仕事の「パートナー」と、うまく付き合えてますか?

補いあって楽しく働ければいいけど、相手の嫌なところばかり目についたり、イラっとしてしまったり、いい関係を築くのは難しい。

今回“コンビ愛”をテーマにお話を聞いたのは、アインシュタイン・河井ゆずるさん。

いい話が聞けるかと思いきや、「コンビ結成の誘いは断った」「結成してからもずっとキレてた」と、“愛”っぽい話はあまりしてくれない河井さん。

彼らの間にある愛のかたちとは…?と聞いてみると、「仕事で成果を出すコンビ」の真髄が垣間見えてきました。

〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉


【河井ゆずる(かわい・ゆずる)】1980年生まれ、大阪府出身。2010年に、NSCの後輩だった稲田直樹と「アインシュタイン」を結成。2016年に「上方漫才協会大賞大賞」大賞、2018年に「NHK上方漫才コンテスト」最優秀賞受賞。2020年より活動拠点を東京に移し、さまざまな番組で活躍中

天野:
今日はコンビ仲をテーマにお話をおうかがいできればと思います。

河井さん:
……

天野:
河井さん?

河井さん:
…ドッキリですか?


違います

河井さん:
あっ違うんや。でも状況的には完全にドッキリのウソ取材ですけどね…

東京ではもう、出口をまたぐまで信じられないです。


水ダウがトラウマになっているっぽい河井さん

「見た目がテレビ的にはNG…うーん、もしくは…ギリギリNGかな…」

天野:
コンビ結成は、稲田さんからアプローチがあったんですよね?

河井さん:
そうですね。

当時、僕はバーでアルバイトしてたんですけど、朝5時くらいに稲田が来て、「コンビ組んでください」と。

そこから2時間くらい話して…

天野:
それで結成…

河井さん:
いえ、断りました。


ひえ

河井さん:
「面白い後輩やな」とは思ってたんですけどね。

ちょっとテレビ的にはキツいやろうな…って思って。

天野:
テレビがキツいというのは、どんなところが…?

河井さん:
わかりませんか?


わかりました

河井さん:
当時、稲田は吉本の社員さんに「見た目がテレビ的にはNG…うーん、もしくは…ギリギリNGかな…」って言われてて。

大か小なだけでどっちもNGやないかと(笑)。

でも、稲田の誘いを断って家に帰ったら、そこから数日謎の高熱にうなされたんですよ。「これ、アイツにたたられたんか…?」って…


怪談じゃん

河井さん:
断って半年くらいはピンで活動してたんですけど、2010年にM-1グランプリが1回終わるってなって。それで、稲田とお試し的な感覚で組んだのがはじまりです。

「とにかくキレつづけてた」河井さんが“コンビ仲なんて悪くなっていい”と考えた理由

天野:
コンビを組んでからは、どうやって“コンビ愛”を築いていったんでしょうか?

河井さん:
うーん…正直、「めちゃくちゃ仲がいいコンビ」みたいなのを期待されてたら、僕らはけっこう違うタイプのコンビかもしれません。

僕、相方になってからは稲田にひたすらキレてましたから。


「怒りつづけていた」という河井さん

天野:
キレるというと?

河井さん:
いい武器を持ってるのに、あいつは“成果を出すためにこうしよう”という考えがまったくなかったんですよ。

まず、とにかくだらしなかった。当時は、朝、昼、夕方、夜…どんな時間の仕事にも寝坊して遅刻してくるんですよ。お前、逆にいつ起きてんねん?と(笑)。

めちゃくちゃ怒って、「日本一音が大きい目覚まし買え!!」って言ったのに、それでも遅刻してくるんですよ。「音が大きすぎて気絶してました」って…

天野:
(エピソード多いな…)

河井さん:
あとは見た目のことですよね。武器なのは間違いないけど、肌が弱いなら食べ物に気をつけてもうちょっときれいにしろとか、歯ガタガタすぎるから治せとか…

一度、ダウンジャケット着て舞台上がってきたんですよ。ファー付きの。そのときも「見た目に情報多すぎるやろ!」って怒りました。

もう…何も考えてなかったんですよ。



河井さん:
5年はガマンしようと。5年でアイツが変わらなかったら、解散しようと思ってました。

あと、前の月の給料を1円でも下回ったら、すぐ解散しようっていうのも決めてました。

天野:
めちゃくちゃストイックじゃないですか…

どんな感じでアドバイスされてたんですか? ときには「褒めもまじえつつ」みたいな?

