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2月28日から3月3日にかけて開催された「MWC Barcelona 2022」では、国を挙げた取り組みとして総務省主導で複数の企業がブースを出展していました。MWCでは以前からフランスやスペイン、イスラエルといった国が国別パビリオンを出展しています。日本もJETROがスタートアップ企業を紹介していましたが、今年のMWCではここに総務省が加わり、幅が広がった格好です。

▲MWCでは例年、各国が企業の海外展開を支援すべく、国別パビリオンを出展している。写真はMWCのおひざ元のスペインパビリオン

▲上のスペインと比べるとかなり簡素ではあるが、日本も総務省が企業に呼びかけ、ブースを出展していた

中でも筆者がおもしろいと思ったのが、toraru社の「GENCHI」というサービスです。同社は、1月のCESにも出展していたそうですが、そこで声をかけられ、MWCへの参加も決意。スピーディな意思決定がスタートアップらしいところです。出展内容に関しては、世界各国のモバイル業界の関係者が多いMWCの方がフィットしているのではと感じました。

GENCHIは、17年にβ版が始まり、18年にはFCCLや三井住友カードといった大企業とも提携しているため、すでにご存じの方はいるかもしれませんが、改めて紹介すると、その名の通り、“現地”にいる人と依頼者をつなぐプラットフォーム的なサービスです。現地にいる人は仕事を請け負う立場で、展示会に代わりに行ってブースを見せたり、観光地に行ってその様子を見せたりといったことができます。

▲総務省ブースの中でも個性的なサービスとして異彩を放っていたGENCHI

依頼を受けた側は、スマホでその様子をリアルタイムにレポートするというのがその仕組み。依頼者側は、音声で現地にいる人に対して指示を出せるのはもちろんですが、アプリにも十字キーやボタンが実装されているため、これを押して指示を出すことも可能です。ボタン操作は指示を受けた人が解釈して動くため、必ずしも思ったとおりに動くわけではありませんが、声以外でも現地にいる人とコミュニケーションを取れるというわけです。

▲写真はプレスリリースから。図のように、現地にいる人はスマホやタブレットを持って、依頼者の代わりに移動する

MWCでは、リアルタイムデモとして実際に日本とつなぎ、東京ビックサイト周辺の様子を映し出していました。日本とスペインでは距離が離れているにも関わらず、やり取りは比較的スムーズで、テレビに映し出していたこともあって臨場感も十分。十字キーが4方向しかないため、こちらと現地にいる人で解釈が違い、思わぬ方向を写してしまうこともありましたが、そもそも指示は音声で出せるため、ボタン操作はしなくても、大きな問題はありませんでした。

ボタンには、「つかむ」や「ジャンプ」などが割り当てられているといいます。現地でいきなりジャンプしている人がいる光景を想像するとかなりシュールですが、デモで試しに押してみたところ本当に飛びはねてくれました(笑)。実際にはあまり使う機会はなさそうですが、こうしたサービスは堅苦しくなることも多いだけに、遊び心があるのは導入の敷居を下げるためにもありだと思います。

▲会場では実際に東京とバルセロナをつないだデモが行われた。距離を感じさせないほど映像は滑らかだ

遠隔地と映像をつないで、あたかもその場にいるかのような体験をすることを「テレイグジスタンス」と呼び、さまざまな会社が取り組んでいます。特に、5Gを使ったソリューションとして、この手のサービスをよく見かけるようになりました。高速、低遅延といった回線の特徴を生かしやすいからで、大手キャリアもこうしたソリューションのサービス化に取り組んでいます。

一方で、テレイグジスタンスというと、遠隔地のロボットを操作してフィードバックを得られるソリューションが一般的。toraruの代表取締役、西川潤氏も、当初はロボットを使用したテレイグジスタンスのサービスを検討していたようです。ただ、ロボットは、人間と比べると移動の自由度にはまだまだ限界があります。メンテナンスやトラブル対応も含め、現地にはサポートのための人員も必要になります。

▲キャリア各社ともテレイグジスタンスに取り組んでいるが、大規模なサービス化となると、まだ課題も多い印象だ。写真はKDDIが18年に発表したもの

であれば、そこにいる人を操作してしまえばいいのでは……そんな逆転の発想が、GENCHIを展開するきかっけだったそうです。ある意味で力業で、本格的なテレイグジスタンスとは違って感覚の共有まではできませんが、そのぶんGENCHIは現実的。ロボットの進化を待たずにサービスインできるのも事実です。実際にサービスインできているのが、その証拠です。いくらで依頼するのかにもよりますが、場合によっては人の方がコストも安くなる可能性があります。

ギグワーカーに依頼をかけるという観点では、Uber的な側面もあり、それをテレイグジスタンスと結びつけることで、おもしろいサービスになったと言えるかもしれません。ロボットを介するよりも現実的で生々しいサービスではありますが、5Gを生かしたいキャリアとタッグを組めば、サービスの広がりが出てきそうな印象も受けました。

▲GENCHIのサイトはこちら。どこかに行ってほしい依頼者と、実際に現地に出向く人をマッチングする仕組みで、Uber的なサービスとも言える

冒頭でMWC向きと書いたのも、そのためです。ご存じのように、世界各国とも、5Gのユースケースを(まだ)模索している状況で、MWCでもキャリアブースには様々なソリューションが展示されていました。

GENCHIも、その力をフルに生かすには、高速、低遅延な回線があった方がよく、まさに5G向き。先の西川氏によると、MWCでは商談も進み、出展の成果はあったようです。動画をリアルタイムで送ることになるため、通信量も増え、かつ移動もするため、モバイルキャリアにとってもうれしいサービスと言えるでしょう。