巨人の元木大介ヘッドコーチが虫垂炎で入院し、「代行」として阿部慎之助二軍監督(41)が急遽、ベンチ入りした。この異例の措置から、原辰徳監督(62)の「今季で勇退説」が広がっている。コロナ禍再生のコミッショナー、菅義偉政権誕生に伴う政界転身など様々な情報が飛び交っていた――。

 9月16日の阪神戦、巨人の原監督が阿部二軍監督を一軍ヘッドコーチ代行としてベンチ入りさせた。腹痛を訴えた元木大介ヘッドコーチが虫垂炎と診断され、手術、入院したことに伴う暫定措置だが、不在に伴う代役としてなら原野球を熟知する吉村禎章作戦コーチのほうがスムーズだし、むしろ昨季はヘッドを置かずに原監督自身が直接差配していたことを思うと、きな臭さまで漂う。

「囁かれているのが、原監督が今季で勇退するという説。11日のヤクルト戦に勝利し、川上哲治元監督を上回って球団歴代単独1位となる通算1067勝に到達した。優勝マジックも点灯し、8度目のペナント制覇も間違いなく、辞め時として、これ以上のタイミングは考えづらい。加えて3度目の監督を引き受けた際、『目標は後継者を育てること』と話しており、予定を前倒しした監督禅譲の“最終過程”を疑われているわけだ」(スポーツ紙デスク)

 巨人の支配下選手は現在、上限の70人。来季は64人程度に減らす予定で、今季のドラフトでは5〜6人を指名すると見られているから、このオフは10数人をリストラせざるを得ない。阿部二軍監督のベンチ入りには、「戦力の品定め」の狙いも秘められているのだという。

「原監督の契約は来季まであり、本来、続投は揺るがない。しかし、チーム内外から『もう一つ上のステージで手腕を発揮してほしい』という声が強まっていることが、勇退論の背景にある。各球団とも新型コロナウイルス感染症による減収のインパクトが大きく、諸問題解決の旗頭として原監督に期待を寄せている」(同)

 とりわけ各球団が頭を痛めているのが、来季の契約問題だ。9月14日のプロ野球オーナー会議で議長を務めた南場智子・横浜DeNAオーナーは、「今年1年で(コロナ禍の)困難がすべて終わるのは楽観的すぎる。野球協約など具体的なところに関し、議題として踏み込んではいない」と顔をしかめ、不測の事態を想定していない統一契約書の不備解消とコミッショナーの強権発動に期待するとした。

「今季のプロ野球は公式戦を143試合から120試合に縮小し、入場者も制限して開催しています。しかし、統一契約書に有事の記載がないため、球団は選手年俸を全額支払うことに。このままでは来季も全額支払う必要が生じ、経営が立ち行かなくなる球団が生じる可能性があります。選手契約の根幹をなす統一契約書を変更するには、日本野球機構(NPB)、球団、選手会の合意が欠かせませんが、利害が反するために交渉の難航は必至です。解決にはコミッショナー裁定が手っ取り早いのですが、その役に原監督は適任。彼が旗振り役を務めればメディアも注目し、野球協約改正に対するファンの理解も得やすいだろうという考えが作用しているのです」(大手紙社会部記者)

 現在の斉藤惇コミッショナー(元日本取引所グループCEO)をはじめ、歴代のコミッショナーは法曹界、高級官僚、大学教授、財界出身者で、プロ野球OBは1人もいない。右肩上がりの平時なら機能しても、コロナ禍のような大乱世では強いカリスマ性が不可欠だ。

「本来なら長嶋茂雄巨人軍終身名誉監督(84)や王貞治ソフトバンク会長(80)が適任でしょうが、ともに高齢です。次世代のカリスマ、星野仙一氏が鬼籍に入った今、その役が務まるのは原監督しかいません。統一契約書の見直しが急務である一方、一つ間違えれば、選手会のストライキも避けられないからです。しかし、4度目の日本一を花道にユニホームを脱ぎ、“原コミッショナー”の流れができれば、労使問題がスムーズに運ぶことが期待できます」(同)