河井さん:
アドバイスって言ったらだいぶ聞こえはいいですけどね(笑)。

とにかくキレまくって、みんながおる前でも注意して、って感じですよ。

天野:
そんなことしたら、仲悪くなりませんか…?

河井さん:
なるかもしれませんね。

でも、「仲悪くなってもいい」と思ってました。

天野:
それはなぜ?

河井さん:
“一緒に仕事をしようと組んだ以上、相方は僕の人生を半分背負ってる”と思うからです。



河井さん:
うちはオカンしかいなくて、高校卒業してから僕は実家にお金を送ってて。

だから、「お前の遅刻で仕事がなくなったら、俺が実家に送る金を補填してくれるのか?」って言ってました。

天野:
河井さん、『実家ビンボー芸人』でお母さん孝行してるエピソード話してましたもんね…

河井さん:
まあまあ…。でも僕も、同じように彼の人生を背負っているつもりでやってますしね。

責任があるからこそ、「仲よく」なんて思わなかった。

“いっしょに仕事して何かを目指す以上、お互いの人生には責任があるぞ”っていうのはすごく思ってますね。


河井さん、めちゃくちゃアツい人だった

天野:
結果的に、稲田さんはその5年の間に変わっていったんでしょうか?

河井さん:
そうですね。「もうちょっと見た目をテレビ的にまろやかにしろ」って言い続けて、「104万円かけて増毛に通いだした」って話してくれたときはうれしかったですけどね。行動に移したんだなと。

ただそれ、僕らが月1でやってたトークライブのなかでさらっと言うんですよ。

もうちょいこう…テレビで密着してもらうとかあるやろ!ってそこも怒ったんですけど(笑)。

「仲がいいってわけじゃない」と言いつつ河井さんが語る“相方のすごいところ”



天野:
ちなみに、河井さんから見て“まわりがまだ気づいてない稲田さんのすごいところ”はありますか?

河井さん:
稲田は本当にポジティブなんですよね。そこは尊敬しますよ。

ブラマヨの吉田さんとか、容姿イジりに反発して笑いにするじゃないですか。でも稲田の場合は、自分をイジってきた人よりも、さらに自分のことをイジる。

前に営業してるときに、小学生の男の子が稲田に「お前顔キモいねん!」ってヤジってて。普通ちょっとイラッとするじゃないですか。

天野:
稲田さんはどうしたんですか?

河井さん:
ニヤリと笑って「顔だけちゃうよ」って返したんです。

怯えてましたね。小学生。

アイツは相手を否定せずに吸収する。異常にポジティブなんですよ(笑)。

もし、もう一度誰かとコンビを組むなら…?

天野:
では最後の質問ですが…

もし昔に戻っても、もう1回稲田さんとコンビ組もうと思いますか?

河井さん:
いやぁ! それはしんどい!


「組む」って言ってくれよ…

天野:
え~、そうなんですね…

なんでイヤなんですか?(笑)

河井さん:
相方、魚でたとえるなら“くさや”みたいなヤツじゃないですか…

うまさを知ればクセになるって言いますけどね。人生もう1周するとき、くさや定食のおかわりするかなぁ…っていう(笑)。

次は王道の魚が食べたい…。塩サバ定食みたいな…



河井さん:
もちろん、今は楽しいですよ。稲田とコンビ組んだのを後悔してるってことはないです。

でも、あの地獄の5年を思うとなあ…!


リアルなコメントで締められました。最後は河井さんのイケメンショットをお楽しみください

コンビ愛を語るには“照れ”があると話していた河井さん。

「もう一度コンビを組むのはしんどい」という即答には笑いましたが、長い時間を越えて培ってきた取りつくろわない愛があるように感じました…!

〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/取材・構成=いちかわあかね(@ichi_0u0)/撮影=森カズシゲ〉

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河井さん:
「最高の相方」って難しいですけど…

「思いやりがあるかどうか」が大事な気がしますね。ベタやけど。

僕は、そいつが“家族のことを大事にできてる人か”っていうのを見ると思います。それがあれば、まあクリアというか。

天野:
そこなんですね。稲田さんも、そういうところがある?

河井さん:
そうですね。あの見た目でそれもなかったら怖いでしょ。

っていうのは冗談ですけど、でも多分“やさしいご両親に育ててもらったんやろうな”っていうのはすごく感じるので。そこは長年やるには助かってますね。