「ためらわずチャンスの海に飛び込む強いメンタルを持て!」(撮影:梅谷 秀司)

若者たちよ、未来を恐れず、過去に執着せず、「いま」を生きろ――。コロナ後の学びを変える47の行動スキルを収めた堀江貴文氏の新著『将来の夢なんか、いま叶えろ。 ―堀江式・実践型教育革命―』から一部を抜粋・再構成し、堀江氏のメッセージをお届けします。

親の思考で子の将来を縛るな

いつの時代も、「モンスターペアレンツ」は存在するものだ。20年ほど前、最初の会社を興して順調に成長していたとき、有望な若者がバイトとして入ってきた。灘中高出身の東大生で、驚異的な速さでITのスキルを伸ばしていった。社員として働いてくれたら、1億の売り上げが立つ。そう言って励ますと、彼はがぜんやる気になって、大学を中退して入社したいと申し出てきた。僕としては大歓迎だった。

ところが、彼の母親がオフィスに怒鳴りこんできたのだ。「こんな会社に入れるために、うちの子は東大に入ったわけじゃない!」と、わめき散らした。呆然とするしかなかった。スタッフがなんとかなだめて、母親には引きとってもらった。

それがきっかけで東大の彼は意気消沈して、バイトを辞めてしまった。
直後に会社は上場して、僕たちはIT界の旗手となった。もし入社していたら、収入的にも将来的にも、彼の人生はすごく面白いものになっていたはずだ。

母親の言い放った「こんな会社」が、一般的な親たちの考え方を象徴している。じゃあ、どんな会社だったらいいのだ? 名の知れた老舗の大企業に息子が就職すれば、東大に入れた苦労が報われるというのだろうか。報われるかどうかは、子どもが決めることなのに、勝手な決めつけで、子どもの選択を操作するのは最悪だ。

大企業なら安泰という古い価値観にこだわっているような親には、決して従ってはならない。東大生のバイトの彼は、いまでも後悔しているんじゃないだろうか。

親の思考は、だいたい20年ほど前の「常識」でつくられたものだ。いまの社会に通用するわけがない。世間は厳しいぞ!などと言うけれど、これから訪れる未知の世間を理解しているわけではない。世間の当事者は、むしろ子どもである君のほうなのだ。

「いま」を生きていく君は、「いま」の情報と感情を、最優先にして生きていくべきだ。親の命令に従って成功できたビジネスマンを、僕は知らない。

熱意を持って論理的にプレゼンすれば、親は基本的に君を後押ししてくれる。媚びる必要はないが、自分の意見をしっかり通し、親の理解を得られるなら、それに努めよう。親の協力と共に行動できれば、気持ちのうえでも安心できるだろう。

親の意見や、他人に振り回されたり、他人の意見によって自分を変えてしまうのは、嫌われるのが怖いからだ。指示や期待に応えられなかったり、好かれたい人たちの気持ちを満たすことをやめたとたん、見放されるのを恐れているのだ。

しかし周囲の反応などは、君の問題ではない。君の行動に対してどんな感情を抱くかは、周囲の問題だ。自分に関わりのないことのために、君が気を惑わせる必要なんて、ない。

人生を充実させるのは「変わらない自分の時間をいかに確保するか」だ。君にも僕にも、1日は24時間しかないのだ。相手がどう思うか、他人がどう感じるかなんて、一切考えないでいい。たいていの大人は、君の時間と環境が変わっていくチャンスを奪おうとする。「言うとおりにする君」を押しつけ、「変わっていく君」を否定する大人は、毅然と遠ざけよう。

大人に変えられてはいけない。逆に、大人から「あいつは変わった」とあきれられるようになろう。

つまらない大人だけを反面教師に

一方で、大人とは付き合うな!とは言わない。大人と交流すると、情報感度は飛躍的に上がる。情報のクオリティーも情報量も、間違いなく大人のほうが上だし、若くて経験の少ない自分のポジションを、相対化することもできる。気が合えば、現状の実力では出会えないような人とのパイプをつないでくれることもある。つまらない大人もいないわけではないが、それは反面教師にすればいいだけの話だ。

大人をバカにするのも若さの特権だが、本当の若者の特権とは、若さと大胆さを利用して、大人から情報をうまくいただくことだ。

新卒一括採用なんて、正直なくなってしまえばいいと思う。誰得で、あんな非効率で粗悪なルールが残っているのか? 僕にはさっぱりわからない。新卒一括採用を企業が採用しているうちは、まず学生側の不利益が大きすぎる。学校を卒業した後に身を置く環境を学生主導で選べないのだ。それはつまり、自分の人生を自分で決められないことを意味する。

例えば、就職する会社が大企業であったとしても、安心でいられるか? 数年したら不況で沈没する船かもしれない。しかも、その船には乗員全員の救命ボートが積まれていない危険だってある。図体が大きいだけのタイタニック号は、乗り心地はいいかもしれないが、航海の途中で悲惨な末路を迎える可能性もありえるのだ。

学生に不利益だらけなのに、新卒一括採用の習慣はなかなかなくならない。日本人は昔から初ガツオをありがたがったように、新築の家や新車とか、まっさらなおろしたてのものが好きだ。潔癖症に近い、新物をありがたがる文化だ。それが人材募集にも影響している。

しかし、無色透明な人間とは、言い換えると何の個性もスキルもない人間ということだ。「君は素直に言うことを聞くから期待できる」と評価されても、僕ならまったくありがたいとは思わない。「無色透明で、素直に言うことを聞く」人材を必要としているような会社に、未来はあるだろうか?

