ハイエンドではないグーグルのスマートフォン「Pixel 5」の使い勝手は?!

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色々あった2020年、気がつけば今年も残りわずか。例年のこの時期は、スマートフォンの冬・春モデルの発売が待ち遠しい時期だ。

しかし2020年の現在は、そういう雰囲気ではない。
新型コロナウイルス感染症の問題もあるが、
そもそも数年、新製品を待ち遠しいと思うことが、減ってきたような気もしてならない。

スマートフォンの心臓部となるCPUや映像表示のためのGPUは、年々性能が向上しており、使いやすくなっているのは確かだ。
一方で快適な操作が可能な性能まで引き上がると、そこから先はさらなる快適さや便利さを求め、それを補完するために性能を向上させるという流れとなる。

性能向上のひとつが、画面の解像度の向上だ。
過去にはQVGA(320×240ドット)やVGA(640×480ドット)だったスマートフォンの画面は、今やFHD(1920×1080ドット)を超える高解像度となっている。より高精細になり、ディスプレイデバイスの進化で発色や視認性が向上し、使っていて楽しくなる、そんな製品が多くなった。


2010年発売の「Galaxy S II(SC-02C)」(NTTドコモ)の画面解像度は480×800ドットしかなかった


こうしたハードウェアの進化に伴って、GPUの性能向上が求められるようになってきたということをご存じだろうか?

過去の例で言えば、画面解像度がQVGAの4倍の情報量をもつVGAに進化したときだ。
このように解像度の進化とともに必要なのは、以前の4倍もの情報量を表示するためのGPU性能の向上である。

当時は今のCPUやGPUと比較すると非力なものだったが、それでも新しい体験を生み出すための進化はドキドキするものがあった。新製品では高解像度を実現したがやや重い、ところが次のモデルでは快適に動くようになった、そんな進化を繰り返してきたのである。

そしてニーズが高まりつつあった3Dグラフィックス処理にも対応し、家庭用ゲーム機のような実車に近い映像のレースゲームや、草原や山など複雑な地形を自由に動き回れるオープンワールドのバトルロイヤルゲームは今や当たり前となった。

この映像表示は手のひらサイズの小さなスマートフォンの画面だが、実際にはノートPCや家庭用ゲーム機なみ、いやそれ以上の解像度のスマートフォンで動作していることがある意味脅威だ。こうした要求に対して、CPUやGPUの性能が向上し、そして新たな市場を作り上げてきたのである。

とはいえ、こうした性能の追求によって年々価格上昇を続けるハイエンドスマートフォンを誰しもが求めているわけではない。
というのも現在、売れているスマートフォンは高額なハイエンドスマートフォンではなく、半額以下のエントリー/ミドルレンジクラスのスマートフォンだからである。

この低価格帯のスマートフォンにいち早く対応していたのが、海外メーカー製のスマートフォンであり、「格安スマホ」というブームも起きた。

当初は、価格を下げるためにあきらかにハイエンドモデルよりハードウェアやプロセッサの性能を削った製品が多かった。
ファーウェイやコヴィア、ウィコー、そしてエイスースなどが格安なスマートフォンを取り扱ってきたが、今ではファーウェイに加えて、オッポ、シャオミが主流となり、安くても高品質なモデルが提供されるようになっている。

国内メーカーのシャープも、こうした市場の流れに柔軟に対応してきた。
ハイエンドスマートフォンで最新技術を追求する一方で、低価格スマートフォンにもシャープらしい多機能と、性能を見極めた製品で国内シェアを獲得している。

そしてグーグルも、ハイエンドスマートフォンではなく、ミドルレンジのスマートフォンを投入する。




それが2020年10月発売の「Google Pixel 5」だ。
昨年発売の「Google Pixel 4」シリーズは、ハイエンドのチップセット「Qualcomm Snapdragon 855」を搭載し、高性能ハードウェアと最先端のグーグルのソフトウェア技術で、満足度が高いスマートフォンであった。

最新モデルのPixel 5は、
ミドルレンジのチップセット「Snapdragon 765G」を搭載し、価格を抑えてPixelシリーズらしい高機能と5Gの体験をいち早くもたらすことを目的としたスマートフォンなのである。

