長時間の在宅勤務、うつに注意。下半身エクササイズでイライラ解消
テレワーク生活で、日中は、基本的に食事とトイレ以外パソコンの前から動かない――。そんな生活を送る方もいるのではないでしょうか。ここにきて、体重増加だけでなく、ストレスやメンタル不調を訴える声も聞こえてきます。
その原因は、家庭内におけるストレスや自粛疲れ、生活不安など人によってさまざまですが、運動とメンタルヘルスの関係性を研究してきた摂南大学教授の藤林真美さんによると、「身体の不活動、つまり運動不足がメンタルに影響を及ぼしている可能性も大きいです」と警鐘を鳴らします。ここでは、その理由と、解消法を教えてもらいました。
長時間のテレワークにより、元気がなくなったらエクササイズを試してみて!
「通勤している人は普段、朝起きて朝食を食べ、太陽の光を浴びながら駅まで歩いている間に徐々に交感神経が上がってきます。そして日中、一生懸命仕事をしているときは交感神経活動がピークになり、夕方から夜にかけてゆっくり休むことで副交感神経が優位になる。このようにメリハリがあります。
ところが、朝から体を動かさず、日中も太陽の光が入って来ないような部屋で過ごしていたり、昼も夜も関係なく机に向かっているようなメリハリのない生活が続くと、自律神経が乱れてきます。すると、めまいや月経不調などの身体症状はもちろん、情緒不安定やイライラ、不安感を持つなどの精神症状も出てくることもあります」
これまでは、通勤時間がよい運動のルーティンになっていたということです。運動不足によるメンタルの不調はほうっておいてはどんどん悪化していきます。そこで、すぐさま取り入れたいのが運動です。
「運動したあと、気分がすっきりした。など爽快感を感じた経験は、ほとんどの方がお持ちではないでしょうか。アメリカでうつ病の治療として運動療法が使えるかどうか調べた興味深い研究があります。うつ病の患者さんを、3つの群(薬だけで治療する群、薬は飲まずに運動だけで治療する群、薬と運動を併用する群)に分けました。
この運動は、少しきつめの30分間の有酸素運動が週に3回行われました。16週間後には、なんと3つの群がすべてうつ状態が回復していたのです。つまり、薬を飲まずとも運動だけで改善したという結果です。もちろん、運動が万人のメンタルヘルスに効くというわけではありませんが、運動することで、脳内の神経伝達物質(ノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミンなど)の調整がうまくいくことも明らかになっています」
運動だけでメンタルが改善するならば、ぜひ取り入れたいものです。そこで、メンタル改善に最適な運動を教えてもらいました。
●自宅でできるイライラ解消のエクササイズ。ポイントは下半身を動かす
「おすすめは、有酸素運動。階段のある戸建てに住んでいる方や、マンションの非常階段などを使える方は、階段の昇り降りをしましょう。昇るときに心拍数が上がり、降りるときに下がる。このように、強い運動と弱い運動を繰り返す“インターバルトレーニング”が心身にいい影響を及ぼすことがわかってきています」
ただ、おうちから出られない方や心配な方は、その場でできる有酸素運動は、ほかにも。それはだれもがやったことがある基本のエクササイズです。
「とくに、太ももやお尻など大きな筋肉をダイナミックに使う有酸素運動がおすすめです」
【もも上げ】
頭の上から一本の糸で引っ張られているように姿勢を正し、ももを上げます。
左右交互にももを上げていきます。上げる際、腰が沈まないように上半身をキープ。
【スクワット】
お尻を下げるときは、膝を前に出さず、少しお尻を斜め後ろに突き出すようにして、下げます。つま先から膝までのラインはあまり変えずに、お尻を後ろにもっていくイメージです。戻るときは、お尻をキュッと締めましょう。
「もも上げとスクワットを両方行う場合、間に、ゆっくりと足踏みを取り入れてみてください。心拍数を上げた後、足踏みしながら呼吸を整えることで、強弱のあるインターバルトレーニングになります」
●編集部員Oが実践!仕事中に取り入れることでイライラが解消!
