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唯一無二の存在 fp シリーズに新たな存在が誕生した。fp が世に誕生した時に往年のカメラユーザーは久しぶりにひと味違う「面白い!」と思えるカメラが出てきたと感じた人が多いのではないだろうか。

世界最小・最軽量フルサイズミラーレスカメラで、T&O(ティールアンドオレンジ)など特徴的なカラーモードを搭載していることに魅力を感じ、写真をさらに一歩楽しむ機会になった人は多いのではないだろうか。今回その fp シリーズに 「SIGMA fp L」が新たにラインナップされ、「面白い!」に更に選択肢が増えた。先に世に送り出された Iシリーズレンズ も含め選択肢がどんどん増えている。

SIGMA fp L(Amazon)

フルサイズ、高画質なのにポケッタブルなカメラであるfp Lを1週間程持ち歩いて撮影したので作例をご覧頂ければと思う。6100万画素の高画素表現は奥行きや立体感といった階調表現を更に豊かにしてくれたのはもちろん、撮影していて際立ったのはコントラストAFに加え 、像面位相差AFを採用したハイブリッドAFは小気味がよく、気持ちのいい撮影ができた。

6100万画素の高画素カメラということで風景写真を中心に撮影している中で、望遠レンズ(SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG DN OS | Contemporary)を使用しながら更に寄りたいという場面があった。もっと望遠のレンズが手元にあればよかったが、持っていけるレンズにも限りがある。

そこでふと fp L には高画素だからできる「クロップズーム」があることを思い出し、実際に撮影をしてみた。1枚目が 1倍 6100万画素 での撮影、2枚目がクロップズーム2倍 1510万画素 で撮影した風景である。もう陽も沈み始め、少し靄がかり水墨画の様な幻想的な雰囲気を捉えたくてシャッターをきった。

光も少なくカメラにとっては不利な状況のなかしっかりと雰囲気を表現してくれている。高画素の写真表現を実現することも1つの目的だが、6100万画素というキャンバスを使ってどう使い倒してもらえるかという選択肢をユーザーに提供することも目的の1つだということも SIGMA は明言している。まさにその言葉を実感した瞬間だった。ユーザー側も 6100万画素 という自由を与えられ、それをどう使いこなすか試されている気がする。

クロップズーム1倍
クロップズーム2倍

fp ユーザーの中には 21:9 の画角を好んで撮影する人が何故か多い。私も fp を使って 21:9 の画角で日常をシネマティックに切り撮るユーザーの一人。1つだけ懸念していたことは 21:9 という画角に切る撮ることによって当然画素を捨てていることになる。fp L ではそもそも 6100万画素 という高画質からの 21:9 切り出しになるので、シネマティックな表現においても表現力の幅が担保されている。朝靄の中から現れた山の表情は 21:9 で映画の一場面の様に捉えたいととっさに 21:9 で撮影し、fp L は見事に表現してくれた。早朝の陽の出る前、空のグラデーションと霜が降りた田んぼの様子を 21:9 でも繊細な表現力を発揮してくれた。

fp L には新たに「パウダーブルー」と「デュオトーン」というカラーモードが追加された。結論から言うと、T&O(ティールアンドオレンジ) に続く「当たり」のカラーモードを発明してしまったのではないだろうか。

パウダーブルーは爽やかで、明るく透明感のある写真表現になる。ハイキー気味に撮るとパウダーブルーの特徴が活かされ爽やかな仕上がりになるが、ローキー気味撮るのもシャドーにブルーが混ざったような表現で深みのある写真表現の様に思える。また個人的には逆光での撮影でも綺麗なブルーとシルエットの表現が印象的でおすすめしたい撮影方法だった。写真表現としてとても気に入って、作例も自ずとパウダーブルーの写真が多くなった。

意外にも撮る楽しさを与えてくれたのが、画像の配色を印象的な 2色のグラデーションに置き換えるカラーモード デュオトーン。シンプルな構図で、明暗のはっきりした画を撮るととても印象的でグラフィカルな写真表現ができる。

ファインダーを覗きながら写真を撮っているというよりデザインをしているという感覚に陥るなんとも面白い体験だ。一度ハマり出すとどんなシーンがデュオトーンに合うのか試したくなり、これだ!というデュオトーンが撮れた時は気持ちがいい。

最後に、今回 fp L と同時に発表になった外付け電子ビューファインダー(EVF-11)について触れておきたい。正直 fp での撮影に慣れていた自分にはそんなに魅力的には映っていなかった。だが90度のチルトが可能で、約368万ドットの有機ELパネルを使用したファインダーは、特に昼間の撮影では重宝した。電子ビューファインダーに映し出される画が綺麗で撮っていて気持ちがいいし、没頭できた。これは特に風景撮影をされる方にはお勧めしたい。

ただ、fp L では6100万画素になったことによる消費電流の増加に合わせてEVFへの電源供給が増える分バッテリのもちは fp を使用している人にとっては悪く感じるかもしれない。それでもこの電子ビューファインダーは写真に集中して楽しむには価値がある。

カメラはまず持ち歩かないといい写真が撮れない。そして、写真を愛する人々にとってそれはいい写真が撮れるカメラでなければならない。fp シリーズはそんな想いを両立させてくれる。fp L の「L」には跳躍を意味する「Leap」、自由を意味する「Liberty」という意味合いが込められている。

この「L」は高画素化された fp L でも fp と同じようにポケッタブルで機動性を損なわず、表現の自由と飛躍を与えてくれたいいカメラだった。そして何より SIGMA fp シリーズのシルエットに惹かれる。fp/fp L はやはり、普段から持ち歩きたいと思わせてくれるカメラだ。

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