発売前には賛否両論あった。
ハイエンドスマートフォンを求めるユーザーからは落胆の声がでた。
一方で、性能は落ちたもののカメラには超広角レンズを搭載し、弱点が少ないことから賛同する声もあった。

では実際は、どうであっただろうか?
Pixel 5を使用して1ヵ月以上経ちその使い勝手について紹介したいと思う。




Pixel 5の本体サイズは歴代のPixelシリーズに近いサイズ感をキープしながら、ベゼルギリギリまで表示エリアを広げた約6.0インチOLED(有機EL)ディスプレイを搭載する。なお、一回り画面サイズが大きいXLシリーズは今回ラインナップされていない。

過去にはアップルの「iPhone 6」やファーウェイの「P10」など、大きすぎず、小さすぎない絶妙なサイズ感のスマートフォンがあった。
最新のスマートフォンは大画面化やそれにともなうサイズ変更によって、重量も増え、こうしたちょうど良いサイズ感や重量感のスマートフォンが少なくなってきている。
そのような中でPixelシリーズは、ベストなバランスを上手にモデル化しているように思う。




このサイズ感を重要視するユーザーには、Pixelシリーズをオススメしたい。

カメラ機能は、標準レンズと超広角レンズのデュアルカメラシステムを搭載し、これまで苦手だった広い範囲を写し込む撮影ができるようになった。グーグルの画作りと狭い場所での撮影や、大きな被写体をおさめることができる超広角カメラで、カメラ機能に関する不満点はなくなった。


標準レンズでの撮影。Pixel 5のカメラアプリは暗いシーンでは自動的に夜景撮影モードに切り替わるようになった



超広角レンズでより広い範囲が写るようになった


では使い勝手は変わっただろうか?
操作感覚に関しては大きく変わったように思えない。というのもPixel 4の6GB RAMよりも大きい8GB RAMを搭載しアプリ間の切り替えもスムーズになったのも一役買っているように思う。

さらに操作感を向上させる機能として、表示速度を60Hzから90Hzに向上させるスムーズディスプレイ機能がある。この機能はPixel 4にも搭載されており、SNSのスクロールなど滑らかさを体感できるため、Pixel 4より性能が落とされているという印象を持たない理由は、ここにもあるかも知れない。

さらにバッテリーは大容量4080mAhを搭載。
メールやチャットアプリ、ネット利用や撮影など普段よく使うアプリを使用しても、充電なしで2日は利用できる。これは、性能が控えめのSnapdragon 765Gを搭載したことによって、消費電力が抑えられた効果によるものなのではないだろうか。
つまり、最大の性能を発揮するハイエンドチップセットは電力消費も大きいが、性能を抑えたことで高い消費電力が必要なくなったということなのだろう。

とはいえ、性能を落としたことで3Dゲームなどでは動きが荒くなったり、設定で画質を下げるなどしたりする必要がある。
いわゆるガチゲーマー向けではない、普通のスマートフォンとなったのだ。


ベンチマークアプリ「3DMARK」の中でも重い部類のテストだが、画面の切替がカクカクしてしまいGPU性能が低いことが確認できた


おサイフケータイ(FeliCa)にも対応しており、バーコード決済とあわせて非接触型の電子マネー決済とマスクをしたままでもロック解除が可能な指紋認証など、コロナ禍でのスマートフォンの利用でも最適な機能を搭載している点も、使い勝手の良さのひとつだ。




使用感を要約すると、手に馴染むサイズ感やストレスがない操作感を実現し、普段使いに最適な電子マネーや指紋認証、大容量バッテリー、そしてライバル機種に対抗できる高機能・高画質を盛り込んだカメラ機能など、多くの魅力がある製品となっている。

派手さはないが、長く使って行く上で、本当にちょうど良いスマートフォンに仕上げられているのがPixel 5のコンセプトであるように感じた。

仕事柄最先端のスマートフォンを求めがちだったが、Pixel 5によってそこまで高性能が必要ではないということに気付くことができた。


執筆  mi2_303