就活に臨み就職を勝ち取った人は、「何のスキルもない、ただ言うことだけを聞く素直な若者」と軽く見られている証拠だ。そして将来性の低い会社に雇われてしまった不運に気づくのは、何年も職場で酷使され、たくさんのトラウマを植え付けられてからになるだろう。

学生に告げたい。いますぐ就活ルールから飛び出せ! 

新卒一括採用で一生安泰という保証は何もない

「新卒一括採用での就職は、将来安定した暮らしを得るのに確実」だというエビデンスはまったくない。就活は、「新しモノ好き」な大人たちの好みと都合に振り回されているだけだ。大切な学生のうちに、そんなものに神経をすり減らすのはバカげている。

毎年10月になると、学生たちが一斉に衣替えするようにリクルートスーツで、就活に臨む景色は普通ではないのだ。

いまこそ有名校から有名企業への「レール型」から、自分の価値観で生き方を決める「航海型」へと人生の舵を切る時だ。

みんなが知っている「桃太郎」の話をしよう。子どものときに親から聞かされて、よく覚えているのは主人公の桃太郎だと思う。だが、本当に注目すべきは、おばあさんだ。

川に洗濯に行ったおばあさんは、上流から「ドンブラコ」と流れてきた巨大な桃を、迷いなく拾い上げた。そして家に持ち帰り、何が入っているのだろう?と、包丁でパカンと真っ二つに割ってみた。すると、かわいらしい桃太郎が誕生した。

昔話のオブラートに包まれてはいるが、おばあさんの行動は完全にぶっ飛んでいる。抱えきれないほどの巨大な桃を素手で拾ってくるだけでなく、家まで持ち帰って包丁で切るなんて、変わり者すぎる。普通だったら、そんな得体の知れない巨大桃が流れてきたら、ビビって見送ってしまうだろう。

おばあさんの「ありえない行動」が、桃太郎の大冒険の始まりとなり、名作童話を後世に残したのだ。

ドンブラコと流れてきた桃は、僕の場合はインターネットだった。その桃をビビらずに両手でつかみ、味わい尽くした。だからこそ、僕はビジネスの世界で早く結果を出せたのだ。成功したいなら、川上から流れてくる桃は、怖がらずに拾え! 

「異常行動」を起こせばいいのだ。みんな、桃太郎のおばあさんになろう!と伝えたい。

ファーストペンギンこそ最強の生き方

ベンチャービジネスの世界には“ファーストペンギン”という言葉がある。リスクのある新分野にチャレンジして、大きな利益を得る人のことだ。

南極に住むペンギンは、群れで暮らす。彼らのエサは、海中の魚類だ。獲るには海に潜る必要があるが、アザラシやシャチといった大型の天敵と遭遇するかもしれない。だから、ペンギンの群れはなかなか海に飛び込もうとしない。海を見つめて、様子をうかがっているペンギンたち……やがてついに、1羽のペンギンが勇気を出し、海へ飛び込む。群れはそのペンギンの無事を確認するやいなや、次々に海に飛び込んでいく。

最初の1羽は、襲われるかもしれないリスクを引きうけて海へ飛び込んだ。だから、群れの仲間たちに邪魔されることなく、豊富なエサ、つまり先行者利益を腹いっぱい食べることができる。この最初の1羽になぞらえた存在が、ファーストペンギンだ。

歴史を変えたビジネスには、必ずファーストペンギンが現れる。スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグ、ジェフ・ベゾス、イーロン・マスク――まあ、彼らの突き抜けぶりは、僕が語るまでもないだろう。

ファーストペンギンたちの成果を見るとき、肝心な部分を忘れてはいけない。彼らはそれぞれの分野のビジネスで最初に始めた者ではなく、「最初に勝ちパターンを見つけた者」なのだ。彼らより早く、海へ飛び込んだ者はいたかもしれない。だが読みが外れたり、どこかで保険をかけたりして、中途半端に終わった。

でも、ジョブズもゲイツもザッカーバーグも、自分の信じる「勝ちパターン」に振りきり、リスク覚悟で挑戦した。その結果、先駆者としての恩恵を、たっぷり得ることができたのだ。

ファーストペンギンとは、失敗する恐怖を克服し、自分の「勝ちパターン」を信じ抜いて、ためらわず海に飛び込んでいける、メンタルの強い人を言う。失敗するかもしれない。でも腹いっぱい食べたいから飛び込む!という強いハートが求められる。

誰も彼も失敗しまくっている

大丈夫だ。ペンギンと違い、君は決して誰かに命を取られたりしない。
社会に出れば、よくわかる。失敗すれば周りから叱られる。責任を問われる場合もある。ただし実際は誰も彼も失敗しまくっているので、すぐに他人の失敗なんて、忘れ去られるのだ。


逆に、失敗が多くても動きを止めないヤツは「あいつはメンタルが強い」と評価され、意外と途切れずにチャンスを回してもらえたりする。やらないヤツには、検証の機会もなければ、誰にもチャンスをもらえないのだ。

僕は世間的には成功者と言われるかもしれないが、それは違う。うまくいったビジネスの陰で、たくさん失敗している。普通の起業家の何倍も痛い思いをしながらそのたびに検証と改善を重ね、プランを磨き上げ、大きな収益を上げられるようになった。

いいアイデアを持つ人が勝つのではない。実践→検証→再実践のサイクルの数が多い人が、最後に勝つのだ! PDCAではなく、「DCA」なのだ。多くの若者が安心して行動し、検証と改善を重ねられるよう、僕は失敗を大いに推奨する。