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人と妖、交わらないはずの両者の素朴で繊細な心の機微を描くTVアニメ『夏目友人帳』の最新作である劇場版「夏目友人帳 石起こしと怪しき来訪者」は、ファンからの人気の高い2つの短編エピソードがアニメとなって優しく温かな想いを届ける。その映画のEDテーマとなったのがAnlyの「星瞬〜Star Wink〜」。星降るような柔らかで優しい1曲について本人に話を聞いた。

――新曲「星瞬〜Star Wink〜」が劇場版「夏目友人帳 石起こしと怪しき来訪者」のEDテーマとなっています。夏目友人帳の話があって生まれた1曲なのでしょうか。

Anly 「夏目友人帳」のために書き下ろした曲もあって、この曲も含めて数曲提出をしたところ、制作の方が「星瞬〜Star Wink〜」が世界観に合います、と選んでくださいました。

――そんな1曲が出来たのはどんなときだったかお話しいただけますか?

Anly 一昨年くらいに沖縄に帰ったのですが、そのときに出来ました。普段から散歩が好きなので沖縄に滞在中もとことこと散歩していたのですが、沖縄の高くて青い空を「綺麗だなぁ」と見ていたら、この曲の最初に出てくる「空には君の足跡」というワードがポッと浮かんできて。これは曲になるな、と思って帰り道に歌詞を書いて、帰宅してからメロディをつけた感じでした。本当に空から降ってきたような1曲です。



――沖縄に戻られると、クリエイティブな部分が刺激される、ということはあるのでしょうか。

Anly 自然に曲が浮かぶことが多いです。創作意欲が刺激されるということではなく、勝手に出てくるというか。作ろうと思って楽曲が出来るのではなく、湧き上がってくるんですよね。自然体になれる感じです。それと優しい曲になる傾向もあるように思います。

――その自然体が「夏目友人帳」の世界には合っていたのでしょうね。優しい世界ですし。

Anly そうかもしれません。「夏目友人帳」自体、夏目(貴志)くんが暮らす熊本の山間部での、自然豊かな中でストーリーが進んでいきますし、私が生まれ育った島の風景ともリンクするんだと思います。

――昨年は多くの困難が降りかかった1年となりましたが、そんななかでも「Taking My Time」が故郷・伊江村観光PR動画のイメージソングになったり、「We’ll Never Die」が興南中学校・高等学校のテーマソングとなるなど沖縄との距離が近い時間でもあったのかなと思いますが、いかがでしたか?

Anly 沖縄に帰れないけれど、そのぶん音楽で繋がれたなと感じます。地元・伊江村では観光大使もしているので、コロナ禍が始まる前に撮影した観光PR動画も上がったりもしました。下準備をしていたぶん、繋がりも増えて良かったなと思いますし、音楽があって良かったな、とも思います。

――そんな気持ちの地続きにあったのが「星瞬〜Star Wink〜」なのかな、とお話を伺いながら感じていました。

Anly 「星瞬〜Star Wink〜」は「星」をはじめとして自然の風景をいっぱい入れ込んでいる歌詞ですし、温かみのある1曲になっています。アレンジをしてくださった松ヶ下宏之さんは、私が16歳くらいのときからお世話になっていて、私の曲をたくさん手がけてくださっている方なので、そんな方とアットホームな雰囲気の中で作れた曲ということで、愛情たっぷりだなと思います。

――アレンジについては「夏目友人帳」の世界観を意識されたのでしょうか。また、以前からあった曲だというお話でしたが、新たに作った部分はありますか?

Anly 新たに作った場所はあります。最後のほうで出てくる“探してる いつまでも”という盛り上がる部分は、今回の「夏目友人帳」の話があるかないか、というときに浮かんできた部分ですし、サウンド面は風景が浮かぶような音を目指していたので、ピアノのコード感も素朴な感じにしたりもしました。最後に掛けての盛り上がる感じも、映画館で流れるということで意識しました。

――映画のラストに流れる、というのはアレンジに作用してくる要素になるんですね。

Anly そうですね。最初を静かに入ったほうがエンディング感はありますし、余韻に浸れると思うので、前奏をちょこっとだけ長くしました。

――Anlyさんが見る「夏目友人帳」の世界。どのように映っていますか?

Anly こんなに長く続いているのはなぜかと考えると、やっぱりハートフルだし、1エピソードごとに大切なものや暖かい想いを届けてくれると思っていて。アニメで『夏目友人帳』を見たのですが、そのなかでも印象的なエピソードもありますし、友情とか愛情とか、そういう人間の忘れちゃいけない温かな部分を伝えてくれる素敵な作品だなと思います。



――その世界の余韻としての1曲。音色も意識されましたか?

