日本市場でも新型車を投入するなどSUVブームが全盛

 まさに、SUVブームである。トヨタ・ライズと、その原型であるダイハツ・ロッキーが売上好調。ダイハツ・タフト、トヨタ・ハリアーは先行予約から好調。日産がブランニューの新車としては国内10年ぶりとなる「キックス」にメディアからもユーザーからも大きな注目が集まる。

 2020年後半から来年21年にかけても、三菱アウトランダー、日産エクストレイル、トヨタ・ランドクルーザーと売れ筋SUVが目白押しである。ホンダではそろそろヴェゼルのモデルチェンジも期待したいところだ。

 日本といえば90年代からこれまで、ミニバンと軽でモデル数が増え続け、その結果、世界市場では他に類をみないモデル構成になっている。それが、このところ一気にSUVシフトの様相。さすがに、ユーザーのミニバン疲れが出てきたのか?

 いや、現時点で、そうとは言い切れない。4月〜5月のコロナ禍で、自動車メーカー各社に対して、筆者はSUVなどに関する質問をしてみた。そこから得られたデータを見る限り、人気SUVの購買層は、自銘他銘を問わずSUVからの乗り換え需要が多く、ミニバンからの乗り換えはいまのところ主流ではない印象だ。

 ただし、今後SUVモデル数がさらに増えると、ミニバンからの乗り換えトレンドが本格的に始まる可能性は否定できない。そもそも、そうしたトレンドをメーカー自身が仕掛けているのだから。

世界的にヒットしている以上日本市場もSUV人気は衰えない

 では、なぜいまSUVブームなのか? 最大の理由は、メーカー各社の世界戦略における日本市場での対応だ。たとえば、トヨタ「RAV4」はアメリカで先行発売し、2019年は単独モデルで40万台を超える大ヒットとなっている。アメリカでは近年、SUVシフトが中小型セダンにまでおよび始めており、そうしたトレンドのなかで、RAV4はオフロード派へイメチェンすることで商品特性を際立たせた。

 キックスは、2016年から南米、中国、欧州、アメリカと日産の世界戦略車となったが、日本仕様および生産国であるタイ仕様でe-POWERを搭載し、ボディデザインに手を加えた。いわばビックマイナーチェンジである。

 軽や1リッターカーでは、日本専用SUVでも採算がとれるが、世界市場におけるコンパクトSUV以上になると、まずはアメリカ、中国など規模が大きい市場の声が優先される。

 ホンダも今後は、地域専用の派生車を一気に縮小するとの中期計画を公表しているように、世界のトレンドが直接的、または間接的に日本市場に影響する流れが、これからも強まることは間違いない。

 世界のトレンドがSUVであれば、日本でもSUVが流行るという図式となる。よって、当面の間、日本でのSUVブームは続きそうだ。