就職活動をする学生にオススメしたいホワイト企業の調査結果を分析します(写真:ブルームバーグ)

1位 グーグル
2位 Facebook Japan
3位 三菱商事
4位 三井物産

5位 サントリーホールディングス

IT企業、商社、飲料メーカーが並ぶこのランキング。いったい何かと言うと、働く人にやさしく、就職活動をする学生にオススメしたい「ホワイト企業」と呼ばれる企業のトップ5である。

誰だって、長時間労働と低賃金で、働く人を“搾取”する「ブラック企業」より、残業が少なくても高収入で、働く人の生きがいを大切にする「ホワイト企業」に就職したいだろう。でも、その違いを普通の就活生が見抜くのはなかなか難しい。実際に働いてみないとわからないこともある。

そこでホワイト企業の調査・評価を行う「ホワイト企業総合研究所」は、現役社員のアンケートや転職者の口コミを、調査会社を使って集めている。同時に、残業時間、有給休暇取得率、給与や福利厚生、社員のスキルアップへの投資、財務指標といったデータを調べ、これらすべてを100点満点で数値化。全国約1万3000企業のランキング上位100社を毎年公開している。

前年は三菱地所がトップ

冒頭に紹介したのは、来年春卒業する学生に向け、ホワイト企業総合研究所が2月25日に発表した「2022年卒版 新卒で入りたい一流ホワイト企業ランキング」のトップ5だ。これを1年前のトップ5と比較すると興味深い。

1位 三菱地所
2位 グーグル
3位 三井物産
4位 三菱商事
5位 味の素

三菱地所は去年まで3年連続でトップだった。今年も8位だから上位ではあるがトップからは退き、代わりにネットで検索と言えば「ググる」と呼ばれる、グーグルがトップに。そして2位にやはりIT業界の雄、Facebook Japanがランク外から急上昇している。これはなぜなのか。

ホワイト企業総合研究所や就活塾「ホワイトアカデミー」を運営する、Avalon Consulting(アバロンコンサルティング)の代表、竹内健登さんは言う。

「新型コロナウイルスの影響です」

竹内さんによると、大手デベロッパーは都心に優良物件を多数抱え、賃貸で安定した収入が稼げる。高給で離職率も低いので人気の就職先だ。ところがコロナで在宅勤務が増えた。オフィス需要が減ってテナントの空室率が高まる傾向にある。

一方、企業のテレワークやオンライン会議などの増加、自宅でも巣ごもり状態が増えたことは、IT業界全体の順位を大きく押し上げた。トップ2社以外にも18社が上位100位にランクインしている。同様にコロナの影響としては、メーカー、広告業界、ホテル業界などが軒並み順位を下げている。

竹内さんは指摘する。

「これほど1つの要素でランキングが入れ替わることはめったにありません。コロナは就活にも大きな影響を与えています。でもランクが下がったと言ってもトップ100の中での話ですから、競争率の高い人気企業であることは変わりませんけどね」

総合商社が上位にランクインする理由

そういう中で三菱商事、三井物産など商社は変わらず上位にいる。伊藤忠商事(12位)、住友商事(21位)、双日(72位)、兼松(88位)もランクインしている。

「総合商社は海外で大きなビジネスをしたい人にオススメです。ビジネスパーソンとして長期的にマネジメントに関わっていくようなスキルが身につきますから、自分を成長させられる。そこがホワイト企業としての魅力ですね」

トップ100のリストでひときわ目立つのが、リクルート。31位にランクインしているのをはじめ、リクルートと名の付くグループ企業が計6社も上位100位に入っている。

「リクルートは社員や転職者へのアンケートで極めて評価が高いんですよ。社内での成長も、転職・独立もしやすいと。上司に独立を申し出たら『メシに困ったらうちの案件やっていいよ』と言われた人もいたそうです。独立教習所みたいな側面があるんですよね。

若いうちにどんどん辞めていくから、年配者があまりいない。会社にとっても、若くて人件費の安いうちにバリバリ働いて、給与が高くなる前に独立していくから、どちらにもメリットがあるんですよ」

筆者の周辺でも「元リク」と呼ばれるリクルート転職者は目立つ。いずれも事業を成功させ、元リク同士の結束も固い。確かに就職先として魅力だが、竹内さんによると「自分で考えて行動できる人しか採りませんから、就活は楽ではありませんよ」とのことだ。

さて、このようなホワイト企業に入ることができればいいのだが、こういう企業は当然、競争率が高い。ホワイトアカデミーは就活生への就活指導もしているが、その点、どのようにアドバイスするのだろう。

「それはずばり“隠れホワイト企業”を同時に狙わせるんです」

ここまで名前をあげたような企業は広く知られている。だから就活生が集まりやすく、競争率も高くなって、なかなか入れない。だが、トップ100にランクインしている企業でも、それほど一般の人に名前が知られていなくて、狙い目の会社があるのだという。

こういった“隠れホワイト企業”の内定を獲得しながら、本命の一流と呼ばれるホワイト企業にも挑戦していくのが、ホワイトアカデミー流の就活戦略なのだという。

例えば、62位にランクインしている井上特殊鋼という大阪の会社。私は大阪に住んでいるが知らなかったし、初めて目にする人も多いのではないか。この会社は特殊な鋼材を専門に扱う商社で、取引先はすべてメーカー。普通の消費者を相手に商売することはない。

こういう会社はBtoBと呼ばれる。BはBusiness。つまり企業が企業に商品(サービス含む)を提供するビジネスモデルだ。消費者(Consumer)を相手にするBtoCのように個々の消費者に対応する必要が比較的少なく、CMなどの広告宣伝費を大量に投下する必要がないため利益が出やすい。

加えて、大口の取引先に安定して商品を供給することができるので、勤務形態も急な変動が起こりにくく、残業なども発生しにくい。だから「ホワイト企業」の条件を満たすのだが、社名がそれほど知られていないから就活生にとって狙い目というわけだ。本社は大阪だが、東京をはじめ全国に支店や営業所を構えているため勤務地も幅広い。

大手企業のグループ会社も狙い目

このほかにも、ホワイト企業にランクインしている大手企業のグループ会社は狙い目とのこと。そこもランクインしている大手企業と同様にホワイト企業であることが多く、その割に大手よりは入りやすいからだという。

では、私が長年所属してきたマスコミ業界はどうだろう。竹内さんは苦笑しながら答えた。

「マスメディアは残業が多いですからね。どうしてもホワイト企業のランキングからは外れますね」

実際、今年のトップ100の中に入っているマスコミ企業は日本テレビ放送網(86位)だけ。コロナでスポンサーが減ったことも打撃だったようだ。

一方で、ネットメディアやネット広告の会社は伸びている。35位にはVOYAGE GROUPというネット広告の会社がランクインしている。これも今の時代のトレンドだろう。

ホワイト企業ランキングを眺めて感じるのは、就活は世の趨勢を反映するということ。採用する企業側も大きな変化が求められそうだ。