交換トレードが発表された阪神・中谷将大(左)とソフトバンク・二保旭【写真:荒川祐史、藤浦一都】

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チーム編成で左打者に比べて右打者が少ないソフトバンク

 ソフトバンクの二保旭投手と阪神の中谷将大外野手の交換トレードが成立したと2日、両球団から発表された。双方の思惑が一致し、先発、中継ぎ双方をこなせる右投手と、2017年に20本塁打を放った実績を持つ右打者のトレードがまとまった。

 現在のチーム事情から、このトレードが成立した両チームの思惑を探ってみよう。

 ソフトバンクにとって二保は先発、中継ぎ双方で起用できるユーティリティ性ある投手だった。今季は1軍で2試合に登板して0勝1敗だったが、2軍では11試合に投げて4勝1敗、防御率2.57と好成績。1軍でのチャンスをうかがっていた。

 だが、ソフトバンクの先発ローテは現在、マルティネスとレイの両助っ人に加えて、東浜、武田、ベテランの和田、一時的に中継ぎ調整中の石川がおり、週明けにはエースの千賀も怪我から復帰する。2軍では若い笠谷や大竹、スチュワートJr.らも控えている。盤石ではないが、候補はそれなりにいる。

 一方で、積年の課題が“右打ちの野手”だ。レギュラーを見ると、中軸を打つ柳田、栗原、中村晃はいずれも左打ち。松田、川島はベテランで、この2人に続く右打者となると真砂になる。チーム全体で見ても、左打者が多く、右の大砲となるとリチャードくらいしかいない。

16年ぶりの優勝を狙う阪神は投手層にさらなる厚みを

 こと“外野手”となると、柳田、栗原、長谷川、真砂、怪我で離脱中のグラシアルらがおり、決して層が薄いわけではない。それでも、1軍の戦力にもなり得る投手の二保を放出し、右打者の中谷を獲得に踏み切ったところに、ソフトバンクの現在のチーム編成の状況がうかがい知れる。

 現在、セ・リーグで首位に立つ阪神はここに来てやや勢いを失いつつあり、巨人の追い上げにあっている。もともとチームのウリは投手力だが、16年ぶりの優勝を狙うためには、先発、中継ぎともにもう一回り厚みをもたらしたいというところだったろう。先発ローテは西勇、青柳、秋山、助っ人のガンケル、アルカンタラ、ルーキーの伊藤将と揃うが、この6人に続くのがチェンや2年目の西純とやや心許ない。
 
 中継ぎも岩崎が調子を落とすなど、ここにきてやや不安が生じてきている。そこで先発、中継ぎ双方で投げることができ、ソフトバンクで出番に恵まれていない二保に白羽の矢を立てた格好だ。

 一方で、中谷のポジションである外野には今季ドラ1ルーキーの佐藤輝が定着し、活躍を見せている。中堅の近本、左翼のサンズも不動の存在で、レギュラーは固まっている。現に、昨季は70試合に出場していた中谷の今季の1軍出場はなし。また、2軍には高山や板山、陽川らもおり、中堅クラスの野手はやや飽和状態。若い井上らも育ってきているという状況にあった。

 阪神にとっては優勝を狙うための即戦力としての補強、ソフトバンクとしては即主力とまではいかないものの、チームの弱点を補うための補強。そんな思惑が見えるトレードではないだろうか。(Full-Count編集部)