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西日本のとある離島で見た衝撃の光景

text:Kumiko Kato(加藤久美子)

西日本のとある離島を訪れた友人から不思議な写真を添付したメールが届いた。

そこは瀬戸内海にある人口100名程度の島で、本土から船で30分の場所にある。

ナンバーをつけずに走る離島の軽トラック。    加藤博人

友人は降り立ってすぐ、衝撃の光景を目にした。

船の到着とともに、5〜6台の軽トラックが視界に入って来た。船着き場に釣り客を迎えに来たり、本土からの物資をおろして島内に運んだりするための軽トラだろう。

形は普通の軽トラだ。しかし何か違和感がある……。

そこに止まっている軽トラにはすべてナンバーがついてない!

その話を聞いて筆者も思い出した。6〜7年前に別の離島を訪れた際にも島にあるクルマにはほぼ、ナンバーがなかった。

離島ではこれが普通なのだろうか? 離島の道路は公道とはみなされないのか?

クルマを使うのは島の中だけという限定された環境では走る範囲も用途も限られるだろう。もちろん、バスもタクシーもない、また駐在所などもない小さな島である。

ナンバーのないクルマはほとんどが軽トラックである。それもかなり古い。海に囲まれた離島という環境もあるのだろう。サビだらけの軽トラも多い。

しかし、中には、車検ステッカーを貼った車もある。当然車検は切れているが平成29年の文字が見える。

中古車で買って島に運んで来たのだろうか? 買った時点ではナンバーはついていたのだろうか?

ナンバーなし 運輸支局に聞いてみた

車検切れのクルマやナンバープレートを外した状態で公道を走らせることは道路運送車両法違反(無車検走行)に抵触する。

2019年9月、滋賀県の公園内で公的機関が所有するナンバーのない軽トラックが園内の整備に使われていたことが問題となった。

離島であっても公道を走るならナンバーは必要。ただし管轄警察も「島の中で取締りを行うことは難しいでしょう」という。    加藤博人

約5〜6年前に廃車として処分したあと園内限定で時々使っていたとのことだ。

離島の場合はどうなるのか? 管轄する運輸支局にナンバー無しの車について聞いてみた。

「原則として自動車は、私有地以外の公道では登録(軽自動車の場合は『届出』)をしてナンバーを付けて、継続車検を受けて自賠責保険を付けて乗るものです」

「離島の道路も基本は公道とみなされますから、本来はナンバーのない状態で走ることは違法です。詳しくは警察さんに聞いてみてください」

と言われ、管轄する警察署の交通課に聞いてみた。

「限定された私有地であればナンバーがないクルマでも問題はありませんが、離島であっても公道を走るならナンバーは必要です」

「ただ、現実的にそのようなクルマがあっても、島の中で取締りを行うことは難しいでしょう。そもそも、パトカーも島に入れないわけですし」

「パトカーがないと取締りができないわけではありませんが、現状、その島への巡回は年に数回です」

「警察官が常駐しているわけではないですから。通報があれば任意で捜査を行うこともありますが……」

知ってた? 離島は自賠責保険が大幅安

毎回、車検の時におさめる諸費用のひとつとして「自賠責保険」があるが、この保険料は全国均一ではない。

原動機付自転車を含むすべての自動車は、自動車損害賠償保障法に基づき、自賠責保険(共済)に入っていなければ運転することはできないが、沖縄県や離島はかなり安く設定されている。

離島の多くは小さな島で、筆者が訪れた離島は本土への定期船はあるものの島の道路をすべて走ったところで3kmに満たない。    加藤博人

事故が少ないことや、クルマを走行させる範囲が限られていることから離島に使用の本拠がある自動車に対する一種の優遇措置といえるだろう。

2020年4月1日以降始期契約(※2020年4月より自賠責保険は交通事故の減少などを理由に平均16.4%引き下げられている)

自家用乗用自動車(25か月)

2万2210円
離島8190円
沖縄県(離島以外)1万1360円

軽自動車(検査対象車/25か月)

2万1780円
離島7560円
沖縄県(離島以外)5440円

※離島とは、本土(北海道、本州、四国及び九州)以外の島であって、橋又は隧道による本土との間の交通又は移動が不可能なもの(沖縄県を除く)をいう。

国土交通省の資料(平成27年国勢調査)による日本の有人島数は416島(※内水面離島である沖島〈滋賀県〉を含む)、無人島は6432島としている。

これら有人の離島(特に小さな島)におけるクルマ生活における実情を、事情に詳しい公的団体の関係者に聞いてみた。

ナンバーのないクルマは存在するのだろうか?

離島のクルマ、車検に出すのは大変

「個人的な印象ですが、かつてはナンバーのないクルマが目についた場所も近年は減っているように思います」(離島の事情に詳しい公的団体の関係者)

「2005年1月から自動車リサイクルシステムの運用が本格的に始まったことが関係しているのでしょう」

本土では車検満了日の1か月前から継続検査が受けられるが、離島では本土や車検が受けられる工場まで運ぶために船を使うため余裕を持たせて2か月前から受けられる救済措置が平成27年4月1日に導入された。    加藤博人

「廃車にする際に確実に解体業者の手によってクルマを解体することが定められるなど、廃車(抹消登録)のシステムも大きく変わりました」

「実際、離島のクルマを車検に出すとなると実に大変です。定期船が出ているところでもクルマを運ぶには別の船が必要となります。また、そもそも定期船さえ出ていない離島もたくさんあります」

「北海道の奥尻島では、島民の車検に対応するため、(民間業者がなかなか進出しなかったこともあり)町営の車検場を作りました」

「離島だけ車検有効期間を長くすることや、海上輸送費を公費で援助することなど要望してきた地域もあるようですが……なかなか実現には至っていないようです」

「車検もそうですが離島は燃油コストも非常に高くなります。ガソリンスタンドがない離島はドラム缶や携行缶で本土からガソリンを運んでいます」

なお、平成27年4月1日に施行された車検に関する離島の救済措置が導入された。

本土では車検満了日の1か月前から継続検査が受けられるが、離島では本土や車検が受けられる工場まで運ぶために船を使うため余裕を持たせて2か月前から受けられるとしたものだ。

車検期間が延長されるわけではない。

離島の多くは小さな島で、筆者が訪れた離島は本土への定期船はあるものの島の道路をすべて走ったところで3kmに満たない。

信号はなく横断歩道すらない島の道路は1日1周しても年間で1000km程度だ。

その用途のほとんどは島の生活や産業に必要な移動や輸送だと思われる。

自賠責はさておき、車検に関してはケースバイケースで何らかの救済措置があっても良いのではないかと思う。