関連画像

写真拡大

仙台市営バスの男性運転士が、未成年で普通運転免許も持っていない乗客に、空き地となっている車庫の跡地でバスの運転をさせたとTBC東北放送が報じました。

男性は事実を認めており、仙台市交通局は7月1日、懲戒免職にしたと発表しました。

東北運輸局はTBCの取材に対し「運転させた場所が公道ではないので法律上の問題はない」と回答していますが、私有地であれば無免許運転でも警察に捕まらないのでしょうか。和氣良浩弁護士に聞きました。

●無免許運転は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」

ーー道路交通法は、無免許運転についてどのように定めていますか

道路交通法(以下「道交法」といいます)は、無免許運転について、「運転免許を受けないで…、自動車等を運転してはならない」(道交法64条1項)、また、飲酒運転については、「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」(道交法65条1項)と規定し、いずれも禁止しています。

そして、いずれについても、違反した場合には、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」(道交法117条の2の2第1号・第3号)が科されます。

ただし、「運転してはならない」の「運転」とは、道交法上の「道路」を運転することであり(道交法2条1項17号)、「道路」とは、国道などの公道または、一般交通の用に供するその他の場所(道交法2条1項1号)とされています。

そうしますと、無免許運転や飲酒運転に関する上記規定は、国道などの公道または、一般交通の用に供するその他の場所を運転した場合に適用されることになります。

●道交法上の「道路」といえるか?

ーーでは、私有地で無免許運転や飲酒運転をした場合は、どうなるのでしょうか

上記のような「道路」の意義からしますと、私有地であっても、一般交通の用に供され開放され、しかも一般交通の用に客観的にも使用されている場所は、道交法の適用のある「道路」ということになります。

より具体的には、無免許運転や飲酒運転の規制が適用されるかどうかについては、
・道路としての体裁があるかどうか、
・客観的・継続的・反復的に利用されているかどうか、
・不特定多数の人や車の通行が許されているかなどから道交法上の「道路」といえるかどうか、
から判断されます。

ーーマンションなどの駐車場はどう考えられますか

私有地であっても、マンションの駐車場や店舗の駐車場については、道路の体裁のあるところが多いでしょうし、客観的にも継続的・反復的に人や車両が利用していることが通常です。

また、マンションの駐車場の中には、居住者以外の不特定多数の人や車両が利用するところもありますし、店舗の駐車場(特に大型の商業施設など)については通常不特定多数の人や車両が利用すると考えられます。

そうしますと、マンションの駐車場や店舗の駐車場については、具体的な事情にもよりますが、道交法上の「道路」にあたり、無免許運転や飲酒運転の規制が適用されると判断されるところが多いでしょう。

ーー田んぼの場合はどうでしょうか

他方、田んぼについては、道路の体裁がないことが通常でしょうし、客観的・継続的・反復的に人や車両が利用することも考えられません。

また、通常は特定又は少数の人や車両(コンバインなど)の利用しか考えられません。そうしますと、田んぼは道交法上の「道路」とはいえず、無免許運転や飲酒運転の規制が適用されないと判断される可能性が高いといえます。

●今回のケース、法的に問題ない可能性

ーー今回のケースは、仙台市交通局が所有する空き地でバスを運転させたそうです

今回問題となった「バスの方向転換のために使われるだけの空き地」(車庫の跡地)については、バスの方向転換のために使われている車庫の跡地ということですので、道路としての体裁はあったと考えられますし、客観的・継続的・反復的にバス等による利用があったとも考えられます。

もっとも、車庫の跡地であり、バスの方向転換のために使われる「だけ」であることからしますと、不特定多数の人や車両が利用しているとは考えられないでしょう。

以上からしますと、今回問題となった車庫の跡地については、道交法上の「道路」とはいえないと判断される可能性が高いでしょう。

道交法上の「道路」でないとすれば、今回問題となった車庫の跡地における無免許運転や飲酒運転は法的に問題がないことになります。

【取材協力弁護士】
和氣 良浩(わけ・よしひろ)弁護士
平成18年弁護士登録 大阪弁護士会所属 近畿地区を中心に、交通・労災事故などの損害賠償請求事案を被害者側代理人として数多く取り扱う。
事務所名:弁護士法人和氣綜合
事務所URL:http://www.wk-gl.com/