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「降りてない」の感じ、わかりました!

朝、布団のなかでむにゃむにゃしながら何となくスマホをいじってニュースとかを見ている時間、あれは「起きている」でしょうか、それとも「起きてない」でしょうか。解釈が分かれる問題だと思いますが、僕は「起きている」認定派です。目は開いてますし、意識もありますからね。スマホ見てるし。どう考えたって起きてます。

しかし、世の中には「いつまで寝てるの!」と怒ってくるカーチャンもいますよね。そちら視点からすればアレは「起きてない」なのでしょう。身体は布団のなかにあるし、横たわっているではないかと。むしろスマホなんか見てないで「さっさと起きなさい」とハッキリと「未起き」である認定をしてくるかもしれません。

しかるに羽生結弦氏の「4回転アクセル降りてない」はどちら派なのか。僕はそのモノサシに「?」マークを押して議論を先送りしていたのですが、早速アッサリ答えが出ました。23日に全日本フィギュア公式練習において、羽生氏は4回転アクセルに挑戦しました。その映像を見て僕は机を叩きました。「降りてるじゃないか!」と。

都合3回トライした4回転アクセル。1回目は両足着氷で、回転も2分の1回転足りないように見えました。2回目、これも両足着氷で2分の1回転足りないでしょうか。そして3回目、これも前向きに近い形で降りてきており回転不足ではあるものの、かなり回っており、着氷は両足というよりは「フリーレッグもついた」といった程度。成功と胸を張って言えないまでも、これを試合で跳べば「4A<」とプロトコルに記載されてもおかしくないなと思いました。

↓会場で、肉眼で見たら「4A決まった!」と思うくらいの惜しさでした!

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この練習を見て理解しました。「降りてる・降りてない」モノサシ問題は、僕としては「プロトコルに4Aで記載されたら、それは4Aなのでは?」という線で使い分けていましたが、羽生氏にとってはクリーンに成功と言えるレベルで決まらないと「降りてる」には相当しないのであるということを。先日のインタビューでは「降りてるか?」「降りてない!」というやり取りでしたが、「ルール上4Aと認定される範囲のジャンプを転倒せずにやり遂げたことはあるか?」と問えば、答え方は多少違ったのだろうなと思います。羽生氏のモノサシはカーチャンタイプだったのです(※知ってた)。

そして、この公式練習にはもうひとつ大きなトピックがありました。トリプルアクセルにセカンドジャンプでトリプルループをつけるコンビネーションを実施していたのです。男子選手でセカンドループをつけるのはなかなかに大変なことなのでしょうが、そこは「世界初の4回転ループを決めた」羽生氏です。過去には実戦でこそないものの、3連続ジャンプの3つめにトリプルループを入れるなんてこともしていましたので、やろうと思えばできて当然。コチラはすでに実戦投入段階といった仕上がりで、いつ試合に組み込まれてもおかしくないなと思うものでした。

「4A」と「3A+3Lo」が実戦を見据えたものだとしたとき、ひとつの構成が浮かび上がってきます。

昨年の全日本をベースにすれば、フリープログラム「天と地と」のジャンプは「4Lo、4S、3A+2T、3Lo、4T+3T、4T+1Eu+3S、3A」という構成でした。もし、ここに4回転アクセルとセカンドループという選択肢を加えると、「4A、4Lo、4S、3A+3Lo、4T+3T、4T+1Eu+3S、3A」という構成も見えてきます。つまりは2Tを4Aに置き換えるのですから、単純に言えば基礎点で11.20点上がります。それだけではなく、上記の構成の場合「4Aが回転不足で4A<となり、着氷乱れてGOEで-5がついた場合」でももとの構成より基礎点3.70点上がります。

もちろん、世界初の4Aですから転倒のリスクなども考えればどこにでも入れられるものではないでしょうし、中盤の構成を変えると演技全体の印象も変わってしまうので話は単純ではありませんが、計算上はほぼリスクなく4Aチャレンジができるのです。なにせ「2T」との入れ替えですから、それなりに決めさえすれば何跳んだって上がるのです。

なお、上記の構成だと「3F」や「3Lz」が未使用で余っていますので、咄嗟の判断で「4A⇒3A」のような形にした場合も、最後に3Lzを跳ぶことにしておけばまったく混乱なく対処できます。もちろん最後の最後にチカラがまだ残っているのなら、もう一度4Aチャレンジをすることだってできます。この自由度の高さと、成功したときの伸び代の大きさ。アクセルからのセカンドループが実施できる「エッジジャンプの達人」なればこその、異次元の構成と言えるでしょう。

↓北京、わかっておるな!?フェアな氷を張っておくんやぞ!


妙にカチコチとか、妙にビシャビシャとか、そういうのじゃなくて!

いい感じのヤツを!



こういった想像が元気に広がるのも、4Aが相当に現実味があると確認できたからこそです。プラスの出来栄えまで持っていけるかは未知数ですが、大崩れにならない程度に跳ぶことはできそうですし、僕のようなモノサシの持ち主から見れば「あ、もうできてる」とさえ思います。その状態を厳しいモノサシの持ち主は「中途半端」と表現するのでしょうが。全部が決まったらどこまで伸びていくのか。点数という意味でも、感情の起伏という意味でも、ますます楽しみになるような公式練習でした。

まぁ、あえて乙女の小言を呈するとすれば、こんなに元気なのであるなら、手紙のひとつでも書くというか、白い壁の前から「元気に練習しています」みたいな報告があるとか、「足の神様は一旦大丈夫ですよ」というご案内があるとかしてもいいんじゃなかろうかと思いもしましたが、便りがないからこそ数十万群衆の勇壮な叫びも上がったのかなと思います。まだ負傷で立てないのではないかとまで案じていた王が、「伝説の武器を見つけたぞ、あとは掘り出すだけ」「新しい魔法を習得した」「ん?足?あぁ大体治ってるよ言ってなかったけど」「たぶんワシの歴史のなかでも今のワシが一番強いね…」「本気で天下を獲りにいく」と意気揚々ご帰還されたのですから。

おかげさまで僕もすっかり元気になりまして、木曜日は会社にて会う人会う人に「明日は休みます」「明日は休みです」「明日休むから何もしません」「電話に出られない場所にいるので電話には出ません」「僕は明日休むので、コレ全部今日終わらせてください」とキッパリと言ってまわってやったくらいです。未来に楽しみがあると、こんなにも人は元気になり、強くなれるのかと驚きます。

ショートで会える。

フリーも会える。

その前後が忙殺で破滅に向かっている予感もしないではありませんが、まぁいいでしょう。こういう時間のために、日々の暮らしがあるのです。羽生氏が演技を終えたあと、ドーンと立ち上がって、心で「あああああああ!」と叫んで、鳴り止まない拍手に包まれる。久しくなかった「歓喜」というものに触れてきたいと思います。もしかしたら世界で初めて羽生氏の4A(非公認ながら)を見た歴史の証人になれちゃうかもしれませんね!

↓さすが「今が一番」の羽生結弦2021!これまでよりも高く跳び、速くまわれるようになっていた!




4Aはこの世に存在すると確信しました!これは跳ばずに終えたらダメです!