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専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第267回

 ゴルフ会員権の相場表を見てみると、30万円ぐらいのコースから3000万円ぐらいのコースまで、実にバラエティーというか、幅広い価格設定で数字が並んでおります。

 じゃあ、この100倍の価格差、それだけの違いって何? と思いますよね。

 高額コースはさぞかし豪華で、レースクイーンみたいなキャディーさんが付いて、OBなんかないとか?......って、冷静に考えて、そんなコースはないでしょ。

 まあ、コースだけで見れば、手入れのよさの違いぐらいの差です。30万円のコースも、3000万円のコースも、さほど変わりません。どこも、オバちゃんキャディーが多いし、難易度もコースレートによって査定されますから、大きな違いはないでしょう。

 じゃあ、いったい何が違うんだ?

 というわけで、お手頃な大衆コースと高額な名門コースとの違いを、細かく分けて分析してみましょう。

 一番違いがわかるのは、ズバリこれです。

(1)メンバーの年収
 そりゃ、2000万円〜3000万円の高額コースのメンバーさんが、ホームレスでありながらせっせとお金を貯めて会員権を購入した、なんてことはまず考えられません。

 やはり高級住宅地に住んでいて、ガレージには高級車が2台ぐらいあって、ゴールデンレトリバーのワンちゃんがいて、そのワンちゃんは散歩の時も決してリードをぐいぐい引っ張らないとか......そういう方々ですよ。

 おおよそ、どこぞの有名企業の役員とか、老舗の若旦那とか、あるいは裸一貫で成功したIT企業のオーナーとかね。とにかく、高額コースのメンバーさんは社会的な成功者が多いです。

 一方、大衆コースはその多くが都心から離れた遠隔地にありますから、地方の名士や大農家の地主さんなど、コースの地元で名の通った方がメンバーになっていることが多いです。それにプラスして、都会の高額コースの会員権はさすがに買えないけど、地方のリーズナブルなコースなら手が届く、といった都心に住むサラリーマンがメンバーになっていますかね。

 そもそもゴルフ会員権を買う段階で、道楽者か、セレブです。安くプレーする権利や、競技会などの試合に出られる権利は、今や"友の会"やネット予約でも十分に用を足せるようになっています。なのに、あえてメンバーになるのは、都会や地方を問わず、自らのステータスを満足させる部分が大きいんじゃないかと。

(2)コースの質
 ゴルフ場の土地は「平らで、ゆったりしているのが一番」と言われています。その点では、関東の土壌はよくて、とりわけ茨城県や千葉県の北部のほうでは、広々としたコース取りがなされています。

 そこら辺のコースのメンバーになれば、思う存分、ドライバーをかっ飛ばせます。会員価格にして、200万円程度。なかなか賢い買い物だと思います。

 片や、東京都や神奈川県にある、会員権が1500万円ぐらいする名門コースはどうでしょうか?

 確かに、昭和の名設計家が造ったコースが多いのですが、いかんせん立地が悪いです。多摩の丘陵地に造ったり、都市化が進むなか、狭い敷地に18ホールを詰め込んだりと、コース全体に余裕がありません。アップダウンがきついうえ、コース周りはネットだらけと、景観もよろしくないです。

 そういったことをぼやくと、大阪の人からは「東京はまだいいよ。大阪のコースはもっと狭いから......」などと言われてしまいます。私も何度か行きましたけど、実際に大阪は土地そのものが少ないので、狭いコースが多いです。でも逆に、いろいろと工夫して造ってあって、感心しましたけどね。

 そんなわけで、コースレイアウトやアップダウンといった部分で、都会の名門コースは割を食っています。

 ただし、都会の高額コースのメンテナンスはすばらしいです。グリーンはきれいで速いし、フェアウェーも雑草やディボット跡が少ないです。加えて、キャディー教育も行き届いています。そういうオペレーションは、さすがです。



日本全国に数多くあるゴルフ場。メンバーになるなら、自分に合ったコースをしっかりと見極めたいものですね...

(3)クラブハウス&食事
 高額な名門コースはたくさんのお金が流通しているので、資金は潤沢です。だから、クラブハウスなどは、わりとしっかり造られています。

 たとえば、某老舗名門コースの話。同コースはバブルの時に「億カン」と言われて、会員権が1億円以上しました。ちょうどその頃、理事会で30名の新規メンバーを募集することを決定したそうです。

 要するに、1億円の会員権を30人に買わせたわけですよ。そして、その30億円でクラブハウスを建て替えたのです。いやぁ〜、今思えば、グッドタイミングでしたねぇ。

 そんなですから、老舗の名門倶楽部は総じてビジター料金も高額です。そうしてまた、"ハコモノ"にお金をかけていくんですな。

 もちろん地方のコースでも、バブルの頃は立派なクラブハウスを建てているコースがありました。その名残で、現在も豪華なところが結構あると思いますよ。

 あと、問題は食事です。

 以前は、名門コースの料理は「当然、美味しい」と思っていたのですが、大衆コースと「それほど変わらないな」と、最近気づき始めました。

 どこのコースもレストラン部門は、専門業者に委託していたり、たまに自ら運営していても、独立採算制が基本ですから、料金よりも材料費が上回ったりすることはありません。となると、1500円のランチで、3000円の食べ物は出てこないのです。

 とくに、朝ごはんの和定食はどこも一緒。魚の切り身を焼いて、海苔と納豆に漬物がついているだけ。それで、1000円〜1200円ですからね。これが、一番儲かるんじゃないですか。高額コースだったら、何かしら工夫してほしいですよね......。

(4)ゴルフ場の雰囲気
 名門コースは、大衆コースとは明らかに雰囲気が違います。樹木がうっそうと茂っており、「ウチは会場70年の名門だからね」みたいな、落ち着いた佇まいを感じさせます。

 そうやってコースが落ち着いている分、人間関係は緊張します。名門倶楽部はジャケット着用も必須だったりしますので、エントランスに入った瞬間から、まるで"身体検査"状態です。上着を忘れてしまった時など、「キミ、ここはジャケット着用だよ」とか言われないか、ひやひやしながらフロントに向かいます。

 また、名門倶楽部の受付は、「メンバー」と「ビジター」との区分けがはっきりしていて、ビジターの受付はすごく混みます。

 大衆コースは、そういう境界線が曖昧で、メンバーの受付でビジターの受付をしてくるところもあります。大手チェーンのコースだと、カード提示でチェックインできます。それが、一番ありがたかったりしますね。

 名門コースは、ゴルフウエアに着替えても、誰かに監視されているような気がして、心穏やかではありません。現に過去に何回か、見知らぬメンバーさんから「キミ、ちょっとその服装はまずいんだよね」と言われたことがあります。

 この歳になって、服装を注意されるとは......。だいたい、こっちは大学を卒業してから、一度も企業に就職したことがないので、服装はどういったものがいいのか、よくわからないのです。「自分は名門コースに向いていないのだな」と、つくづく思いました。

 最後になりましたが、ちなみに腕前はどうなのか?

 そりゃ、広々としたコースで、何千人も会員がいる大衆コースのほうが、日頃からメンバーさんたちが切磋琢磨しているので、総じて上手いと思います。

 腕を磨くなら、大衆コース。メンバーでいることを自慢したいなら、名門コース。そんな感じでしょうか。