ウイスキーやビールの専門家は「安物と高級品を百発百中で見分けることが可能」だという検証結果がありますが、普通の人にワインを評価してもらった別の検証では、「一般人にワインの高い安いを見分けるのは不可能」という結果が出ています。ワインをよく飲んでいる人に、本来とは全く異なる値札を付けて試飲してもらった別の実験により、「安いワインに高値をつけると評価が高くなる」ことが確かめられました。

Price information influences the subjective experience of wine: A framed field experiment - ScienceDirect

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0950329321000501

Cheap wine tastes better if we're told it's expensive, study finds | Daily Mail Online

https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-9350177/Cheap-wine-tastes-better-told-expensive-study-finds.html

Higher wine price can enhance taste, says study - Decanter

https://www.decanter.com/wine-news/wine-price-taste-study-454675/

スイス・バーゼル大学でプラセボ効果の研究をしているイェンス・ガーブ教授の研究チームは、同学のイベントに訪れた参加者140人を対象に、3種類の価格のワインを飲んでその味を評価してもらう実験を行いました。参加者はいずれもワインの専門家ではありませんでしたが、140人中135人は事前の質問に「定期的にワインを飲んでいる」と回答した人だったとのこと。



実験に使用されたワインは、全て2013年に作られたイタリア産赤ワインでしたが、価格には大きな開きがありました。具体的には、以下の3種類です。

ワインA:モンテプルチャーノ・ダブルッツォ:1本10スイスフラン(約1162円)

ワインB:ヴィッラ・ドノラティコ ボルゲリ:1本32スイスフラン(約3719円)

ワインC:ファットリア・レ・プピッレ サッフレディ:1本65スイスフラン(約7555円)

実験では、ワインAからCまでのワインを2杯ずつ、合計6杯を飲んでもらいました。各ワインを注いだ2つのグラスのうち、片方にはラベルが貼られておらず、片方には価格が記載したラベルが貼られていました。ただし、ラベルの中には正しい価格が記載されているものもあれば、別のワインの価格が記載されたものもあったとのこと。



6杯のワインを飲み終えた各参加者に、ワインから感じた「心地よさ」を評価してもらった結果、ラベルがない場合は全てのワインの評価に変わりはありませんでした。これは、「心地よさ」の評価はワインそのものの味ではなく、ワインの価格に強く影響を受けることを示しています。

一方、低価格のワインAにワインCの値札がついていた場合、値段に引きずられて「心地よさ」の評価も上がったとのこと。逆に、ワインCにワインAの値札をつけても、「心地よさ」の評価が落ちることはありませんでした。つまり、安いワインは高い値札によりおいしくなった一方で、高いワインに安い値札がついても味が損なわれることはなかったことになります。

また、参加者には「心地よさ」だけではなく「味の濃さ」も評価してもらいましたが、常に実際の価格が高いワインほど「味が濃い」と評価されるという結果になりました。このことから、「味の濃さ」に関する評価は、値札の有無や値札に書かれた価格の影響を受けないことが示唆されています。

この実験結果についてガーブ氏は「この実験では、ワインの値段を高くすればおいしいと評価されることが分かりましたが、ワイン会社は既にそのことを知っていたようです」とコメント。また、研究チームは論文の中で「ワインの真の味は、ワインの中にあることもあれば、価格に左右される部分もあるのかもしれません」と結論付けました。