まさに、朝から晩までパソコンに張りついて、ほぼほぼ家から一歩も出ない生活を送っているという編集部のO。集中すると2〜3時間、イスから離れず作業することも珍しくないものの、午後以降はモヤモヤしだし、一気にやる気もダウン。
そこで、休憩中にもも上げ、足踏み、スクワットをやってみることに。藤林さんのいうようにフォームをしっかり意識するだけで、結構キツい…。
驚くことに、終わったあとは脳に酸素が行きわたったかのような爽快感があり、その後も元気に仕事や家事ができるようになりました。さらに、不安感も薄れていくことがわかります。
運動をすることで気分が晴れるというギフトが得られたので、それ以降、仕事中にこまめにエクササイズを取り入れるようになりました。
●つかの間の外出もぜひ有酸素運動を意識したからだの使い方をして
そして、もしもスーパーやコンビニへの買い出しで外出する際も、こういった動きを意識してみるのがおすすめ。
「たとえば、目の前の電柱をめがけて早歩きをし、次の電柱まではゆっくり歩き、また次の電柱までは早歩き。この繰り返しも立派なインターバルトレーニングになりますし、心拍数が上がるので、ストレス解消になるはずです」
このような動きを、1日のうちにどれか一つでも取り入れてほしいと、藤林さんは強調します。
「1回の運動で、抑うつや不安が解消されるというのは、明らかになっています。そのなかでも、有酸素運動はとくに効果的なんです」
運動不足による心の不調、イライラ、落ち込みを感じたら、ぜひこれらの動きを思い出して取り入れてみてください。
<取材・文/桜田容子 撮影/ESSEonline編集部>
●教えてくれた人
【藤林真美さん】
2020年4月に新設された摂南大学農学部教授。博士(人間・環境学)、日本スポーツ精神医学会評議員。専門は運動生理学。研究テーマは栄養とスポーツ、加齢・メンタルヘルスとスポーツなど。
その原因は、家庭内におけるストレスや自粛疲れ、生活不安など人によってさまざまですが、運動とメンタルヘルスの関係性を研究してきた摂南大学教授の藤林真美さんによると、「身体の不活動、つまり運動不足がメンタルに影響を及ぼしている可能性も大きいです」と警鐘を鳴らします。ここでは、その理由と、解消法を教えてもらいました。
長時間のテレワークにより、元気がなくなったらエクササイズを試してみて!
体を動かさないと、メンタルが不調になる理由
「通勤している人は普段、朝起きて朝食を食べ、太陽の光を浴びながら駅まで歩いている間に徐々に交感神経が上がってきます。そして日中、一生懸命仕事をしているときは交感神経活動がピークになり、夕方から夜にかけてゆっくり休むことで副交感神経が優位になる。このようにメリハリがあります。
ところが、朝から体を動かさず、日中も太陽の光が入って来ないような部屋で過ごしていたり、昼も夜も関係なく机に向かっているようなメリハリのない生活が続くと、自律神経が乱れてきます。すると、めまいや月経不調などの身体症状はもちろん、情緒不安定やイライラ、不安感を持つなどの精神症状も出てくることもあります」
これまでは、通勤時間がよい運動のルーティンになっていたということです。運動不足によるメンタルの不調はほうっておいてはどんどん悪化していきます。そこで、すぐさま取り入れたいのが運動です。
「運動したあと、気分がすっきりした。など爽快感を感じた経験は、ほとんどの方がお持ちではないでしょうか。アメリカでうつ病の治療として運動療法が使えるかどうか調べた興味深い研究があります。うつ病の患者さんを、3つの群(薬だけで治療する群、薬は飲まずに運動だけで治療する群、薬と運動を併用する群)に分けました。
