ペットの柴犬の写真をツイッターに投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている@inu_10kg。ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。第46回は、犬と過ごす「ある週末のお話」をご紹介します。

犬が“魅せた”ある週末の出来事

金曜日の20時過ぎ、小さな駅なれど帰路に着く人が続々と駅構内から出てくる。みんなマスクをしている中で、犬はたった一人を見つけると走り出して駆け寄った。

「ただいま!」そう妹が犬の目線に合わせるようにしゃがむと、犬は確認するように鼻を寄せた。家に着いて、妹は手洗いうがいをすませると椅子に座るよりもまず犬を撫でた。

犬の頬はまるで綿の中に手を差し込んでいるようで、しかしもっちりと重量があって、撫でずにはいられない。

妹に撫でられながら少しずつ体勢を崩していって、最終的にその場で寝そべった。母がそれを見ていて「な〜に甘えてるんやぁ」と笑った。

ちなみに耳は羽二重もちのような触り心地をしている。

翌朝妹と犬と散歩に行くと、私がいつも綺麗と思っていた牡丹桜に「この花ほんま好き」と妹が言った。

ここでも犬はいい感じの棒を発見していた。

●庭で無邪気に遊ぶ犬

この日は祖父と祖母の法事で、妹もそれに合わせて帰省したのだ。お坊さんは近所のお寺で代々お世話になっていて家族も犬もよく知ってくれている。だから吠える犬に迎えられても笑ってくれた。

犬が家族以外の人が家にいて静かにしているわけもなく、お坊さんが読経してくれている間も時々「ワウッ!」と吠えたり「クゥーン」と鳴いていた。

でも祖母なら「しゃあないわ、賑やかでええ。」と言って犬の名前を読んでくれるだろうなんて都合のいい考えを巡らせた。

それから墓参りをして、お坊さんをお見送りして、ひと段落のお昼ご飯。犬もお疲れちゅーるタイムだ。

ちゅーるの後にシャボン玉で遊んでいたら、妹がやけに上手だった。昨年、花火で火文字を書いたときもきれいに出来上がっていた。

そしてシャボン玉に向かって犬が飛びかかるのは言うまでもなく。妹がシャボン玉を生成すれば片っ端から犬が追いかける。せわしなくも和やかな光景に自然と笑みがこぼれる。

小さかったころ、今みたいに庭で遊ぶ私と妹を見守っていた祖父も優しく笑って見守ってくれていた。

この夜、犬はぐっすりと眠った。犬も楽ではないのだ、みなさんお疲れさまでした。

●お疲れの犬も、翌朝スッキリ起床

しかし翌朝にはスッキリした顔をして、起きて早々玄関を見つめているので「散歩に行く?」と声を掛けると振り向いて返事をくれた。

初夏のような暑さで、川に向かうと案の定入っていった。この川に入っていく様がいつも不思議で、陸地と水中の境界線を微塵も感じさせず、少しの立ち止まりもなく入水するのだ。

私はエスカレーターに乗るときも直前で足踏みをしたり、別の空間に移る瞬間にモタモタとしているので犬のスムーズな足取りが輝いて映る。

泳ぎはしなかったが浅瀬で水を蹴るように歩くのが気持ちよさそうだった。

帰宅後はシャンプーをしてドライヤー。犬も疲れただろうからそっとしておこうと妹とYouTubeを見てケタケタ笑っていたら、机の下からヌッ! と犬が現れて見上げてきた。

一緒に見る?

午後、昼寝中の犬に妹が構いにいって、また柔らかな頬に手を伸ばした。

それから二時間後、今度は目を覚ました犬が昼寝をしている妹の手をグングンと鼻で押したり舐めたり構いにいった。

時間差でお互いに同じことを相手にして、本当に似たもの同士だ。