれも小犬なんだよな。立憲民主党の枝野さんは豆柴みたいだし、共産党の志位さんはパグみたいだし、噛みついても今ひとつ迫力が薄い気がするよ。小沢一郎さんは昔からブルドッグみたいな顔してるけど、過去にさんざん噛みついてきたから今は歯が弱って前に出てこれないみたいだしね。
この猿と犬の喧々諤々を追うのが記者達で、記事を書くから雉(キジ)って話でいいか。猿、犬、雉がそろって麻生さんのあとを追いかける。まるで桃太郎だ(笑)。麻生さん年間の飲み代が2019万円だって突き上げられてるからさ、「♪も~もたろうさん、ももたろさん」でなく「♪あーそたろうさん、あそたろさん、お腰につけた飲み代を少し私にくださいな~」か?
「本当は3千万円じゃないの?」冗談が本当に
ああ、そうそう、前回ここで書いたコラム(6/18配信)読んでくれたかな。俺さ、老後2千万円問題の話をしたんだけど、その中でこう書いたんだ。
この「2千万円」だって、ホントは「3千万円」とかそれ以上だったのを、役人があれこれ数字やデータをいじって、押さえに押さえて、値切りに値切って、ようやく「2千万円」にしたんじゃないの? 昨今、霞ヶ関では文書書き換えやデータ改ざんは政府に対するおもてなしみたいになってるし。
半分シャレで書いたつもりだったけど、そのあと毎日新聞(6/18)が報じててさ、これがホントの話だったよ(笑)。金融庁は4月に老後30年で年金以外に「1500万~3000万円必要」っていう試算を出してたんだって。それを程よく値切って例の報告書で2000万円にしたみたい。
これからは「年金目減り世代」の時代
改めてこの年金問題だけど、俺も含めて既に年金を受け取ってる高齢世代はまだマシなほうなんだよな。10年後20年後30年後と、これから受け取る世代はどんどんきつくなる。受け取る金額が目減りする「年金目減り世代」だ。
俺の周りにいる50代の「年金目減り世代」に聞いたらさ、国民年金だけの加入っていういちばん基礎の加入でもって、65歳から貰える年金が「年間72万円」だって。つまり「月6万円」だ。うーん、月6万で老後を暮らすとなると、家賃いくらの処に住めばいいのかね? 食費は? 光熱費は? スマホなんか持ってたら通信料であっという間に月1万ぐらい取られるんだろ。スマホの有無が死活問題に関わるぞ。あの人はスマホ持ってたんで食費が払えずくたばりました…とかさ。
この「年金目減り世代」だけど、住民税払って、国民健康保険払って、国民年金払って、毎年の公的な支払いは年々上がってるのに、年収は上がらず、物価が上がって、もはや老後のことは考えたくないって。
ホームレスになるか、海外移住か
それでも生きるためには贅沢せずに、老後も働けるだけ働き続けて少しでも収入を得ることだな。もし働けなくなったら、毎月6万円使えるってことでちょっと贅沢なホームレスになるとかな。その時は金融庁の前に住み着いたりしてな。こりゃ、笑うに笑えないな。
あとは日本で暮らすのをあきらめて、物価の安い国に移住する選択も増えるんじゃないか? 世界の中で物価が安い国ってどこになる? インド、ネパール、スリランカあたり? そうなると、毎日カレー食いながら粛々と倹約し続ける老後だな。加齢したらカレー暮らしだ(笑)。
お金無かったら、年取って遊びたいと思っても金を使わない遊びをするしかないんだろうな。鬼ごっこ、かくれんぼ、けいどろ、缶けり、色鬼、馬跳び、なわとび、メンコ、ベーゴマ、けん玉、子どもの遊びは金がかからないから、そういう遊びにふける老人が流行るかもしれないな。
若い世代は大丈夫かな。ガキの頃からゲームでピコピコやってて、老人になってもそういうゲームしてたらゲーム代かかるぞ。で、あの人はゲームやってたんで食費が払えずくたばりました…って。おいおい、次から次に死んでくな(苦笑)。
立川談志の何気ない「富の再分配」
問題は、いかにして金を使わず生きていくかだ。俺の親友だった立川談志は金を使うのが好きじゃなかった。それでこんな話があるよ。ある時、談志と先代円楽さんと先代円鏡さんと志ん朝さんと俺の5人で中華屋入ってメシを食ったんだ。いざお勘定ってことになったら談志が俺に言うんだ、「ここはおまえが全部払え」。俺は5人で食ったんだから割り勘だって思って、「なんで俺がひとりで払うんだよ」って言ったよ。そしたら談志が「おまえひとりが払えば嫌な思いをするのはおまえだけで済むだろ。あとの4人は気持ちいいじゃねえか」だって。その言い草がバカバカしくて、俺はひとりで払っちゃったよ(笑)。
この時、談志はさ、闇雲に無茶を言ったわけでもないんだ。そこにいるメンバーを見て、俺がいちばん財布に金が入ってそうだって見透かしてそういうこと言ったんだ。つまり「持ってるやつが払え」って話だ。これって冷静に考えたら「富の再分配」の原点みたいなもんだよ。
国は累進課税で収入に応じて税を課して、それを再分配するのが仕事だ。でも、ここ何年か見てるとさ、アベノミクスで大企業と富裕層は減税、国債増やして株価が上がり、結局大企業の内部留保という貯蓄が急増している。その一方で国民の貯蓄は増えてない。
政府はさ、銀行とかJALとか東京電力とか、債務超過で潰れかかると日本経済に著しい打撃を与えかねないとか言って「公的資金」を投入するよね。その財源は税金だ。ところが、国民の将来の生活に関わる年金に関しては「自己資金」でナントカしろと言う。その財源をいかにして捻り出すかが政治の仕事なんだけどな。
政治って突き詰めれば国民から集めた「税」の使い方だろ。もしも談志が総理だったら言うかもしれないな、「ううう、持ってるやつが払えばいいんです」って。だけど問題なのはあいつ自身が稼いでるのにちっとも出さないんだよ。しかも俺より先にあの世に行きやがってさ。俺なんか香典まで取られちゃったよ(笑)。
(取材構成:松田健次)