この運動は、少しきつめの30分間の有酸素運動が週に3回行われました。16週間後には、なんと3つの群がすべてうつ状態が回復していたのです。つまり、薬を飲まずとも運動だけで改善したという結果です。もちろん、運動が万人のメンタルヘルスに効くというわけではありませんが、運動することで、脳内の神経伝達物質(ノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミンなど)の調整がうまくいくことも明らかになっています」
運動だけでメンタルが改善するならば、ぜひ取り入れたいものです。そこで、メンタル改善に最適な運動を教えてもらいました。
●自宅でできるイライラ解消のエクササイズ。ポイントは下半身を動かす
「おすすめは、有酸素運動。階段のある戸建てに住んでいる方や、マンションの非常階段などを使える方は、階段の昇り降りをしましょう。昇るときに心拍数が上がり、降りるときに下がる。このように、強い運動と弱い運動を繰り返す“インターバルトレーニング”が心身にいい影響を及ぼすことがわかってきています」
ただ、おうちから出られない方や心配な方は、その場でできる有酸素運動は、ほかにも。それはだれもがやったことがある基本のエクササイズです。
「とくに、太ももやお尻など大きな筋肉をダイナミックに使う有酸素運動がおすすめです」
【もも上げ】
頭の上から一本の糸で引っ張られているように姿勢を正し、ももを上げます。
左右交互にももを上げていきます。上げる際、腰が沈まないように上半身をキープ。
【スクワット】
お尻を下げるときは、膝を前に出さず、少しお尻を斜め後ろに突き出すようにして、下げます。つま先から膝までのラインはあまり変えずに、お尻を後ろにもっていくイメージです。戻るときは、お尻をキュッと締めましょう。
「もも上げとスクワットを両方行う場合、間に、ゆっくりと足踏みを取り入れてみてください。心拍数を上げた後、足踏みしながら呼吸を整えることで、強弱のあるインターバルトレーニングになります」
●編集部員Oが実践!仕事中に取り入れることでイライラが解消!
まさに、朝から晩までパソコンに張りついて、ほぼほぼ家から一歩も出ない生活を送っているという編集部のO。集中すると2〜3時間、イスから離れず作業することも珍しくないものの、午後以降はモヤモヤしだし、一気にやる気もダウン。
そこで、休憩中にもも上げ、足踏み、スクワットをやってみることに。藤林さんのいうようにフォームをしっかり意識するだけで、結構キツい…。
驚くことに、終わったあとは脳に酸素が行きわたったかのような爽快感があり、その後も元気に仕事や家事ができるようになりました。さらに、不安感も薄れていくことがわかります。
運動をすることで気分が晴れるというギフトが得られたので、それ以降、仕事中にこまめにエクササイズを取り入れるようになりました。
●つかの間の外出もぜひ有酸素運動を意識したからだの使い方をして
そして、もしもスーパーやコンビニへの買い出しで外出する際も、こういった動きを意識してみるのがおすすめ。
「たとえば、目の前の電柱をめがけて早歩きをし、次の電柱まではゆっくり歩き、また次の電柱までは早歩き。この繰り返しも立派なインターバルトレーニングになりますし、心拍数が上がるので、ストレス解消になるはずです」
このような動きを、1日のうちにどれか一つでも取り入れてほしいと、藤林さんは強調します。
「1回の運動で、抑うつや不安が解消されるというのは、明らかになっています。そのなかでも、有酸素運動はとくに効果的なんです」
運動不足による心の不調、イライラ、落ち込みを感じたら、ぜひこれらの動きを思い出して取り入れてみてください。
<取材・文/桜田容子 撮影/ESSEonline編集部>
●教えてくれた人
【藤林真美さん】
2020年4月に新設された摂南大学農学部教授。博士(人間・環境学)、日本スポーツ精神医学会評議員。専門は運動生理学。研究テーマは栄養とスポーツ、加齢・メンタルヘルスとスポーツなど。