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あえて言おう、「チャーンス!」と!

北京五輪の激闘から1ヶ月あまり。再び選手たちは銀盤の上に戻ってきました。フランスはモンペリエでの開催となったフィギュアスケート世界選手権。しかし、今大会は必ずしも万全の大会ではありません。五輪直後という心身ともに過酷な状況は、多くの負傷欠場者と、参加はしていても満身創痍という選手たちを生み出しました。さらに、常にそこにあるコロナ禍と、新たに起こった戦争という困難。

世界を分断した戦争は、今大会へのロシアとベラルーシの選手の参加は不可としました(※そして中国もいない)。それはもう致し方ないことかもしれませんが、世界のフィギュアスケート大国であるロシアがいないというのは、大会全体に大きな影響を与える決定でした。ほかの種目の欠場者も含めれば、北京五輪の金メダリストでエントリーしているのはアイスダンスのパパダキス・シゼロン組だけ。歴代の世界選手権王者も不在となっており、ほぼほぼ「誰が勝っても初の金」という大会です。

世界の情勢としては「ピーンチ!」でありつつも、この大会に参加する選手にとってはある意味で「チャーンス!」でもある。まぁ、こういう状況に奮い立つことへの是非については議論があるかもしれませんが、50年後でも100年後でもメダルは記録に残ります。そして、あのときはコロナと戦争でいろいろあったんだ…という記憶は、この時代に見守ったわずかな人にしか残りません。勝てるなら勝ったほうがいい、そう思います。金が、すぐそこにあるのですから。

↓中継局もピンチはチャンス精神で「遊べるときに遊ぼう」の構え!

なにがやりたいんだコラ!

なにコラ!タココラ!

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そんななかまず始まったのが女子シングル、ロシア出場不可という状況が一番大きく影響する種目です。北京五輪では日本の坂本花織さんが素晴らしい演技で銅メダルとなりましたが、それも世界規模での騒ぎとなったドーピング問題の影響があってのもの。下馬評はロシア勢の金銀銅が濃厚というものでしたし、仮に北京五輪出場選手がすべて欠場したとしてもまだまだ有力な選手が控えています。ロシア勢と競い合って金を獲るのは非常に難しいことでした。しかし、今大会は誰もいない。寂しいけれど、間違いなくチャンスです。

「よっしゃ、わしが金獲るで!」

……と、全員がなるのかと思いきや、チャンスの大きさゆえか、思いのほか各選手慎重な滑りです。自分のプログラムを抑制しながらしっかりと演じていこうという構えの選手が見受けられますし、チャンスであるがゆえに「ならば、まずは3枠獲りたい」といった別軸の希望も周辺ではよぎっている様子。五輪で出し切ったあとだけに、やろうとしてもやれないという側面はあるにせよ、思惑はさまざまだなと思います。

日本から登場の河辺愛菜選手も「まずはしっかり」という構えでの演技。トリプルアクセルを3本決めれば世界選手権のメダルまで届くんじゃなかろうかという状況ではありましたが、欲はかかずにこの日のショートはダブルアクセルで入ります。五輪での悔しさを踏まえるならば、再始動の一歩として妥当なところだったでしょうか。確実な一歩を踏み出した河辺さんは、ルッツ、フリップに「!」や「q」がつくなど細かい部分には乱れもありますが、大きなミスなく笑顔で演技を終えられました。

大舞台連続のチャンスは、逆に言えば大舞台連続のピンチでもあります。悔しさや落胆が普段の何倍もの重さでのしかかってくるという怖さもあります。そんななかで、五輪で感じた悔しさや落胆を振り払って、自分は世界の舞台でもちゃんとやり遂げられるんだと体感できたことは、この先のキャリアでも大きな財産となるものでしょう。できるならば、フリーでは自分が持てるものを出し切ることに挑んで、しっかりと決めて、今季を締めくくって欲しいなと思います。「私はできた」の積み重ねが、次の五輪につながっていくはずですから。

↓フリーで決められれば、「私は決められた」という財産を持って次に向かえる!

「決められるだろうか?」と「決めたことがある」の差は大きい!

失うものは何もない!恐れずに挑戦を!