Anly あまり電子音は入れたくないなと思いました。自然な手触りの音にしたくて。イメージとしてはポリエステルよりも麻のような感じ。今回、私の中ですごく印象的だった楽器があるんです。それは馬頭琴というモンゴルの楽器で、ヘッドの部分が本当に馬の頭の形になっているという面白い楽器なんです。初めて見たし、音も初めて聴いたんですね。音としては中国の二胡みたいな感じかな?と想像していたのですが、チェロがもっと柔らかくなってうねっているような音だったんです。初めて聴いた音に驚きながらも、この曲にはマッチしているぞと思って。松ヶ下さんが「この曲には馬頭琴の音が合うと思うんだ」と起用してくださったんですが、最初は想像もできなくてドキドキしました。

――楽器の名前からして凄いですしね。馬の頭の琴、ですからね。

Anly 本当に「大丈夫なのかな」って思っていました(笑)。そうしたら結構柔らかくて。どこか沖縄を感じさせるニュアンスも出るんです。おかげでルーツ感も表現できましたし、この馬頭琴は味付けのメインになっていますね。

――馬頭琴の音が入ったトラックで歌ったときにはどのようなことを感じましたか?

Anly 海が見えました。水面の波紋が広がっていくイメージというか。今回の「夏目友人帳」でも水が広がっていくような印象もあって。そういう意味でも映画とリンクしたなと思う部分です。

――劇場版「夏目友人帳 石起こしと怪しき来訪者」はマンガの中でも印象深いエピソードでしたが、あの物語についてはどのような感想がありますか?

Anly 石起こしのお話は、親子愛のような愛情を感じます。一番小さなミツミが一生懸命頑張っている姿は本当にかわいいですし、岩鉄様との信頼関係がすごくいいなぁ、と思ったんです。岩鉄とミツミの信頼関係だけではなく、ニャンコ先生と夏目の信頼関係にも重なっていくので温かいですよね。それから「怪しき来訪者」のほうの、三篠もやっぱり温かな物語を紡いでくれるんです。それが本当に好きですね。

――もうすでにリリースされている今回のシングルですが、反響などはありましたか?

Anly 実は「星瞬〜Star Wink〜」は、ライブで数回歌ったことがあるんです。だから聴いたことがある人たちは「ついに!」と喜んでくださっていますし、「夏目友人帳」で予告動画が出たときにも「夏目友人帳の世界観に合っています」と作品ファンの方々が言ってくださっていたのが嬉しかったです。

――1月16日から公開されていますし、映画館でまたこの曲に触れた皆さんが温かい気持ちになってシングルを手に取ってくださると思いますが、実は今回のシングルはカップリングの3曲も含めて1つの温かな世界ができているように感じます。

Anly たしかにそうですね。「星瞬〜Star Wink〜」のアレンジをしていただいた松ヶ下さんがカップリングの「Free Bird」とオーケストラバージョンで収録した「この闇を照らす光のむこうに」のアレンジもしてくださっているので、音の統一感もあるんですよね。あとはスネアのロールが入っている曲が3曲収録されていることもあって、音の手触り的に揃えたのはあると思います。

――その統一感はAnlyさんの中でアイデアとしてあったのでしょうか。混沌とした昨今の世界情勢の中に在りながら、ポジティブな幕開け感のあるシングルだなと感じますが。

Anly 「Free Bird」については19歳くらいのときに作ってレコーディングも終わっていたものをそのまま収録したものがその頃の勢いで入っているんですが、不自由の多い現状にフィットしているなと思って収録しました。不自由なことは多いですが、そのなかでも自由なことができないかと考えて、放っていけるように、と届けたい曲で選びました。

「この闇を照らす光のむこうに -Orchestra Version-」は、昨年リモートで収録をさせてもらった曲で。このコロナ禍でなければ出来なかった曲ですよね。本来は4月に発売したアルバムのリリースパーティでオーケストラバージョンをやろうと思っていたのができなくなってしまったし、それでも何かやろうよってことでアレンジしてレコーディングしたんですが、それを形に残したくて収録しました。そして「Rainbow」も、FM802の番組企画で、リモートで作った曲なんですね。パーソナリティの方と自粛生活の中だけど、この1年を嫌な思い出にしたくないよね、と話が盛り上がって、リスナーさんと一緒の曲を作ろう!と企画が決まって生まれた曲なんです。どんな歌詞がいいですか?どんなときに歌いたい曲にしたいですか?と意見を募って、リスナーさんからクラップも募集してそれも入れ込んで私自身がオケのトラックもすべて作った曲なんです。

