Facebook あらため Meta が、議論を呼んだ「個人境界線」(Personal Boundary)の設定をユーザーが選択できるよう改定しました。

当初は一律に「アバター同士は4フィート / 約1.2mまでしか近づけない」だったところ、改定後は「フレンド以外には個人境界線有効」を既定に、オプションとして「フレンド含む全員に有効」「全員に無効」から選べるようになります。

個人境界線はMetaのソーシャルVRサービス Horizon Worlds および Horizon Venuesで、相手のパーソナルゾーンに侵入するハラスメントを防止するため設けられた見えない境界線。各人のアバターを中心に半径2フィート / 約60センチに設定されています。

個人境界線が設定されたことで他の人とは最短でも約4フィート / 1.2mまでしか近づくことができなくなり、ハイタッチなどの接触を望んでもかなり腕を伸ばさないと届かない、グループ自撮りしたくても画角に収まらないといった現象がおきていました。

新たに選択可能になったオプションは、

On for Non-Friends: フレンド以外には従来の個人境界線が有効。既定の標準設定。

On for Everyone: フレンドか否かにかかわらず全員に個人境界線が有効

Off: 個人境界線が無効。(ただし、狭い範囲には設定されている。これは4フィートの個人境界線が設定される前からのハラスメント防止策)

アバターどうしのやりとりでは、お互いが選択した設定のうち制約のあるほうが有効になる仕組み。つまり自分が無効にしていても、相手が有効にしていれば従来と同じ4フィートまで。有効にした側の半径2フィートだけに縮むわけではなく、お互いに有効にしている状態になります。

近くまで寄れるのはオフどうし、またはお互いにフレンドであれば「フレンド以外に有効」も含む組み合わせの場合。

メタバースのパーソナルスペースは半径60cm。Metaが『Horizon』アプリに個人境界線を導入 (2022年2月)

Metaは今年2月にこの仕組みを導入するにあたり、個人境界線は単なるソフトウェア上のハラスメント防止策に留まらず、ソーシャルVR空間におけるユーザー行動の新たな規範を定めることが狙いであると説明していました。

現実世界での人の行動は、まず社会的に共有された規範の意識によって、さらには明文化された法律や規則によって、最終的には物理法則によって規定されるのに対して、VR空間では運営者が物理法則そのものを書き換えて強制することが可能です。

そのような新たな環境で規範 (norm) を定めるとはどのような意味を持つのか、物理的に封じれば自主的に尊重する規範意識が育つのかは、現実と地続きのソーシャルメタバースを全社的に推進する Meta の影響力を考えたとき、大げさにいえばメタバースにおける統治論として興味深いテーマといえます。

Metaは当初、個人境界線にオンオフの設定を用意せず、全員に対して一律有効でスタートしたことについて、規範意識の涵養を助けるための意図的な選択であるとして、カスタマイズ等の選択肢については「将来的には」「追加する可能性について検討してゆく」とやや勿体ぶった表現をしていましたが、結局はユーザーからのフィードバックを反映し1か月あまりで選択肢を用意することになりました。

Introducing a Personal Boundary for Horizon Worlds and Venues