そして金メダルを争う候補たちが集った最終グループ。日本の坂本花織さんと樋口新葉さんももちろん最終グループでの登場です。試合前の映像では「金メダルを獲りたい!」とハッキリと宣言する坂本さんの姿や、坂本さんと樋口さんが抱き合って互いの健闘を祈るような姿も記録されており、疲れのなかにも前向きな元気があふれていました。五輪のあとのもう一戦、最後まで頑張れるかどうか。

先に登場した樋口さんは、冒頭のトリプルアクセルは回避してダブルアクセルでの演技としますが、この安全策が裏目に出ます。トリプルアクセルを叩き込んだ身体は思ったよりも高く跳び上がってしまい、空中で早々に2回転半を終えてしまいました。放っておけばあと半回転はできそうな状態から、何とか氷に後ろ向きで降りてきますが、ややまわり過ぎてしまい、ステップアウトする形に。「送りバントで三振するくらいなら打てばよかった」的なミスで、もったいなかったなと思います。

それでも、五輪では悔しさも残った3回転の連続ジャンプは加点をもらえる見事な出来栄えで決め、ショートは7位での滑り出しに。まだまだ上位とは僅差の争いですし、トリプルアクセルという大きな強みもあります。4回転を跳ぶ選手は出ないだろう大会にあって、「物理で殴る」をやれる立場にあるのはトリプルアクセル習得者の樋口さんです。五輪をやり遂げたシーズンのご褒美、自力で獲ってもらいたいもの。フリー、燃えていきましょう!

↓世界選手権のメダルを知っているのは新葉さんだけ!

「獲れるだろうか?」と「獲ったことがある」の差を見せよう!

今季最高のフリーを演じて、いい締めくくりを!



さぁ、そして坂本花織さん。気づけば坂本さんは金メダルの本命候補として世界選手権を迎えていました。中野コーチに送り出されて演技に向かう姿は「威風堂々」です。力強く、自信にあふれています。仮にこんな状況でなかったとしても、金メダルを狙って戦うだけの覚悟と備えをしてきたのだ…そんな積み重ねが全身にみなぎっています。適度な欲と適度な緊張が調和しています。「面構えが違う」とでも言いたくなるような雰囲気です。

五輪では、そのときの特殊な「状況」にフリープログラム「WOMAN」が突き刺さりましたが、この世界選手権での特殊な「状況」に今度はショートの「グラディエーター」が突き刺さります。この大会がフランスで行なわれ、この素晴らしいプログラムを坂本さんに授けてくれた振付師のブノア・リショーさんが傍にいるというのも、奇跡のような巡り合わせ。運命が坂本さんに味方しているとさえ思います。

演技冒頭の速くて、大きくて、誰よりも加点をもぎとるダブルアクセル。やや傾きながらも体勢崩れずに決めたトリプルルッツ。演技後半の3回転の連続は圧巻の雄大さでした。自由を勝ち取った喜びを謳う最後のステップ、そして演技後の力強く静かなガッツポーズには「貫録」さえ感じました。五輪で得た銅メダルという大きな結果がさらなる飛躍へと坂本さんを後押ししているかのよう。仮にロシア勢がいなくても、この大会にはオリンピック銅メダリストのカオリ・サカモトがいる。その事実に何と救われることか。どれだけフィギュア界を救うんですかね、このヒーローは!

↓貫録ある「王者」の演技を見せる坂本さんと…


↓子どものようなカタカタピクピクを見せて喜ぶ坂本さんのギャップ!

「えー!えー?えー!?」
(※立ち上がってモニター凝視)
「えーーーーーーー!!」
(※手がパタパタし始める)
「ギャーーーーーー!!」
(※高速ステップでパタパタ)
「ハーハーハーハーハー」
(※息遣いでマスクがベコベコ)
「えっ!?はちじゅう!?はちじゅう!?」
(※私がですかと指差し確認)
「えーーーーーーー!?」
(※天国のほうを見ながらカクカク)
「えーーーーーーー!!」
(※靴がパコパコずっと鳴ってる)
「はちじゅう!!!???」
(※語彙力の著しい低下)
「わーーーーーーー!!」

無邪気という名の暴走wwww

五輪の79.84点とそんなに違うのかwww

違うんだろうけどここまで違うかねwww

コーチが「保護者の方」みたいになってるぞwww



坂本さんは史上7人目のショート80点台という高得点で、堂々の首位発進。2位には大きなサポーターを巻きながらもこのチャンスに懸けるベルギーのルナ・ヘンドリックスが入り、3位はアメリカのマライア・ベルという顔ぶれでの折り返しとなりました。数ヶ月前なら予想しがたい顔ぶれだったかもしれませんが、こんなこともあるのが人生だなと思います。僅差の最終グループと、トリプルアクセルで追い上げてくるだろう樋口さんも含めての混戦のメダル争い、わかっているのは「誰かが金を獲る」ということ。誰がこの大きなチャンスをつかむのか非常に楽しみです。できればそれが日本の選手だと個人的には嬉しいですね!



日本勢の3種目優勝まであるかもという期待を持って見守ります!頑張って!