すべてを自分の手でやった初めての1曲になったのですが、そうした「コロナ禍だからこそできた」というシングルであったからこそ前向きな1枚になりましたし、それを作らせてくれたのは「夏目友人帳」だと改めて感じます。私の中では糧になる1枚です。

――それでは最後にこの「星瞬〜Star Wink〜」をどのように楽しんでもらいたいかを教えてください。

Anly 劇場版「夏目友人帳 石起こしと怪しき来訪者」の世界観だけではなく、「夏目友人帳」そのものの世界観と「星瞬〜Star Wink〜」はリンクしていると思うので、聴いてくださる皆さんそれぞれの好きなエピソ−ドを思い浮かべながら聴いてもらいたいです。

INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち

●リリース情報

Anly

「星瞬〜Star Wink〜」

発売中

配信リンクはこちら

【初回生産限定盤(CD+DVD)】



価格:¥1,454+税

品番:SRCL-11614〜5

【通常盤(CDのみ)】



価格:¥1,091+税

品番:SRCL-11616

【期間生産限定盤(CD+DVD)】



価格:¥1,454+税

品番:SRCL-11617〜8

<CD>

1. 星瞬〜Star Wink〜

2.Free Bird

3.Rainbow

4. この闇を照らす光のむこうに -Orchestra Version-

5. 星瞬〜Star Wink〜Instrumental

<DVD(初回生産限定盤)>

1. 星瞬〜Star Wink〜 Music Video

2. “FIRE”〜Loop Pedal ver.@Nogizaka Studio〜

<DVD(期間限定生産盤)>

1.星瞬〜Star Wink〜 Music Video

2. “Venus”〜Loop Pedal ver.@Nogizaka Studio〜

3. 星瞬〜Star Wink〜 Short Movie 夏目友人帳ver.

●作品情報

『夏目友人帳 石起こしと怪しき来訪者』



劇場にて限定上映中

<イントロダクション>

2003年の初出当初から多くの読者を魅了してきた緑川ゆきの代表作「夏目友人帳」(白泉社 月刊LaLa連載)。TVアニメ第一期は2008年に放送を開始、これまでに第六期まで制作され、深夜アニメとしては他に類を見ないロングシリーズとなりました。2018年9月にはシリーズ初の長編オリジナルエピソードが描かれた劇場版が公開。動員数・興行収入・初日満足度ランキングにおいて第1位にランクインし、興収9億・動員数60万人を超える大ヒットとなりました。続編を望む声が高まる中、この度、新作アニメーションの制作が決定いたしました。

人と妖(あやかし)、 交わらないはずの両者の素朴で繊細な心の機微を描き、一話完結という原作の特性を生かしたオムニバス形式で、ファンに人気の二つの短編エピソード「石起こし」と「怪しき来訪者」を2021年初春、限定上映いたします。

<あらすじ>

「石起こし」

森の中で、小さな妖怪・ミツミと出会った夏目。岩鉄という神格の妖怪を、深い眠りから覚ます「石起こし」の役を任されているという。しかし褒美の酒をめぐり、ニャンコ先生や妖怪たちが、起こし役を横取りしようと画策をはじめる。ミツミを気にかけた夏目は、手助けをすることに―― 。

「怪しき来訪者」

田沼のもとに現れた、不思議な客人。毎日のように訪ねて来ては、少しだけ話をして帰っていく。その正体が妖怪であることを知った夏目は、田沼を心配するが、田沼は妖怪との交流を楽しむようになっていた。妖怪は悪さをするつもりはないらしいが、少しずつ田沼の体調が悪くなってしまう―― 。

【スタッフ】

原作:緑川ゆき/月刊LaLa(白泉社)連載

総監督:大森貴弘

監督:伊藤秀樹

脚本:大森貴弘 村井さだゆき

妖怪デザイン・アクション作監:山田起生

サブキャラクターデザイン:萩原弘光

美術:渋谷幸弘

色彩設計:宮脇裕美

編集:関 一彦

撮影:田村 仁

音楽:吉森 信

アニメーション制作:朱夏

製作:「夏目友人帳」製作委員会

配給:アニプレックス

【キャスト】

夏目貴志:神谷浩史

ニャンコ先生・斑:井上和彦

田沼 要:堀江一眞

三篠:黒田崇矢

ヒノエ:岡村明美

ちょびひげ:チョー

一つ目の中級妖怪:松山鷹志

牛顔の中級妖怪:下崎紘史

ミツミ:金元寿子

(C)緑川ゆき・白泉社/「夏目友人帳」製作委員会

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