二松学舎大付のエース・布施東海【写真:中戸川知世】

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春季高校野球東京都大会・決勝

 高校野球の春季東京都大会は24日に決勝(スリーボンドスタジアム八王子)が行われ、今春センバツ出場の二松学舎大付は3-7で関東第一に敗れ、初優勝はならなかった。エースの布施東海(3年)が4回までに7失点。継投策をとってもおかしくない状況だったが、9回113球を投げ抜いた。市原勝人監督は試合後、完投させた背景を明かした。両校は5月の関東大会に出場する。

 甲子園のマウンドも経験しているエース布施が序盤苦しんだ。「打たれちゃいけない気持ちが強すぎた。浮いたボールが甘く入った」と振り返るように、2回に相手の7番・増尾己波(3年)に2点二塁打を浴びてから3イニング連続で失点。3回には2ランを被弾するなど、4回終了時点で8安打を浴びた。

 前日の準決勝・日大三戦は温存されて迎えたこの日。4回を投げ終えてベンチに戻った時、市原監督から声をかけられた。「決勝はコールドないからね。最後まで行くよ」。どれだけ点を取られても布施を完投させるつもりでいた指揮官は、左腕に「粘っこさ」を求めていた。

「(布施は)背伸びしているようなところがあった。自分のイメージするピッチングの見積もりが高くなり、ちょっと点を取られて自分のペースじゃなくなると、なんとなく粘っこさがなくなる。そんなことで(さじを)投げちゃったらどうにもならない」

エースに願う投球「完封より、ゲームメイクを」

 市原監督の目には、この日の布施は「打たれる、点を取られることに異常に意識がある」状態に映った。良い投球をしたいがために、コースを狙いすぎてボールが先行する展開。不利なカウントから痛打を浴びていた。「打たれたり、点を取られたらいい反省ができるくらいの気持ちでいけばいいんじゃないか」。気持ちを切り替えた布施は、5回から立ち直った。

 3者凡退は1度だけ。それでも低めストライクゾーンに集める意識で左腕を振り続け、味方の好守もあって得点を許さない。9回12安打を浴びたが、5回以降は無失点。113球で投げ抜いた。布施は試合後、「『こういう時こそ、しっかりと投げ切れ』と監督さんから言っていただけたおかげ」と公式戦で積んだ貴重な9イニングに感謝した。

 初優勝は逃したが、夏のシードを獲得。なによりエースに大事な経験を積ませることができた。春夏合わせて8度の甲子園を経験している市原監督は「粘っこくやることで拾えるゲームを拾っていけると覚えてくれたら。完封したり、素晴らしいピッチングよりゲームメイクをする投手を目指してほしい」と布施に期待。「粘り強さはあるチーム。一歩一歩、夏に再チャレンジしたい」と最終目標を見据えていた。

(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)